「I have a bad feeling about this.」
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5.5

元村頼




出水、三輪、当真との戦闘を終え、みんなの元に向かった。
自分の隊の2人をみるとカンナは無傷だが、尚美は片足がないし、両手を地面につけて座り込んでいる。
三輪の鉛弾をもらったらしい。



「無事に終わったね」
「頼さん……無事かはわからないけど、とりあえずこれ重たいです」
尚美が笑いながら腕を見せてきた。

「それ結構重そうですね、一本何キロでしたっけ?」
「……100キロとか言ってなかった?ちっとも動かせないよ」

カンナが尚美の様子を伺う。これでは本部に帰れないから緊急脱出するべきか?



「元村さんも宮木も紫もよくやってくれた!ありがとう!」

遠くから嵐山が真野隊の3人に労いの言葉をかけてくれた。


「いえ、とんでもないです!」
「依織さんに私たちの活躍ちゃんと伝えてくださいね!」
尚美とカンナの2人が嵐山に伝える。
嵐山は澄ました顔で立っているが、嵐山にも鉛弾が何発か当たっている。かなり重たいはずだが、見かけによらずタフだ。

その隣に三輪がいるのを見て、尚美に声をかける。
「私、三輪にそれ外してもらうように行ってくるよ」
「ありがとうございます」
見ていて辛そうだ。なんとかしてやりたい。



 
「嵐山さん、近界民を庇ったことをいずれ後悔する時が来るぞ。あんたたちはわかってないんだ。家族や友人を殺された人間でなければ近界民の本当の危険さは理解できない。近界民を甘く見ている迅はいつか必ず痛い目を見る。そしてその時にはもう手遅れだ」


三輪が嵐山に憎々しげに言っていた。三輪は姉を近界民に殺されてひどく憎んでいる。

その様子を見て心が苦しくなった。


「甘く見てるってことはないだろう。迅だって近界民に母親を殺されてるぞ?」
「……!?」
「5年前には師匠の最上さんも亡くなっている。親しい人を失うつらさはよくわかってるはずだ」
嵐山の話に三輪は声が出ないようだった。


「近界民の危険さも、大事な人を失うつらさもわかったうえで、迅には迅の考えがあるんだと思うぞ」
嵐山は三輪に語りかける。三輪の目には戸惑いが見られた。



「うちだってそうだよ、尚美は弟を近界民に連れ去られてるし、依織さんは両親を近界民に殺されてる」
私も思わず話に入ってしまう。


「……!」
「辛いことだってあっただろうし、今だって心の葛藤があるのかもしれない。けど、嵐山の言うとおり、考えて、今行動してるんじゃないのかな」

三輪は何も言えなくなっている。自分の軸がブレているのだろう。
近界民を憎み、それを殺すことだけを考えていたに違いない。
しかし、自分と同じ境遇の人間がいて、自分とは別の考えで行動している人がいる。そのことを知ってしまった。


「……さて帰る前にこの重りを外してもらえるとありがたいんだが」
嵐山がそういうと三輪は悔しそうに近くにあったものを殴った。
「くそっ!!」
そして、黙ってその場を去っていった。



気づけば嵐山についていた重しが消えている。


「おっ、消えたな」
「嵐山、お疲れ様」
「元村さんもありがとうございます。三輪のことも」
「ううん、見てられなかっただけ。余計なこと言ってしまったかも」
「そんなことないですよ。彼もいい方向に進むと思います」
「そうだと良いけどね」


前に進んでくれれば良いのだけど。



嵐山隊の面々と分かれて、再び真野隊の方に戻る。
そこには何故か出水もいた。
出水は尚美の事が昔から大好きだから、話しかけにきたのだろう。


「さあ、2人とも嵐山に挨拶したし帰るよ」
帰ったら依織さんに色々と報告せねばならない。
「はい、じゃあね出水君」
「はーい、またやりましょうね」
尚美が出水に声をかけて、3人で歩き出す。


『まこと、今から戻るよ。お疲れ様!』
まことに通信を入れる。


『はい!お疲れ様です』
まことの元気な声が返ってきた。



「疲れましたね」
尚美がぽつりと言う。

「ほんとですね、結局何だったんでしょうか」
「帰ったら依織さんに聞こうか」
おそらく時間帯的に一人でまだ防衛任務をしている依織さんのところへ帰るのであった。


きっといつもの笑顔でおかえりと言って、みんなを褒めてくれるに違いない。


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