爆豪と花が子供になった次の日(朝)
「すっごーい!道がひっろーい!!」
「けっ...んな事ではしゃぐんじゃねぇよ。ガキか。」
目の前で手を繋いで歩くおチビが2人。
その後ろを歩く瀬呂と上鳴と俺。
そして今日天乃の世話役を担っているという轟。
上鳴に至ってはチビ天乃に相変わらず鼻の下を伸ばしているし、轟も天乃の事をジッと見つめている。
瀬呂は、それを面白そうに後ろから見守っていた。
なんとも珍しいメンバーでの登校時間だ。
「にしても轟、よくチビ2人の支度出来たな。」
「...いや、俺は特に。爆豪が自分で起きて支度して、寝てる花を起こして色々手伝ってた。」
俺はそれを見てただけだ。と言う轟に驚いて、チビ爆豪を見る。
ムッとした顔で歩いているが、その視線は隣を歩く女の子に向けられていた。
離れない様にしっかり握られている手は、もはや手綱に見える。
そういえば朝様子を見に行った時も、チビ爆豪が眠そうにしている天乃の手を引っ張ってたっけか。
流石に朝飯の時は手繋いでなかったけど、基本あぁやって直ぐ手が繋がれているから、轟の入り込む隙がないんだろうな。
チラリと隣を見れば、案の定少し不満そうな顔をしている男がいた。
ほんと、大変だなぁ天乃は。
爆豪に好かれてるってだけでも大変そうなのに、轟からもってなると日常生活でゆっくり出来なさそうだな。
「なぁなぁ天乃!電気おにーさんとも手繋ご?な?」
我慢できなくなったのか、上鳴が天乃の隣へ移動した。
意外にも爆豪はその様子に威嚇する事なく、ジッと黙っていた。
「え?んー、でも花ね、もうかっちゃんと繋いでるの!」
「それはそうだけど、反対の手空いてんじゃん?どう?」
「うーうん!だめ!おててつなぐのは、かっちゃんだけなの!」
「あ....はい。」
華麗に振られた上鳴。
それをザマァという様にぺろっと舌を出して勝ち誇った顔で見ている爆豪。
俺が思わず苦笑いでそのやりとりを見ていれば、隣の男は安心したような顔をしていた。
「俺もさっき、花に同じこと言われたんだよな。」
「...おまえら、朝からチビ達に振り回されてんなぁ。」
瀬呂が乾いた笑いを溢した。
ほんとにな。と、俺もやっぱり苦笑いをした。
..
「ねーねー!アカガミのおにーさん!」
下駄箱で轟とチビ2人と別れた後、俺だけトイレに寄ってから教室へ向かっていた。
その途中、グイッとズボンの裾を後ろに引かれ目線を下へ向ける。
ラベンダーと黄金。
普段教室や寮で見慣れている色が、昨日から下にあって相変わらず違和感を覚える。
「あれ、天乃どうしたんだ?轟と爆豪と保健室行ったんじゃねぇのか?」
「うん、あのね!2人がどっかいっちゃったの!」
むぅっと口を尖らせる姿に、なるほど迷子か。と一瞬で理解する。
天乃がいなくなって、今頃あの2人学校中駆け回ってんじゃねぇか?
「何のために爆豪と手繋いでたんだよ。」
「ほんとだよね!もう!こまっちゃうわぁ!!」
いやいや、お前だよ。
なんてことは言わず、わしゃわしゃと柔らかい髪を撫で回す。
「取り敢えず保健室行けばいいか?ほら、着いてこいよ!」
そう一歩踏み出せば、再びズボンの裾が引かれた。
どした?と振り返れば、恥ずかしそうにモジモジしている天乃。
「おてて、つないでほしい....だめ?」
ズキューンッッ
「うっ...これが、噂の......」
「だめ?」
「いや、ダメじゃねぇけど.....」
なんであいつらは普通に手を繋げるんだ。
いくらチビとは言え天乃だぞ。
流石にちょっと照れくせぇっていうか...
「だめ?(キラキラビーム)」
「くぅ...うし!恥ずかしがるな!!漢を見せろ!!ほら、こい!!」
意を決してバッと左手を差し出せば、パァッと笑顔で短い手伸ばしてきた。
キュッと掴まれた手は、すっげぇあったかくて、思った以上に小さかった。
しかもちょっと怖え。
少し力を入れただけで握り潰しちまいそうだ。
「アカガミのおにーさん、おなまえは?」
「ん?あぁ、そういえばそうだったな。俺は切島。切島鋭児郎!天乃はいつも俺のこと切島って呼んでるぜ。」
「きりしまえーじろー..?きりしまえーじろーは、私のおともだち?花って呼んでくれないの?」
「あー...。」
そういや、昨日女子達に囲まれてる時にそんな話してたっけ?
チビ爆豪に構っててちゃんと聞いてなかったけど、天乃は小さい時、友達には名前で呼んで貰ってたんだな。
まぁ、この歳だと苗字で呼び合ってる子供なんかいなかったか。
だからと言って、俺は天乃を名前で呼ぶ事はしない。
別に嫌とかそういうのじゃねぇけど、呼び方で関係が変わる様なもんじゃねぇし。
まぁ...正直名前で呼んだ時に怖い奴らが2名ほどいるからな…。
「そうだなぁ。天乃と俺は特別な友達なんだ。だから俺は天乃って呼ぶし、お前も俺を切島って呼んでるぞ。」
友達と言えば友達だけど、俺的には仲間の方がしっくりくるしな。
首を傾げて少し考えている様子の天乃。
ちょっと無理やりすぎたか?
「とくべつ……とくべつって言うのは、スーパースペシャルレアって事だよね!!わかった!きりしま!かっちゃんと、とろろきくんをさがしに行こ!」
「おぉ。はは!スーパースペシャルレアはよくわからねぇけど、お前小さい時から柔軟性高いのな!よし、いくぞー!」
なんだか普段の天乃からは全く想像のつかない返答すぎて、子供って面白えなと思ってしまう。
そして俺の声を合図に、止まっていた足をずんずんと前へ進める天乃。
ただ、俺はここである事に気付いてしまった――。
前でふわふわと揺れるラベンダー色。
その歩幅があまりにも小さいせいで、中々前に進んでいない……。
俺、これ授業間に合うか?
一方その頃――
「おい、なんでちゃんと手繋いでないんだよ。」
「うるせぇ!花が勝手に振り解いてどっか行っちまったんだよ!!」
「はぁ。俺が探してくるから、爆豪は保健室にいろ。学校の中、わかんねぇだろ。」
「あ?あー......俺も行く。お前に着いていけばいいんだろ。あと俺に指図すんな。」
「あ、おい爆豪!……...はぁ。仕方ねぇな。」