present







「……退け。」

絞り出した声は、思った以上にかすれてた。



でも花は、退かない。



中学2年生。

好きな女が乱れた服で自分を押し倒している。

そして囁かれる甘い誘惑。


思春期真っ只中だぞ。

勃たねえわけねぇし、願ってもねぇ事だった。


気付けば花の手が俺のワイシャツのボタンを上から一つずつ外していた。

最後の一つを外し終わったところで花の腕を引っ張って、今度は俺が花を組み敷いた。


パチクリと驚いた顔で瞬きを繰り返す花。

俺はでけぇ舌打ちを一つこぼして、何度も想像で犯したその唇に喰らい付いた。



「んんっ...かつ、きっ..」

「はっ...してやるよ。女に。」




そして俺は花に童貞を捧げ、花も俺に処女を捧げた。

文字通り、大人の女にしてやった。



それからは花がうちに来るたびにセックスした。

初めこそゴムを準備してなかったが、次を期待していた俺は童貞卒業の次の日にはゴムを買いに行っていた。


花の、あの意味わからねぇ夢の話なんか、正直どうでもよくなってた。


ただただ、花と繋がれることが嬉しくて。

一度知ってしまったその快楽と、あいつのぬくもりに、俺は抗えなかった。

それは花も一緒だったのかもしれねぇ。


気付けば、何度も何度も、それを繰り返していた。




けど、俺たちは「恋人」じゃなかった。



付き合ってるわけでも、誰のものになったわけでもない。
なのに、誰にも渡したくねぇって気持ちだけは、ずっと強くなっていった。


俺は、花に想いを伝えるタイミングを完全に見失っていた。
今さら告白なんて、どのツラ下げて言えばいいのか分からなかった。

だから今も、俺たちはあいまいなまま、“幼馴染以上、恋人未満”っていう、クソみてぇな距離を彷徨ってる――。



月日が流れて中学三年の冬。

花が、ぱったりとうちに来なくなった。

理由は分かってる。受験勉強が本格的になったからだ。



「プロヒーローになれば、ホークスに会えるかもな。」

俺が何気なく言った一言が、あいつのスイッチになった。

雄英を受験するって言い出したのも、それがきっかけだった。



動機がどうだろうと関係ねぇ。

あいつがどんな理由でここに来ようと、俺と同じ場所に居てくれる。それだけで充分だった。

他のやつに聞かれたら「不純な動機」とか言われそうだが、花の個性はヒーロー向きだ。
誰が見ても、「プロヒーロー目指してます!」しか志望理由に見えねぇよ。



結局、俺と花、それとデクの三人が、同じ中学から雄英に進学が決まった。




受験が終わったある日──

「お疲れ会」と「合格祝い」を兼ねて、花とうちでプチパーティをした。

特別なことは何もしてねぇ。

部屋で菓子つまみながらジュース飲んで、「JKになったら何したいか」とか、くだらねぇ話を聞いて笑って。


……最後は勿論、久しぶりのセックスをした。


数ヶ月見ないうちに花の髪は伸び、胸は少し大きくなっていて、以前よりエロさが増していた。

この日は初めて2回戦目までした事を今でも覚えている。



そして先日。

入学してなんやかんやまた忙しくて、かなり時間が空いたが花とセックスした。

ありえねぇ気持ち良かったし、また花の胸がデカくなってた。

どこまで成長するのか正直気になるところではある。





「...ぃ。...おい、爆豪。」

「……っつ、あ?」

昔のこと思い出してたら、目の前にいたのは記憶の中の花じゃなくて、赤と白の半分野郎だった。



「爆豪。俺は天乃の夢が理解出来ないとは言ったが、あいつの夢なら、それはそれで応援するし、俺は待つつもりでいる。」



まただ。


その何考えてんのか分かんねぇ面。

だけど今はやけに真っすぐで、揺れてなかった。



こっちはこっちで、ぐらぐらしてんのに。



グッと奥歯を噛み締めて、手にしてたペットボトルをテーブルに叩きつける。

水がまたちょっと跳ねた。



「……あいつの夢なんざ、正直どうでもいいんだよ。」



その先の言葉は、少しだけ喉で転がしてから、絞り出す。



「花だけは誰にも譲らねぇ。絶対にな。」



視線も言葉も、全部ぶつけてやった。

そして俺はソファから立ち上がり、エレベーターの方へ向かう。





「...水、拭いていけよな。」







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