宿命論とチューリップ
部屋からチューリップの球根が出てきた。こんなものを買った覚えも、誰かからもらった記憶もない。呪物か?と警戒しながら球根を拾いあげる。手に取った感触はそのままただの植物だった。
小学生の頃に授業で植えた程度の記憶だったから、これをこのまま放置するのが正しいのか検討もつかない。詳しい人に聞くのが一番か。
そう思って、狗巻先輩に聞いた。狗巻先輩がいうには、チューリップの球根は秋に植えるらしい。せっかくだし埋めないかと誘われて、いいですよと答えた。狗巻先輩もチューリップの球根を持ってくる。どうやらお得意先の住職の奥さんが亡くなったそうで、住職本人は全く土いじりをしないから、と譲り受けたものらしかった。
何色のチューリップだろう、と狗巻先輩が首を傾げる。俺はなんとなく「白じゃないですか」と答えた。なんとなく、だから確証はない。驚いたような、なぜ知っていると尋ねるような、狗巻先輩の「高菜?」が聞こえた。だが、俺は口を閉ざす。
『なんとなく』について説明は不可能だ。
……ひとつだけ覚えているのは、白いチューリップの花言葉を告げるその人の、白い、細い、指と首筋だけだった。
22.06.14 / 22.12.05