「I have a bad feeling about this.」
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翌日、私は防衛任務が無かったので六頴館高校で授業を受けていた。もうすぐ定期試験がある為、可能な限り授業は出席しておきたかった。授業を受けておかないと試験で平均点以上を取るのは難しい。ここは三門市内でも有数の進学校であるから優秀な生徒が集まってきている。ボーダーとの両立は容易ではない。
だいぶ前にボーダー推薦で三門市立大学に進学は決まってはいたものの、学生の本分は勉学。残り少ししかない高校生活をできるだけ楽しみたいと思っていた。

今は午後一つ目の授業。やや眠気も感じられるが、得意な化学だ。集中して聞く。

「じゃあ、ここを宮木!わかるか?」

担当教師に当てられた。ノートを見ながら答えようと席をたつ。

「はい……」

その時昨日も感じた「嫌な予感」が強くなった。バっと窓の方を見る。校庭だ。何か来る。瞬時にそう判断した。昨日忍田さんが言っていた、イレギュラーゲートだろうかと考えを巡らせる。自分の力ではそれくらいしかわからない。

「宮木??」

急に窓の方を見て、一言も喋らない私に教師が声をかける。授業中だったと思い出して、教師にあわてて伝える。

「先生すみません、授業抜けます」
「は!?」

戸惑う先生を前に詳しく説明している暇はない。急がなければ。そのまま窓の方に行き、窓を開けて飛び降りようとする。

「宮木?!待ちなさい!」

教師も私がボーダー隊員だと言う事は知っているが、3階の窓から飛び降りようとする事に慌てて窓に駆け寄ろうとする。ちらりと後ろを振り返ると他の生徒たちは唖然としていた。

「先生、念のため避難指示お願いします」

そう言い残して飛び降りた。飛び降りると同時にトリガーを起動させる。緊急時に備えて普段からトリガーは持ち歩いており、今日もスカートのポケットに入れていた。

校庭に降り立つとともに門が現れ、警報のサイレンが鳴る。何度聞いても嫌な音だ。門から地響きの様な音がする。
4年前を思い出す。いつまでたっても忘れられない。私達の生活を変えてしまったあの日。私の大事なものを奪っていったあの日。

「こう言う嫌な勘は本当によく当たる」

やはりイレギュラー門だったようで、門から次から次へと近界民ネイバーがやってくる。全部で3体。比較的見慣れている四足歩行の戦闘力が高いものだ。そのうちの1匹がこちらの方を向く。
生徒達がパニックにならないうちにさっさと片付けた方が良い。そう判断して、近界民が近づいてくる前に両手からトリオンキューブを出す。

集中しろ、3体だ。手早く、無駄なく。

誘導弾ハウンド炸裂弾メテオラ

キューブ同士を練り込むとギュンと高い音がした。久しぶりに合成弾を使ったが、上手くできたようだ。

誘導炸裂弾サラマンダー!」

パッと光を伴って近界民に向かって放つと、ドーンと衝撃と共に煙が上がる。おそらくいつもの防衛任務で倒してるものであれば、これでいけるだろう。2体目を倒そうとトリオンキューブを両手に出しながら次の近界民を探す。すると、煙の中から2体が同時にこちらへ向かってきた。
一体ずつ倒したいが、もう一体が校舎の方に向かって、一般人に被害が出れば大変なことになる。左右で攻撃をそれぞれ放つか悩んでいると、ドッと校舎から発砲音が聞こえた。
近界民の一体が横に転がる。3階からの狙撃のようで、そうなるとわかることがある。

『宮木、一人で飛ばすな』
『荒船君、助かる。ありがとう』

隣のクラスでボーダーに所属する荒船君からの内部通話がきた。
狙撃手スナイパーの荒船君が今日は登校していたのか。
在校生には私以外にも当然A級、B級隊員がいるのだが、あいにく防衛任務で登校していない場合もある。
うちのクラスで言うと、会長だ。
王子隊は今日は防衛任務らしく登校していない事はすでに朝の時点で把握済みである。その時自分の目の前に飛び出してくる黒い姿が2つあった。
そうだこの二人もいたんだと思い出す。昨日同じタイミングで防衛任務だったから今日も任務というのは余程のことがない限りないだろう。すっかり頭から抜け落ちていた。

意外と自分は冷静なつもりだったが、どうやらテンパっていたらしい。
「宮木先輩、遅くなりました」
弧月を右手に持ち近界民を斬り伏せる二宮隊の辻君と
「尚美チャンが早いのはいつものやつでしょ」
突撃銃アサトライフルをぶっ放して近界民を戦闘不能にする同じく犬飼くんがいた。
荒船君も含めて4人でかかればあっという間に近界民は殲滅される。校庭内ですべてが終わって、安心していると犬飼くんに話しかけられる。

「急に校舎から飛び降りたらびっくりするでしょ、先生が悲鳴あげてたよ」

犬飼くんが笑いながら私はの教室の方を指さす。犬飼くんとはクラスが離れているが、聞こえたのなら先生はよっぽど驚いて、叫んだのだろう。悪いことをしてしまった。
「辻君、犬飼くんありがとう。助かったよ」
尚美は周りがあまり見えていなかった事に少し恥ずかしくなった。
『こちら二宮隊犬飼。 六頴館高等学校にてイレギュラー門発生。近界民3体出現。
真野隊宮木、荒船隊荒船、二宮隊辻、同じく犬飼で撃破しました。』
犬飼くんが本部通信司令室に報告する。
その間に荒船君が校舎から降りてきた。
「宮木、お前無茶するなよ」
「荒船君ありがとう、本当助かったよ。」
「久しぶりにお前が射手シューターしてるところ見たよ相変わらずすげえな」
荒船くんと話している間に、犬飼くんは本部との通信が終わったのだろう、こちらに本部からの指示が来た。

『宮木隊員、荒船隊員、辻隊員、犬飼隊員は回収班が来るまでそこで待機していてください』
『宮木了解』
『荒船了解』
『辻了解』
『犬飼了解』

全員がそれぞれ返事をする。校舎の方をみると、窓からたくさんの学生がこちらを見ていた。そこには私のクラスメイトで仲のいい友人もいた。遠くなのでおそらくだが、目が輝いているような気がした。これは後で質問攻めにあうだろう。

「これ、昨日報告があったイレギュラー門だよな」
荒船君が確認する。
「そうだね。でないとこんなところに出るわけないもん」
「もう昨日今日で六件出てるらしいし、さっき三門三中でも出たんだって」
犬飼くんが先程の通信で手に入れたのだろう情報を話す。
「原因がわからないと、対処のしようがないですね」
辻くんは換装を解き、制服姿に戻った。
「流石にこんなに広範囲になると防衛任務にも支障がでるぞ」
荒船君も元に戻る。
それを見て、私と犬飼くんも換装を解く。
「尚美チャン、一人で飛び出して無茶しすぎたよ、ここに何人ボーダー隊員いると思ってるの?」
「誰が登校してるかわからなかったから。会長は今日いないし……」
犬飼くんに言われて、気まずかった。言うようにまずは周りを確認すべきだった。

「それにしたって、本部に通信入れるとかあるでしょ」
「はい、すいません…」

犬飼くんにもっともなことを言われては凹む。
無我夢中でやってしまったが、確かに最初に指示を仰ぐべきだった。

「まぁ、被害なかったらいいんじゃね?それにしても授業またダメになったか」

荒船君は私を気遣ってか話を変えてくれた。流石できる男である。 

「それだよ、今日の化学の範囲は試験に出るって言ってたのに」

それは後日友達に聞かないといけない。なにか貢物をして教えてもらおう。

「試験近いのにこれは辛い」

犬飼くんはけらけらと余裕そうに笑う。
犬飼くんは意外と勉強ができる。荒船君もそうだ。すると辻君がぽつりと言った。

「……先輩達もう少しで卒業ですね」
「え、辻君……」

言われた言葉を聞いてみんなで辻君の顔を見る。

「ひょっとしておれらが居なくなるの寂しい??」
犬飼くんもにやけながら辻君に聞く。
そう、辻君の声がさみしそうに聞こえたのだ。

「もちろんです」
「そっか…」
「お前結構かわいいとこあんな」
「辻ちゃん〜〜おれは隊でずっと一緒だよ〜〜!」

あまりの後輩の可愛さに、先輩3人はにんまりと笑うのであった。







読んでも読まなくてもいいおまけ↓
出来れば初回は読まない方がいいかも。
3.5

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