「I have a bad feeling about this.」
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12月18日、私の嫌な予感はずっと続いていた。
小型近界民ネイバーを駆除したのだから、もうイレギュラーゲートの心配をしなくても良いのに。そう思いながら、答えの出ないもやもやを抱えて過ごしていた。
実際あれから一度もイレギュラーゲートは発生していなかった。もう少ししたら夜の防衛任務が始まるのだが、忍田さんに依織さんが呼ばれたので、他の4人は作戦室で待っていた。

「なんでしょうね、忍田本部長」
「また暗躍でしょ。うちはそんなんばっかり」
まこととカンナが話す。
「仕方ない、依織さんはそれだけ忍田本部長から信頼されてるんだから」
頼さんは椅子に座っていつものように本を読んでいる。私と2人、読書が趣味だ。よく本の貸し借りをしていてる。

全員トリオン体にすでに換装済みで、隊長の帰りを待つ。そろそろ日中の隊との引き継ぎの時間になる。

「でも、もうすぐ引き継ぎの時間ですよ?遅くないですか?」
カンナが廊下に出て様子を見てこようとする。カンナは少しせっかちな所があるのだ。

「うわっ、隊長!」
「みんなお待たせ」
扉の前に依織さんが立っており、丁度入ってくるところだったようだ。いいタイミングだ。

「いえ、それでは行きましょうか」
頼さんも本を閉じて立ち上がる。
「いや、今日みんなは防衛任務は無し」
「え?」
思わぬ事を言われて全員が依織さんを見る。

「どういうことですか、隊長?」
頼さんが代表して依織さんに訊く。みんなは、と言うことは。

「うん、本当はしっかり説明してあげたいんだけど、あいにく時間がない」
依織さんがすまなそうに言う。

「とりあえず防衛任務は今日は私1人で行くから、みんなは今から玉狛に向かって」
「玉狛?!」

普段は落ち着いている頼さんが珍しく大きなリアクションをする。
玉狛には頼さんの苦手とする人がいるのだ。その人に会うかもしれないと思って嫌なのだろう。顔が物語っていた。
それにしても玉狛。よく玉狛支部がある範囲の防衛任務をすることはあるけど、言い方からしてそれではないんだろう。

「そう、玉狛」
にっこりと依織さんは言う。
「玉狛に行って何をするんですか?」
私はさっぱり話が掴めなかった。あの玉狛支部が何かトラブルを起こしたのだろうか。


「そこできっと、迅と城戸派が揉めてるから迅を手伝ってあげて。嵐山隊も向かってる筈だから。まことも私は良いから、3人についてあげてね」
「了解です」

まことは早速デスクの方に向かう。
依織さん以外の隊員はさっぱり理解できていなかったが、言われた以上動くのがこの部隊だ。動いているまこともおそらくほとんど分かってないだろう。

「それと尚美」
「はい!」
依織さんが私だけ呼ぶ。
「きっと出水がいるから尚美も射手シューターのトリガーにしておきなよ」
「え、出水君いるんですか……」

揉めてるって、そういう揉めてると言うことか。隊員同士が戦闘をしていると言うことなのだろう。それは立派な隊務規定違反だと思うが。

「いると思うよ、相手は遠征組だもん」
「よりによって遠征組……強い人ばっかり」

そういえば遠征組は帰ってきたばかりではないだろうか。今回の遠征は上位三チームが参加している。無事に帰ってきて何よりだが、帰って早々揉めるなんてどう言う経緯なのか。

「尚美先輩〜トリガーこれでいいですか?」
考え事をしている私に、モニターの前で作業をしているまことが声をかける。
私のトリガーを設定してくれているのだろう。相変わらず仕事が早い。

「あ、確認する!ありがとう」

まことのもとに行く。
「私は行ってあげられないから、みんなよろしく頼むよ」
「元村了解」
「紫了解」
「宮木了解」
戦闘員の3人は依織さんに力強く返事をした。


バッグワームをつけて3人で日の落ちた町を走る。
『私さっぱりわかってないんですけど、頼さんわかりました?』
カンナが走りながら内部通話で話しかける。
『私も正確にはわからないから、推論になるけど、ボーダー内に3つの大きな派閥があるのはわかる?』
『はい』
『私たちがいる派閥が、治安維持を目的とした忍田本部長派。
近界民と敵対するのが城戸司令派。逆に近界民と友好的なのが林道支部長がいる玉狛支部派』
頼さんが実にわかりやすく説明していく。
『その城戸司令派と玉狛が揉めているって事は?』
『近界民が関わってるって事ですか?』

頼さんの質問にカンナが答える。私もなるほどと、うなづきながら黙って聞く。
ひょっとしたら先月あった未確認のトリガーも関係しているかもしれない。嫌な予感の理由はこれなのか判断できぬままだった。

『もう少しで玉狛支部だから私はここで別行動するわ、きっと嵐山がいるから彼の指示に従って』
『了解です!』
『頼さんお気をつけて』
頼さんは狙撃手スナイパーなので、相手に見つからないようにバッグワームを起動して単独行動する。狙撃位置につくのだろう。
普段であれば私もそうなるのだが、今回は中距離ミドルレンジでカンナとタッグを組んで行動するため、別行動だ。
頼さんと分かれてカンナと2人走り続ける。
『射手の尚美先輩とコンビ組むの初めてで、楽しみです』
普段カンナは依織さんとともに行動することが多い。私に依織さんの代わりが務まるだろうが。
『足引っ張らないように気をつけるよ』
『またまた〜』
先ほどから何回か緊急脱出ベイルアウトの光が空に上がっていた。そろそろ身を隠して行動しなければならない。


2人は立ち止まる。嵐山隊の嵐山さんと時枝君がいるのが見えた。どうやら間に合ったようだ。
相手は太刀川隊の出水君と三輪隊の三輪君だ。

『相手は出水と三輪ですね』
『藍ちゃんは?』
2人で状況を伺うが、いるはずの藍ちゃんの姿が見えないことが気になった。
『木虎隊員は近くの建物で米屋隊員と交戦中』
まことから通信が入る。
『うわー3人とも厄介ですね、頼さんどうします?』
カンナが訊ねる。
『まぁ順当にいけば、私が木虎さんを援護して、出水は尚美、三輪がカンナだね。
まずは嵐山隊と合流。私も狙撃位置についたよ、行こう』
頼さんも準備が整ったようだ。訓練ではない隊員たちとの対戦。久しぶりである。

『宮木了解』
そう答えるとトリオンキューブを右手に出す。
『紫了解』
カンナは突撃銃アサトライフルを左手に出した。
嵐山さんが三輪君からの鉛弾レッドバレットによる攻撃を受け、足が止まったタイミングで、出水君が嵐山さんに向かって通常弾アステロイドを放った。そのタイミングで私は追尾弾ハウンドを飛ばす。ドドドッとぶつかって二つの弾は消滅した。


「!!」
『嵐山さん、真野隊宮木です』
驚かせないように嵐山さんに内部通話で話しかける。
『……宮木来てくれたのか、助かった!』
『紫と2人で来ています。援護します』
『元村もいるよ。木虎さんと米屋君の方をチェックしてる。木虎さんのフォローは任せて』
頼さんが会話に入る。

『OK!宮木と紫は俺たち2人と行こう』
『宮木了解、出水君は任せてください』
『紫了解。私は嵐山さんの足のフォローを』



「なんだなんだ、今のは」
追尾弾ハウンドだったな」
三輪君がさっと出水君の横に立つ。
「これは、あれだな……尚美さんだ」
出水君が楽しそうに三輪に言う。私の名前が出てきた事にドキリとした。

「ご名答。よくわかったね」

カンナと2人姿を現す。出水君は何故私とわかったのだろうか。

「真野隊か……」
三輪君が睨みつけてくる。前からうちの隊を目の敵にしてるので当たり前と言えば当たり前か。

「真野隊は忍田本部長の命により、迅隊員並びに嵐山隊に加勢します」

カンナが高々と宣言する。

「尚美さ〜ん、何何?姿見せたって事は今日は射手するってことでいいんだよね?」
「今答える義理はないよ」

出水君は緊張感なく私に話しかけたので、バッサリ言う。敵同士なのに、余裕そうだな。私如き大したことはないと言う判断なのだろうか。

「来て良かったな〜尚美さんとやれるなんて久しぶりだ。三輪、俺が尚美さんとやるぜ」
「好きにしろ……その代わりしっかり止めろ」
「勿論だぜ……変化弾バイパー!」

出水君は巨大なトリオンキューブを出し、私に向かって放つ。相変わらずの膨大なトリオン量でとんでもないことをしてくる。

「っ!追尾弾!」

それを慌てて全部消し飛ばす。A級1位部隊に所属する出水君の相手をするには骨が折れそうだ。しばらく追尾弾で出水君と打ち合う。時間稼ぎをする様に攻撃を打ち消して躱していくが、なんとかして崩さないと勝ち目はない。お互いよく知っているだけに難しそうだ。
一対一なら両攻撃したいところだが、おそらく狙撃手も来てるところだろう。

カンナの方をチラリとみると三輪君相手に片足をやられた嵐山さんをフォローしながら時枝君と一緒に撃ち合っている。

「よそ見してていいの?尚美さん」
出水君に言われて、慌てて視線を戻す。
出水君はトリオンキューブを両手に出しており、両攻撃しようとしていた。防御ガードができない今、頼さんが狙撃するチャンスだ。しかし、頼さんは藍ちゃんの方を見ているはず。出水君の両攻撃を私1人が片手で防ぐのは難しい、出水君はニヤリとした。

『頼さん!』

ドンッ!キィィィン
銃声が聞こえた。頼さんの狙撃だ。こちらも見ていてくれたらしい。

「あっぶねー!やっぱり元村さんもいたか」
出水君は盾を張っていた為、頼さんの狙撃ではノーダメージだ。出水君は素早く頼さんがいた方向に、通常弾を放った。ハメられたのだ。出水君は本気で両攻撃をしようとしていたわけではなく、頼さんがいるか確認し、場所を把握するために釣ったのだ。

『すみません、頼さん』
『大丈夫!固定シールドで防いだ』

バシャッ
上から何か降ってくる。
「弾バカ出番だぞっ!って増えてる」
藍ちゃんと米屋君だ。2人が揉み合って落ちてきている。
米屋君はいつの間にか私とカンナがいることに驚いたようだ。

「誰が弾バカだ!今いいところなんだよ!蜂の巣にするぞ!通常弾!」
素早く出水君が両手から2人目掛けて通常弾を放つ。それを見て私もトリオンキューブを両手に出す。両攻撃している出水君は隙ができている。やるなら今だとこちらも攻撃を放つ。

「変化弾!」
しっかり、弾道を引いて出水君に放つ。

「……ッ!」
攻撃を放つタイミングでどこからか狙撃されたらしい。片足をやられた。頭と心臓はシールドで守っていたので、その隙間を狙われたらしい。

「くっ」

私が放った変化弾による攻撃で出水君もシールドが遅れ、被弾する。そこにカンナが現れ、出水君に追い討ちをかけた。突撃銃で出水君に向かって乱射する。

「尚美先輩!大丈夫ですか?」
「カンナありがとう。狙撃された」

フォローに来てくれたのだろう。カンナはアシストとしても優秀だ。
私はパッと上を見る。藍ちゃんはどうなった。
「すごっ…」

時枝君が藍ちゃんの前でシールドを張っているのが見えた。流石嵐山隊。フォローが上手い。

「マジか!」

そう言いながら出水君は背後の壁を登って離脱する。立て直す算段だろう。

パッと狙撃の銃弾が時枝君をおそった。
頭に当たる。即死だ。誰だろうか、やはり狙撃手もいたようだ。
パッと光と共に2発目がくる。藍ちゃんの顔を狙った狙撃。

やられる。

そう思ったが、時枝君が咄嗟に藍ちゃんを引っ張り、頭ではなく足に被弾した。

『ごめん、間に合わなかった!狙撃手を捕捉したから、そっちに回るね」

頼さんからの通信が入る。出水君に爆撃されたから、すぐには狙撃が出来なかったのだろう。

『いえ、頼さんナイスフォローです。私のミスです』
足をやられている嵐山さんと藍ちゃんをカンナと2人でフォローに入る。

時枝君と米屋君が次々と緊急脱出していった。

「藍ちゃん大丈夫?」
「宮木先輩、ありがとうございます。すみません嵐山先輩、詰めを誤りました」

藍ちゃんは礼を言うと、隊長である嵐山さんに詫びる。真面目な子だ。

「反省は後だ、まだ終わってないぞ」
「今の狙撃は?」
「当真だろう」

カンナに嵐山さんが言う。冬島隊の当真君か。当真君は放っておくのは怖い。なんせボーダーNo.1狙撃手である。

どうしようかと考えている間もなく、すぐに出水君と三輪君の攻撃が再開された。4人で応戦する。

「嵐山先輩!私たちの足じゃいずれ追いつかれます!狭い道を利用しましょう!」

藍ちゃんが提案する。足が生きているのはカンナだけだ。

「了解だ!当真の射線に入るなよ」

まずは全員一旦バッグワームをつけて路地に逃げ込む。
こちらも考える必要がある。あの三人を迅さんのところに行かせてはならないのだから。




「路地に入ってこないってことは……持久戦ですか?」
「それならありがたいけど違うだろうな」

藍ちゃんの考えを嵐山さんが否定する。
「出水君なら爆撃してきそうだけど、三輪君も一緒だったらどうかな、三輪君が指揮を取るはずだから」
私は出水の事は良くわかっているが、三輪君の事はあまり詳しくない。3人に話を振る。
「出水だけなら即、炸裂弾メテオラですよ!」
「……たしかに」

カンナの意見に頷く。弾バカの彼ならやりかねない。昔から意外と力任せにやる時がたまにある。

『賢、まだいるよな』
嵐山さんが同じ嵐山隊の佐鳥くんに内部通話で話しかける。

『はいはいひっそりと生きてますよ』
『佐鳥いたんだ……』

カンナがボソッと言う。たしかに今までもわからなかった。狙撃手としていい能力ではあるんだが。

『紫先輩ひどい!』
佐鳥君に聞こえていたようで、悲しげに言われる。ごめんね、カンナは思ったことをそのまま言っちゃう子なんだよ。オブラートに包むってことを知らないのだ。

『何やってるんですか佐鳥先輩。まじめに働いて下さい』
『この辺マジで射線通んないんだって!なんか当真さんもこっち来てるし!」

藍ちゃんは相変わらず他人にも厳しい。先輩だろうがお構いなしだ。

『レーダーの精度を10秒だけ上げてくれ、三輪たちの正確な動きが知りたい』
『了解』

レーダーの担当が佐鳥君なのだろう。嵐山さんの依頼に佐鳥君が答える。

『まずいな、迅の方に向かっている」
嵐山さんが言うのを聞いて、私もレーダーを慌てて覗き込む。

「……!」
『三輪先輩と出水先輩はそうすね。当真さんは「バッグワーム」着てるからわかんないすけど』

佐鳥君もおそらくレーダーを出しているのだろう。

『罠ですね。100%私たちを釣り出すための誘いです』
『だろうな』
『でしょうね』

藍ちゃんの考えに嵐山さんと私はうなずく。
こちらを放っておいて彼方に行くわけがない。背後から狙われるリスクがあるのに。

『けど、放っとくわけにはいかない。迅に任された相手だ。綾辻』
『はい、嵐山さん』
嵐山さんが嵐山隊のオペレーター、綾辻ちゃんに話しかける。

『このあたりの狙撃ポイントを洗い出してくれ』
『了解しました』
『賢、木虎、宮木、紫。それに元村さん働いてもらうぞ』
どうやら嵐山さんにいい作戦があるようだ。



『じゃあ、行くぞ』
嵐山さんの合図で作戦を開始した。
嵐山さんと私だけバッグワームを解除する。
囮だ。相手の罠にハマったふりをするのだ。2人はあえて広い場所を選んで現れた。


「嵐山さん、尚美さん見っけ。メテオラ」

すぐに出水君の攻撃がくる。2人で防御をするが、出水君の炸裂弾の威力は強い。両防御フルガードしているが、集中砲火を浴びて盾が持ちそうもない。

「うっ」
両手が撃たれた。シールドをすり抜ける三輪君の鉛弾だ。重さで立っていられず、思わず座り込んでしまう。

「宮木!」
「大丈夫です……!」
出水君の横に三輪君がいる。そうなると当真君も近くにいるはず。

「うおお耐えるなー嵐山さん。尚美さんも防御張ってるだけある」
「深追いするなよ、木虎と紫の奇襲を最警戒しろ。紫は足がある」

出水君と三輪君の会話が聞こえる。

嵐山さんも私も長くは持たない。
カンナと藍ちゃんの2人がこの周りの建物を手分けして探している。当真君を探してまず戦闘不能にしなければ勝ち目はない。

「嵐山さん、あんたの有能な部下はどこに行った?……宮木さんも紫はどこだ?
あんたたちを囮にして奇襲するんじゃないのか?」
「……それはどうかな?」
「……さあ、どうでしょう?」
「うわぁ、2人ともウソ下手だなぁ〜!」

出水君に言われるが、知ったこっちゃない。出来るだけ時間を稼がなければならない。
三輪君が容赦なく今度は嵐山さんに鉛弾を放つ。

「まぁいい。どちらにしろ1人ずつ潰して行くまでだ」
2人に出水君と三輪君の攻撃がくる。
私は使えない両手で追尾弾を放ち、嵐山さんは視線を飛ばして瞬間移動テレポートした。
嵐山さんが出水君と三輪君の背後に回る。当真くんが狙っているかもしれないが、形としてはこれで私と挟み撃ちができる位置になった。

その時ドドンッと大きな音がした。誰かが緊急脱出した音だ。

『だれ??』
『当真隊員です!』
まことからの通信だ。
カンナか藍ちゃんのどちらかがやってくれたようだ。
「!?」
「はあ!?当真さん……?!」

三輪君と出水君が驚く。まさか当真君が狙われるとは予想していなかったのだろう。
こちらの作戦勝ちだ。


「うちの作戦はおまえの言う通り……「俺達をおとりにして奇襲」だよ」
「……嵐山!」
三輪君が激怒して嵐山さんを撃つかと思われた時、
ドドンッと続けて音が鳴り、三輪君と出水君の腕が飛ぶ。今度は音からして佐鳥君の狙撃だろう。流石の腕前である。

ドドン!
さらに狙撃。今度は頼さんだろう。出水君と三輪君の足が片足ずつ飛んだ。
「佐鳥……!元村さん……!」
出水君気づいたようだ。
藍ちゃんとカンナが戻ってきた。
藍ちゃんが嵐山さんのそばに、カンナが私のそばに来る。
「カンナ、ありがとう」
「やったのは木虎ちゃんですよ」
身動きの取れない私をカバーするようにカンナが私の斜め前に立つ。

「広い場所で戦ったのは失敗だったな、三輪」
「……まだだ!」

嵐山さんの問いかけに三輪君が刃を抜くと思われたが
ドドンッと同時にまた新しい爆発音がなった。向こうの方で2人、緊急脱出したようだ。

「くああ〜〜〜!負けたか〜〜〜!つーか迅さん6対1で勝ったの?太刀川さんたち相手に!?黒トリガー半端ねーな!」

その光をみて出水君が悔しそうに言った。おそらく向こうのオペから通信が入ってるのだろう。
それを聞いてひとまず自分のやるべき事は終わったことがわかったので一息つく。結構ギリギリだった。
それにしても迅さんは6人相手にしているらしい。遠征組なら猛者揃いだ。それをまとめて相手にするなんて異常なほど強い。


「無事に終わったね」

頼さんが狙撃ポイントからこちらにやってきた。

「頼さん……無事かはわからないけど、とりあえずこれ重たいです」
頼さんに腕を見せる。両腕を地面につけた状態なので、何もできない。
「それ結構重そうですね、一本何キロでしたっけ?」
カンナが言う。
「……100キロとか言ってなかった?ちっとも動かせないよ」
嵐山さんと藍ちゃんのところにも佐鳥君がやってきている。
「元村さんも宮木も紫もよくやってくれた!ありがとう!」
遠くから嵐山さんが真野隊の3人に労いの言葉をかけてくれた。
「いえ、とんでもないです!」
「依織さんに私たちの活躍ちゃんと伝えてくださいね!」
私とカンナがそれぞれ言う。
依織さんにもいい報告が出来そうでほっとする。

「私、三輪にそれ外してもらうように行ってくるよ」
「ありがとうございます」
私の様子を見かねた頼さんが三輪君と嵐山さんが何か言い合っているところに走って行った。ありがたい。この状態ではこのまま帰れそうになかったから。

久しぶりに射手をすると疲れた。頭をフル回転させたから、さっさと戻って休みたい。
これなら普段の防衛任務の方が楽だと感じた。ランク戦をしばらくしていないので隊員同士の戦闘もかなり久しぶりだったのもあるだろう。

「尚美さん〜!」
「……出水君」

出水君が片足で走ってこちらにやってきた。
先ほどまで敵としてやり合っていたのに、笑顔とは切り替えが早い。久しぶりに会う彼に笑顔を向ける。
「出水君、遠征から帰ってきたばかりなのに元気だね」
無事に遠征から帰ってきたことに少なからずほっとした。
「そりゃ、尚美さんと手合わせできたからね〜それはそうと、尚美さん射手に戻るの?」
出水君は私の視線に合わせるようにしゃがんできたが、距離感が近くて少し戸惑う。
「あー!出水!ダメ!尚美先輩はダメ!」

カンナがなにを思ったのか、出水君を押しのけた。出水君は足が片方ないので、バランスを崩して倒れる。
「なんだよ紫!邪魔すんな!」
同い年のカンナと出水君がギャーギャー騒ぎ始めた。仲がいいなぁと微笑ましくそれを見ていると、ふっと腕が軽くなった。三輪君が鉛弾を外してくれたようだ。

「尚美さん!今度また模擬戦やりましょうよ!」
カンナともみ合いになりながら出水君が声をかけてくる。

「……出水君とやると疲れるだろうから遠慮しとく」
10本勝負一回では終わらない気がするからだ。
それに昔はよくやっていたが、今やったら出水君にボコボコにやられるだろう。それくらい差がついてしまった気がする。

「じゃあ出水、私とやろう!」
カンナが手を挙げる。
「えー!お前やだ。荒っぽい」
「荒っぽいってなんだ!負けるのが怖いのか!」
「はあ?!お前に負けるとかあり得ねーし!」

また掴み合いの喧嘩になり始める。両手両足ある分カンナが有利なようだ。カンナの戦闘が荒っぽいのは否定しない。しばらく2人のやりとりをみていたら、頼さんが帰ってきた。私の腕を掴んで、立ち上がるのを助けてくれた。片足がないので1人では誰かに手伝ってもらわないと難しいと思っていた。

「頼さん、ありがとうございます。助かりました」
鉛弾のお礼を言う。これでみんなと一緒に帰れそうだ。
「さあ、嵐山に挨拶したし帰るよ」

出水君とまだ揉めてるカンナに声をかける。
2人はぱっと手を離してお互い距離を取った。

「じゃあね出水君」
私はひらひらと手を振る。
「はーい、またやりましょうね」
出水君はまだ個人ランク戦を諦めてないようだ。これはそのうちやってあげないとしつこいかもしれない。



久しぶりの戦闘で本当に疲れた。ゆっくり休みたい。
『まこと、今から戻るよ。お疲れ様!』
頼さんがまことに代表して通信を入れる。
『はい!お疲れ様です』
明るい声が返ってきて、その声に私はほっとした。

3人はその後、本部の作戦室に戻ったが、まだ防衛任務の時間帯だったので、一人で働いている依織さんの元へ行く事にした。そこで依織さんに笑顔で迎え入れられるのである。




読んでも読まなくてもいいおまけ↓
出来れば初回は読まない方がいいかも。
5.5

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