「I have a bad feeling about this.」
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33.5

「もしもし、宮木です」

恐る恐る電話に出た。嫌な予感なんて力を使わなくてもしていた。

「……随分遅かったね?」

電話の相手はいつもよりずっと低い声だった。普段はあんなに軽い感じの話し方をするのに、信じられないくらい、重たかった。

「はい、携帯をカバンに入れっぱなしにしておりまして……」
「それ携帯の意味ある?」

言い訳をバッサリ切られた。やはり小手技は通用しないらしい。

「はい、遅くなってすいません……」

私はただ謝るしかできなかった。変に話をして怒りを燃え上がらせたら後が怖い。彼は普段はにこやかなだけに怒らせるととんでもないのだ。

「うん、とりあえず本題に入るけど、写真集って何?今辻ちゃんから聞いたんだけど」
「あっ、聞きました?」

思わず敬語になる。
依織さんは辻君と模擬戦をすると言っていた。普通に考えて辻君には写真集の事が耳に入るだろう。そしてその流れで二宮隊に知れ渡るのは理解できる。噂はこうやって広まっていくのだ。作戦通りと言えば作戦通りだ。

「聞いたって今言ってるよね?どういうこと?」
「いや、あの、根付メディア対策室長から依織さんに話がありまして、隊としてお受けすることに」

だから自分はどうしようもないんだということを暗にアピールする。隊長命令は絶対だ。それは電話の相手もよくわかっているだろう。

「何でそれを受ける事にしたの?前に依織さん雑誌の取材断ってたよね?2回目はしないって」
「はい……」

事実だがなぜそれを知っている。うちの隊にそんな打診があった事なんてそうそうわからないはず。

「それを飛び越えて何で写真集?しかも水着着るって話じゃん。何、尚美チャン、ゴリ押しされたの?断んなよ」
「いや、色々事情が……」
「何?この間のC級の隊服きてたやつ?」
「……まぁ、そんなところです」

相変わらずこの人は察しがいい。怖いくらいに。どこから情報を手に入れてくるのだろうか。

「ひょっとして、玉狛のヒュース君の素性と関係してる?」

まさかここまでとは思っていなかったが。

「はい、よくお気づきで」
「わかる人が聞いたらわかるよ。同じタイミングで噂が二つも飛び交ってたらさ。で、写真集の方もただの噂な訳?」

「それは……本当で……」


私も思う、噂だけならよかった。きっとここでただの噂だよ、と言えたらそれでこの拷問のような電話も終わっていただろう。

「はあ?マジなの?」
「根付さんに、ご迷惑をおかけしたので……」
「それで何で尚美がするの?意味わかんない。水着とかありえないんだけど」
「うん、そうだね」

ついに呼び捨てで呼ばれた。これはかなりキている。

「隊内で見られるのだけでもいやなのに、一般人も買えるんでしょ?それ」
「澄晴くん、落ち着いて……」

私も思わず普段はしない呼び方で呼ぶ。

「落ち着いてるから、自分でも驚くくらい落ち着いてるから」
「そうですか……」
「とりあえず二宮さんと一緒に今から真野さんに抗議しに行ってくるから、おれは反対だからね」
「あっ、わかりました……」
「言っとくけど、これで終わりじゃないからね。あとで作戦室いくから首洗って待っといて」
「いや、はるくん防衛任務じゃ…」

慌てて止めようとしたが、電話はすでに切られていた。このまま何も知らないふりして部屋に戻りたかったが、大人しく作戦室に待機することにした。




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