「それでは一週間の花さんのお世話係を決めましょう。立候補する方は紙にお名前を書いて、このボックスに入れてください。」
「いやいや、ちょっと、轟くん!君はダメ!!」
「?」
いや、何でだみたいな顔しないでよ。
普通に考えればわかるでしょう。
幼女とは言え花ちゃん女の子だし。
そう言えば、少し考えた後に僕ではなく女子達へ顔を向けた。
「...なぁ、俺が花の事好きなの知ってるよな。こんな機会二度とねぇんだ、小さい時の花を堪能させてくれねぇか。」
うわぁ、何それずるい。
ていうか皆なんか納得してるし…。
轟くん絶対こういうの面倒って思いそうなのに、花ちゃんが絡むと人が変わるな。
というかもうすっかりちゃっかり名前で呼んでるし。
「仕方ないなぁ轟。今回だけは特別だからね!」
「流石に幼女には手出すなよ。手を出すなら戻ったらにして!」
「花さんに何かあっても、轟さんなら全力で何とかしてくれそうですものね。」
「まぁ、ある意味安心..?」
女子達から謎の信頼を得ている轟くんは当たり前のようにくじのメンバーに入れてもらえたようだ。
途中なんか変な声援があったけど、あえて聞かなかった事にしよう。
僕は幼馴染で慣れているという事でメンバーに入れられたけど、女子6人と僕、轟くんだと8人だ。
個性にかかる期間は一週間だけど、多少前後するとして6人メインで選んで、予備日で1人と言ったところか。
そうなると、1人だけあの可愛い花ちゃんのお世話が出来ないのか、流石に可哀想すぎるな。
え。僕になったりしないよね?
大丈夫だよね?
「それでは行きますわ!まず今日の夜から明日一日担当する方は....(がさがさ)。はい、わ。ま、まぁ!」
「え、誰誰?」
「げ、マジで?なんて運のいいやつ...。」
「愛ね。愛。」
はい、轟くんでした。
隣で小さくガッツポーズするのやめて。
僕、選ばれなかった時ショックで君の事どうにかしちゃいそうだよ。
「取り敢えずドンドン行きましょうか。次は...緑谷さんですわ!」
「え!?良かったあぁぁぁ〜!!」
「2日連続男子って大丈夫?花が後から知ったら嫌がりそう...。」
「まぁ、デクくんは幼馴染だし、轟くんは...どうやろ、何とも言えなくなってきた。」
急に男子がに連続で続いた事で女子達がザワザワと不満の声が漏れ出した。まぁ普通に考えれば、女子6人と僕と轟くんで予備日担当が一番丸いんだよ。
普通に考えればね?分かってるんだよそんな事は。
でも、轟くんも言ってたけど、こんなチャンス2度とないと思う。小さい花ちゃんをお世話できるなんて!!
「と、取り敢えず引いていこう!夕飯も済ませなきゃだしさ!」
「そうですわね、取り敢えず引いていきますわ。」
無理やり押し切って、八百万さんがどんどんくじを引いていく。
結果、こうなった。
今日〜明日:轟くん
2日目:僕
3日目:八百万さん
4日目: 麗日さん
5日目:耳郎さん
6日目:芦戸さん
予備日は梅雨ちゃんと葉隠さんが仲良く担当することになった。
「そうと決まれば、今から花は俺が世話すればいいんだな。」
「でもお世話って具体的に何するん?お風呂とか、ご飯とか?」
「あとは寝かしつけじゃないかしら。確か20時には寝かせてって言ってたわよね。」
皆で時計を見れば18時だった。ご飯もお風呂も早く済ませないと言われた時間に間に合わない気がした。
「と、とりあえずご飯ですわ!」
「さっき相澤先生がちびっ子達のご飯って置いて行ったから、それでいいのかな?」
「あぁ、あれか。...花、ご飯食べよう。」
ソファの方でかっちゃんと遊んでいた花ちゃんに声を掛ければ、2人揃ってコチラへ振り向いた。
轟くんの顔を見るなり、かっちゃんはギロっと睨みつけていたが全然怖くなく、思わず笑いそうになる。
「…花、いくぞ。」
「うん!お腹すいたぁ〜!」
花ちゃんをエスコートするように手を差し出したかっちゃん。
それを当たり前の様に取って繋がれた手に、やっぱり可愛いなぁと思う。
轟くんがココで座って待っててくれ。と言った場所へ、テコテコと小さな歩幅で歩いていく2人。
机と椅子が高いだろうと、八百万さんが子供用の椅子を作ってくれた。
「ごはん、なんだろうね!パパのカレーだといいなぁ!」
「俺もカレーがいい。」
「みつきママのカレー、からくて花は食べれない!」
「ふん。おこさまだな」
「むっ…にがてなだけだもん!た、たべれるもん!」
「いっとけ」
2人で盛り上がっている中悪いけど、今日の夕飯はカレーではなかったなぁ。
「デクくん、私たちもご飯食べよ」
「あ、うん。そうだね!」
子供達にご飯を食べてもらっている間、いつもより少し早いけど僕たちもご飯を済ませる事になった。
なるべく僕は花ちゃん達の側で食べたかったけど、我先に切島くん達がその横を陣取っていたので渋々一個離れた席で食べる事にした。
「ほら、ご飯だぞ。」
「わ、わぁ〜!オムライス!!オールマイトの旗刺さってる!!」
「うわ、チビ花マジで可愛いな…。さっきあんまり見れなかったけど、近くで見ると破壊力半端ねぇ。」
「おいおい上鳴、鼻の下伸びすぎだぞ。あと切島もガン見しすぎな。」
「いや、これは不可抗力だろ。瀬呂は逆になんで平常なんだよ。」
オムライスの旗で喜ぶ花ちゃんを見て、派閥メンバーは完全に落ちたな。
くっ、またチビ花ちゃんファンが増えた。
「じゃぁ、いただきますしような。」
「うん!かっちゃん、一緒にやろ!せーの、だよ?いくよ、せーの!」
「 「 おててを合わせましょ〜、残さずキレイに食べましょぉ〜、今日もいただきます! 」 」
う、うわあぁぁぁ。
なっつかしぃ…。
あれ幼稚園の時にご飯食べる前に必ずやってたやつだ!
花ちゃんもかっちゃんも、家の時もやってたんだなぁ。
僕もお母さんとやってたなぁ。と、思い出に耽っていれば周りが静かな事に気づく。
いつもガヤガヤ騒がしい夕食時間が、今日は皆してチビっこに夢中なので静かだった。
あちこちから視線を感じながら、2人は食べ辛くないかな…大丈夫かな。
「かっちゃん、花にそのエビフライちょーだい!」
「あ?じゃぁその旗寄越せや!」
「えー!オールマイトの旗だよ、だめ!」
「じゃぁエビフライはやらねぇ!」
「むー!なやみましゅ!」
…問題ないみたいだね。
ちびっ子達の騒がしい(?)夕食が終わり、やっとお風呂の時間となった。
花ちゃんの方はどうだったか分からないけど、お風呂ではかっちゃんがちょっと暴れて男子風呂は大変だった。
けど、なんやかんやで取り敢えず予定していた20時就寝には間に合いそうで良かった。
..
「あ、緑谷さんに轟さん、ちょっとこちらに!」
お風呂を出て、談話室の方へ行けば八百万さんに呼ばれた。
言われた通り、女子達が集まっている場所へ向かえば麗日さんの膝枕で寝ている花ちゃんがいた。
「ドライヤーしとる時から、もう船漕いでたんよ。」
「花ちゃん、眠気が限界だったのね。」
すやすやと寝ている花ちゃん。
どこか大きくなった花ちゃんの寝顔と重なって、この時から顔がほぼ完成されていたのかなと思う。
「それで、轟さん。先ほど相澤先生がいらして、子供達のお布団を持ってきたので、お部屋へ持って行って頂けますか?」
「あぁ、じゃぁ先に布団敷いてくる。」
ソファの上の布団セットを持って轟くんは足早にエレベータへ向かっていった。
「轟さ、流石にチビ花には手出さないよね?」
耳郎さんの心配そうな顔に、女子達は顔を見合わせ笑った。
「それはそれで、私はいいと思うけどねぇ」
「それは三奈ちゃんの願望じゃん〜、私は花と爆豪のカプ推しなんだけどなぁ!」
「あんたたち、そういうのを決めるのは花なんだからね。」
「分かってるってー!耳郎は考えすぎだって!」
女子達の言っている事はよくわかる。
僕は前も思ったけど、花ちゃんが幸せならどちらを選んでもいいと思ってる。
あの2人だったら花ちゃんを死ぬほど大事にしてくれるだろうしね。
「にしても、花と爆豪って今まで付き合ってたとかないの?」
「え?」
「確かに、第三者が見ても爆豪の気持ちバレバレなのにさ、花ってもしかして鈍感とか?」
「うーん。…花ちゃんは、まっすぐ言葉にしないと気付かないところがあるんだよね。だから多分、かっちゃんの気持ちとか気付いてないと思うんだよね。」
「違うよ。」
小さな声に、皆が一斉に振り返る。
そこにはいつの間にか起き上がって、僕をまっすぐ見る花ちゃんがいた。
きらりと光る黄金の大きな瞳は、まるで全てを見透かしている様だった。
その瞳がすっと細まり、小さな口がゆっくり開く。
「勝己の気持ち、とっくに知ってるよ。」
幼児とは思えないほど艶やかな笑みを浮かべる花ちゃんに、その場の皆が固まった。
そしてパタリと目を閉じ、再び麗日さんの膝に頭を乗せ寝てしまった。
「え…?」
「今、一瞬戻った…?」
各々が困惑を口にする中、僕は咄嗟に出そうになった言葉を飲み込んだ。
――じゃぁ、どうして花ちゃんはかっちゃんの気持ちに応えないんだ。
「寝る準備できたぞ。ん?…どうしたんだ、皆固まって。」