「か……きっ……勝己ってば!」
「あ?」
「……何、怒ってんの?」
ぐいっと引っ張られる手に、思わず顔をしかめる。
俺はムスッと眉間に皺を寄せながら、繋いだ花の手をギュッと握り直した。
「いっ……! バカ、力加減しろ!」
「……うるせぇな。」
チラッと後ろを振り返れば、花は周りの視線を気にして、頬をほんのり染めていた。
その顔に一瞬だけ足が止まりかける。
けど、舌打ちして気持ちをかき消す。
ホームルームが終わった瞬間、俺はすぐに花を連れて教室を出た。
半分野郎(轟)が話しかける隙なんて、一ミリも与えたくなかった。
靴を履くときに一度手を離したけど、花の腕を掴んで寮に向かおうとしたら、
「もう腕、痛い」なんて言ってきやがった。
──普段なら、それ以上は何もしねぇ。
でも今は、離したくなかった。
だから、俺が選んだのは。
腕を掴むんじゃなくて手を、繋ぐことだった。
……我ながら、クソ気持ち悪ィって思う。
でも、それでも離せなかった。
花の手をちゃんと握ったのは...
多分、雄英に入る前。
半年くらい前だったか。
その時の記憶を引っぱり出すように思い返してたら、体がじんわり熱を持ちはじめた。
「ねぇ、勝己。」
「っ……なんだよ。」
声のトーンが変わったのに気づいて、俺はようやく立ち止まる。
くるりと振り返れば、花がちょっと戸惑いながらも、しっかりと俺を見上げていた。
「……後で、私の部屋、来ない?」
一拍、心臓が止まった気がした。
ゆっくりと上がる視線。
熱を帯びた瞳。
ほんのり赤い頬。
少し開いた唇。
──誘惑なんて、そんなつもりじゃねぇのかもしれねぇけど。
俺には、あまりにも……贅沢すぎた。
「……行く。」
それ以上の言葉は、喉の奥で飲み込んだ。
ただ、繋いだ手からじわっと汗がにじんでくる。
……けど、それすらも、今は悪くなかった。