再び歩き出した俺たち。
フラれたはずなのに、あまりにも自然な会話の流れだったせいで、実感が湧かない。
天乃は俺の隣で、まるで何もなかったかのように言う。
「ありがたいことにさ、定期的に“好きです”って人が現れるんだよね。流石に轟くんみたいな公開告白は初めてで、恥ずかしくて死ぬかと思ったけど!」
……今、俺をフッたばかりの人間の発言とは思えない。
でも変な沈黙になるよりはマシか……と錯覚してしまう自分が、ちょっと情けなかった。
「私、不器用だからさ。恋愛と夢を追うの、同時にできないんだよね。……まあ、試したことないけど。きっと無理!」
そう言って笑う顔は、悲しくもやっぱり綺麗だった。
なんで恋人を作らないのか。
なんで俺をフッたのか。
ちゃんと理由を教えてくれてることは、ありがたいと思った。
だってその理由なら、まだチャンスがあるってことだろう。
天乃の夢っていうのは、まあ──
普通に考えれば、プロヒーローになることだろう。
「……つまり。卒業までは、恋愛しないってことか?」
「ん〜……まあ、在学中でも、頑張ればできるかもしれないけど……難しいんじゃないかな〜?」
──たしかに、在学中にもらえるのは仮免許だけだ。
プロヒーローとして認められるには、実績も評価も足りない。
天乃の言うことは正論だ。
本気でプロ目指してるなら、恋愛に気を取られてる場合じゃない。
「……なら。卒業したら、改めて告白してもいいか?」
俺がそう言うと、天乃がぴたりと足を止めた。
少し後ろから、その顔をこちらに向けてくる。
ヒュッと風が吹いて、天乃の髪が舞った。
「俺、お互いがプロヒーローになるまで、天乃しか見ねえから。」
それを押さえる手が一瞬止まり、風がやむと同時に、彼女は真っ直ぐ俺を見据えて言った。
「……プロヒーローになっても、私の夢は叶わないかもしれない。ていうか、一生叶わないかもだから……轟くんの時間、勿体ないよ?」
申し訳なさそうに眉を下げた顔に、なぜ?と疑問符しか浮かばず、思わず問い返す。
「……なあ。天乃の夢って、なんだ?」
天乃は一瞬だけきょとんとして────
「え? そりゃあ、ホークスに抱かれることだけど?」
……数秒、風すら止まった。
「………………は?」
俺は静かに、天を仰いだ。