「I have a bad feeling about this.」
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23.5

「迅を部隊に誘った……?」
「三雲君凄いね!流石だ!」
2月16日。ランク戦ROUND 4が行われた翌日、依織は防衛会議の為、本部に来ていた。
会議室へ行く途中で会った風間と迅と一緒に廊下を歩く。
そこで迅に三雲から玉狛第二に入らないかとスカウトされたと聞いた。
確かに迅は今はフリーのA級隊員だし、ランク戦途中の加入も可能だ。
それでもそれを思いついて、やってのけようと思うのが面白い。
「まったく……豪胆というか、強欲というか……」
風間が呆れたように話す。
「なかなか鋭い一手でしょ。ふつう思いついても実行しない」
「うんうん、三雲君は面白いね」
依織は声を出して笑う。
「風間さんのアドバイスが効いたんじゃない?隊長の務めを果たせってやつ」
「……やることが極端すぎるが、視野が広がったならいいことだ」
「風間、良いこと言ったんだね。流石だ」
「……三雲の指示で動くおまえは想像すると面白そうだがな」
風間の言葉に依織も想像して見た。
「確かに!見てみたいね!迅、なんて返事したの?」
「いや〜〜おれもすごい楽しそうだと思ったんだけど、実力派エリートは引っぱりだこだからな〜〜」
迅は依織への返答を濁して、会議室のドアを開ける
「おつかれさまでーす」
迅が間延びした声で入室する。
依織も入ると自分たち以外全員揃っていた。
東、三輪、嵐山、冬島、太刀川、忍田、沢村、そして城戸。
A級部隊の隊長は防衛任務中の加古隊とスカウト旅中の片桐隊、草壁隊以外揃っている。
「揃ったな。では、緊急防衛対策会議を始めよう」
忍田が取り仕切って会議が始まった。
「早速だが、本題に入らせてもらう」
忍田の後ろのスクリーンに軌道配置図が現れる。
「先日の防衛戦で捕虜にした元・黒トリガー使いエネドラから「新たに近界からの攻撃が予測される」という情報を得たと開発室から報告を受けた。玉狛支部のレプリカ特別顧問が残した軌道配置図によれば、まもなく3つの惑星国家がこちらの世界と接近する」
軌道配置図が動く。二つの惑星国家が表示された。
「エネドラによればこのうち……ガロプラ、ロドクルーン。この二つがアフトクラトルと従属関係にあると言う」
「従属関係……こないだの連中の手下ってことか」
太刀川が発言する。
「あくまでまだ予測の段階ではあるが、襲撃があるなら迎え撃つ用意が必要になる。二つの国との接触までほとんど時間がない。対策には緊急を要するためこうして集まってもらった」
依織は自分も今回初めて聞いた情報である事に納得した。本当に直前に黒トリガーから聞いた情報なのだろう。普段であれば依織は会議の前に忍田から個別に聞かされる事も多いのだ。
「……攻撃があるとしたら敵の目的はまたトリオン能力者を攫う事ですか?」
三輪が発言する。三輪は前回の襲撃の時に敵主力と戦闘になった。目的を知っておきたいのだろう。
「それについては……」
忍田が迅を見る。
「まだわかんないですね、ここ何日か日中ぶらぶらしてましたけど……ボーダーの人間にも街の人たちにも今のところ攫われたり殺されたりする未来は見えない」
「それなら尚美も何も言ってなかったよ。大規模な侵攻ならこの前みたいに何か感じているはずです」
依織も発言する。尚美なら人の身に危険を感じる嫌な予感がすれば間違いなく依織に伝えるはず。
まぁ、本人は最近のランク戦の解説にてんてこまいで、それどころじゃ無いのかもしれないが。
「宮木ちゃんもそうなら、じゃあ攻めてこないってことじゃないの?カニ野郎のふかしかも」
冬島は技術者だから、黒トリガーともよく会っているのだろう。
「あるいは人材以外に狙いがあるのか……」
東が考えを話す。
「人材以外って何?」
冬島が東に尋ねる
「技術、情報」
「捕虜の奪還もしくは処分」
風間が東に続く。
「ああ〜」
「確かに隠密任務ということは考えられるな。ガロプラもロドクルーンもデータではそれほど大きな国じゃない」
忍田が東達の考えに賛同する。
「エネドラは「アフトクラトルが手下をけしかけてくる」という表現を使っていて襲撃の手段まではわからないと言っているようです」
沢村の話を聞いて依織は会ったことはないが、黒トリガーは適当な奴なのかもしれないと思った。
あえて教えないのか、本当に知らないのか。
「ガロプラとロドクルーンがこちらの世界を離れるまでは通常の防衛体制に加えて、特別迎撃体制を敷いていくことになる。その内容についてこれから協議していくわけだが……その前に城戸司令よりこの件についてひとつ指示がある」
忍田が城戸に話を振る。
「今回の迎撃作戦は可能な限り対外秘として行うものとする」
それを聞いて各隊長達は何かを察する。
「対外秘……?!市民には知らせないということですか」
市民への活動も多く行なっている嵐山が代表して城戸に聞く
「そうだ。大規模侵攻からまだ日も浅い。この短期間に再度侵攻されるとなれば市民の動揺がぶり返す恐れがある。そうなればボーダーに対する風当たりが強まり、現在進行中の遠征・奪還計画に支障が出ないとも限らない」
城戸の話には依織も納得する。前回の侵攻で市民に死亡者はいなかったが、恐怖を感じた人も多かったはずだ。それでもボーダーへの信頼で三門市に残った人もいる。その人達を裏切ることはしたくない。
「当然敵の出方次第ではあるが、市民には襲撃があったことを気付かせないことが望ましい」
「「気付かせない」のレベルだとボーダー内部でも情報統制が必要になりますが」
「その通りだ」
風間の意見を忍田が肯定する。
「作戦はB級以上、必要最低限の人員のみに伝える。それ以外は通常通りに回してもらう。防衛任務もランク戦も通常運転だ」
それを聞いて依織が発言する。
「ランク戦も通常通りするとなると、うちの隊は迎撃作戦には出れなくなる可能性が高くなりますが……」
真野隊は本部防衛が主だ。ランク戦が重なるとそれができなくなる可能性が高い。いざという時の一般職員の守りが疎かになる。
「その時はその時だ。他の隊員が本部に詰めているから問題ない。が、宮木の能力は頼りになる。出来れば出てもらいたい」
忍田も最近のランク戦の解説に尚美が出ずっぱりな事は知っているようだ。
「では、その時は私が代わりに」
「ああ、頼む」
「こりゃー大変だな。迅の予知がなけりゃなかなかハードだ」
「人死にが出ないっぽい分気分は楽でしょ」
太刀川に迅が答える。
「敵の目的がはっきりしないのは厄介だな……」
「準備はしっかりしておかないと」
風間に依織も話す。
「一応大規模な襲撃の可能性も押さえつつ、基本的にはA級中心で警戒・迎撃に当たってもらう」
この場にいない加古隊、草壁隊、片桐隊にも通達はあるようだ。草壁隊と片桐隊もしばらくすれば戻ってくる。そうなると心強い。
「小部隊でやるなら天羽の力を借りた方が良さそうですね」
「天羽?」
「あいつは極秘作戦向いてないでしょ?」
東の意見に冬島と太刀川が疑問を呈す
「いや、あいつのサイドエフェクトを借りるんだ」
「「ああ〜」」
迅と、天羽と尚美。みんな頼りになる後輩だ。
依織はにっこり笑う。自分はそれをフォローしなければ。




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