■ ・プロローグ

 さてさて、すでにご存じの方も多いかとは思いますが、わたくし苗字なまえに先日彼氏ができました。

 なぜか私にだけ懐いた猫のように、とてもとても可愛くて格好いい彼氏くんです。
 しかも、なんとなんと現役高校生。
 しかも、見た目も中身も、とっても格好いいと来たもんだ。

 さらに……実はこれが一番重要なのだけれど、一部では恐怖と共に語られる暴君として、また一部では興奮と共に語られるスポーツ選手として、大変に有名という不思議な子なんです。
 加えて、一体どういう裏工作をしているのか、平然と銃器を持ち歩いていたりする……けれどまあ、そんなのもあんなのも、結局のところは別にどうだっていいのです。

 私には可愛くて可愛くて格好いい、愛しのにゃんこくんなのだから。

 ……はーい、ごめん、悪ノリ失礼しました。見捨てないで。

 で、まあこんな前置きはいいとして、ですよ。
 当然ながら毎日毎日、それこそ休みの日でも練習漬けの忙しい恋人との逢瀬となると、もっぱら場所は私の家となるわけで。時間は夕方以降となるわけで。そうなると自然、料理を振る舞う機会も多くなるわけですよ。

 というか、むしろご飯を食べに来ているだけかという疑いすら感じる程に、ほぼほぼ毎日食卓を囲んでいますよ。

 ……いや、まあ、それでもいいんだけどね。
 切って焼いて煮てってあれこれするのは嫌いじゃないし、美味しく食べてもらえると凄く嬉しいし、餌付けしているような気分で楽しんでいるところもあるから。

 それになにより、可愛いにゃんこが美味しそうに食べている姿を見ながら飲む酒ってのは、最高に美味しい。
 ただ、どれだけ楽しかろうと可愛かろうと、相手は食べ盛りの男の子。しかもスポーツマンの食欲ってのは、大したものなんだ。


「……うわぁ、さすがにこれは、ちょっとまずいわ」

 クレジットカードの請求額を見て、思わず呻き声を上げてしまう。
 いや、一応わかってはいたし覚悟も出来ていたのだ。

 家計簿と言える程に立派なものではないが一応記録もしているし、そうでなくても、毎日のように三合も米を炊いていれば実感だってあったさ。
 だから当然、この結果も目に見えていた。ひとり暮らしとは思えない金額になることを、先にちゃんとわかっていた。
 ただ、それでも。いざこうしてひと月分として総額を見せられると、覚悟していても響くものがありまして……。


 ……なんて、いつまでも請求書を前にショックを受けていても仕方が無い。
 とりあえずまだまだ許容範囲とはいえ、傷が深くなる前に何かしらの手を打たなくては。



(2014.04.25)
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