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「ん、っン、んぁ、ふ、」
ちゅ、ちゅ、と戯れのようなキス。時折お互いの舌を絡め合わせ、合わせた唇の隙間からはどちらかのものか分からない甘い吐息が漏れ出る。その合間に暑い、と熱に浮かされるように呟いて、先輩は着ていたジャージをぱさりと脱ぎ捨ててしまった。
フロイド先輩と同じように俺に跨ったジェイド先輩は、俺の頬を大きな手で包み込んで口付けを繰り返す。それは優しく丁寧で、唇を合わせる行為を味わい尽くすかのようにねっとりしている。俺の首に腕を回し、身体をぎゅうと密着させてキスをねだるところはフロイド先輩と似てるな、と思う。
「(それにしても、)」
ジェイド先輩の上半身は以前彼の人魚姿を目にしていたので見たことがあったけれど、こうして改めて、しかも間近で見ると均整の取れた体をしていると思う。ていうかフロイド先輩もそうだったけど、肌がすべすべだ。しっとりとしていて、まるで絹みたいというか。これも人魚たる故なのだろうか。人魚ってすげー。
「ふ、っあ、ナマエさんの口の中、本当に熱い…」
「ジェイド先輩だって、」
まるで独り言のように呟かれるジェイド先輩の言葉。熱いです、先輩の言葉にそう返す自分の声も、彼と同じように熱に浮かされているのが嫌でも分かる。唇を合わせながら脇腹から胸へとなぞるように手を動かせば、先輩から僅かに上擦った声がこぼれた。
ジェイド先輩は、キス以上に身体を触れ合わせたり、触れられるのが好きなようだった。現に俺の手を取って触ってください、なんて言うくらいだし。さっきはちょっと似てるなあなんて感じたけれど、やっぱり違うところの方が多い。好きなところや感じ方だって全然違う。快感に堪えるように悩ましげに柳眉を寄せて、伏せられた長い睫毛はふるりと震えて。普段の涼しい表情からは想像もつかない、火照って蕩けた表情はフロイド先輩とはまた違う色っぽさで、同性でも思わず魅入ってしまいそうだ。
「は、……ぁ、ぅ」
「ん、……」
首に回っていた腕はいつの間にか背中に移動していて、少し汗ばんだ俺の肌を先輩のしなやかな指がなぞる。それと同時にさっきから無意識なのか、反応した自身を太腿に擦り付けられている。少しでも刺激が欲しいのだろう、布越しにもその熱が伝わってくる。ていうか腰の動きがエロい。心持ちに若干余裕ができたからか、先輩の仕草がいちいちきちんと処理されて脳内に入ってくる。うう、フロイド先輩といいジェイド先輩といい、やっぱりこの兄弟目に毒だ。
「せんぱい、脱がないと、汚れちゃます」
「ぁ…そう、ですね」
頭の中の邪念を振り払ってジェイド先輩の腰に手を添える。今は先輩を気持ちよくすることだけを考えるんだ。下着が濡れる感触は嫌だろう、そう思っての俺の言葉に先輩は素直に頷いた。ゆっくりとした動作で腰を上げ、ジャージのズボンに手を掛ける。するすると下ろしていけば、先輩の細く白い太腿が姿を現した。わぁ、間近でストリップを見ている気分だ…。目から入ってくる思わぬ刺激にくらくらする。ボクサーパンツの中心は盛り上がっていて、下着の上からもその大きさが分かる。予想はしていたけれどフロイド先輩と同じでやっぱり巨根か…。
「うわー……」
そして思わず声が出た。焦ったい動作で下着を下ろし、現れたジェイド先輩のアレはなんというか、長い。フロイド先輩のも長くて太かったが、ジェイド先輩のはそれ以上に長い気がする。新品未使用ですみたいな色をしてるがマジで凶器だ。最早このちんこ女の子のアソコに入るのか?とこの人たちの未来の彼女をちょっと心配するレベルである。あ、でも人魚の彼女なら関係ないのかな。(人)魚の交尾の仕方とか知らないし。どうなんだろうか。
「…なんです?」
「いえ、なんでも……」
余計なことを考えていたらどうやらガン見していたらしい、ジェイド先輩が若干居心地悪そうに身じろぐ。それにすみません、と一言謝罪を入れつつ目を逸らした。
俺の真っ黒な下生えと、先輩のやわらかい水色の髪色よりも濃く深い色のそれ。下の毛の色もまじで髪の毛と同じなんだなとアホみたいなことを思う。そういえばフロイド先輩もそうだったなあ。兄弟なんだから当たり前か。
フロイド先輩の時も痛感したが、こうして並べてみるとやっぱり俺のちんこってほんとに…とますます悲しくなる。いや、俺のサイズは至って標準で、この二人のサイズが規格外なだけだし。それに大きさでは負けていてもテクニックで勝つのだ。童貞だけど。
心の中で自分を励ましつつ、シーツの上に転がったままのローションに手を伸ばす。手のひらに出し、人肌の温度にまで温めながら顔を上げた。
「触っても?」
「…はい、」
先輩が頷いたのを見届けて、そっと勃ち上がったそれに触れる。触れた瞬間、ぴくりと小さく肩が動くのが分かった。
「は、…っぅ、う、ん、っン」
俺のとは一緒に扱かずに、最初はジェイド先輩のものだけを扱く。指で輪っかを作って、上下に動かして。ローションのにちゃにちゃ、ぐちゅぐちゅとした卑猥な音にも大分耐性がついてきた。少なくとも音には動じなくなった気がする。先輩はといえば顔を赤くしながらも気になるのか、音を立てて扱かれる自身から視線を外そうとはしない。
「先輩はどこ触られるのが好きですか?先っちょ?それとも裏筋?」
「あ、ぅっ」
フロイド先輩は俺と同じで先っちょが弱かったけれど、と亀頭やカリの部分をなぞっていく。ここは一般的に男なら誰でも気持ちいい場所…だと思うのだが、口を引き結んで堪える先輩を見るに、彼も例外ではないようだ。では、他の部分はどうだろうか。そういえば「俺は亀頭じゃなくて裏筋派だから」と豪語する友人がいたなあと思い出して、裏筋をつつ、となぞってみる。
「っひ、!」
すると先輩から一際高い声が出ると共にびくりと大きく身体が震えた。ははあ、つまりここか。ちょっとした宝物を探し当てた気分だ。
「ジェイド先輩は裏筋派なんですね」
「あ、っ!ナマエさ、なにをっ、んン…ッ!」
「俺とフロイド先輩は亀頭派なんですよ、ほんと、気持ちいいところは人それぞれなんですねえ」
「ぁ、ひ…っそこは、ぁあ……っ!」
見つけた先輩の好きなところを重点的に触れると、下腹部と共に手のひらで包んだ性器もびくびくと震える。ううん、やっぱり他人のちんこって反応してるところを見ると本当に生き物みたいである。
「すごい、すっかりガチガチだ、」
「っぁ、ぅんン……っ!っひ、ンぅ、…〜〜ッ!」
この大きさマジで凶器。思わずすごいと感想が口に出てしまったほどだ。完勃ちと言ってもいいだろう、手の中の熱はむくむくと大きくなって、すっかりと芯が通って反り返っている。
「ひ、っあぅ、や、っナマエさ、ぁ……っ!」
そのまま続けているとジェイド先輩の腰が逃げはじめ、これ以上はと止めるように自身に触れる手首をやわく掴まれた。この反応、フロイド先輩と同じだ。どうやらジェイド先輩にとっても、予想していた以上に性器を触られるのは気持ちが良かったらしい。
「ジェイド先輩」
「ぁ、……」
上気した頬に、潤んだ瞳が俺を見つめる。眉は下がって、その表情にいつもの先輩の姿は見当たらない。
ううん、どうしようか。「一緒に気持ちいいことをしましょう」とジェイド先輩の言葉に同意した手前これは合意な訳だが、こんな風に怖がっているのに──あのジェイド先輩が、と考えるとそんなわけないだろうとも思うのだが、少なくとも俺にはそう見えた──半ば無理やり続けるのでは、こちらとしても何となく気分が悪い。どうせなら楽しんで欲しい、途中から吹っ切れたフロイド先輩のように。
「大丈夫です、ごめんなさい、急すぎましたよね」
扱く手を離して、そのままジェイド先輩の手を握る。見つめ返してそっと唇を寄せれば小さな声が漏れて、先輩の瞳がゆっくりと閉じられた。空いている方の手で先輩の身体を抱き寄せて、薄い背中をそっと撫でる。
「また今度にしましょうか、急ぐ必要はないんだし」
「……」
先輩の意思を確認して、本当に駄目そうなら次にやればいい。どうせこれからこういう機会がたくさんあるだろう。気遣いのつもりで言った言葉に先輩は俺の肩に顎を乗せたまま、耳元でぼそりと一言呟いた。
「……フロイドの時のように、無理矢理しないのですか?」
「……え」
「先程話していたでしょう。フロイドのことを苛めて無理矢理したのでは?」
「ゔっ」
まさかフロイド先輩のことを口に出されるとは思わなかった。淡々とした口調からか、ジェイド先輩から聞くと何故かより胸に刺さる。身体を離してジェイド先輩を伺えば、彼はなんとも言えない感情の読めない表情をしていた。真顔のようで、口角は少し上がっていて、でも少しムッとしているような、むくれているような…。もしかしてフロイド先輩にしたことに怒ってる?まあ、フロイド先輩本人がそう言っていたのだから少なくともそう感じたってことだろう。俺もやりすぎたという自覚はある。
「あの時はその、切羽詰まってまして…殺すか殺されるかと思っていたので……すみませんでした……」
言い訳をするならまさにそんな感じなのだが、ジェイド先輩は俺の言葉に目をぱちくりとさせた後、面白いことを言いますね、と可笑しそうに笑った。あれ、怒っている訳ではないようだ。
「僕に謝られても困ってしまいます。謝るのならフロイドに、と言うところですが、気にしていないと思いますよ。寧ろ喜んでいるようでしたし」
「はあ…」
無理矢理されて喜ぶとは。普段ドSみたいなのに、もしかしたらちょっとMっ気があるのだろうか。それはそれで意外だなんて考えていると、するり、まるで尾びれを絡ませるように腕を首に回される。
「それで、僕には無理矢理してくれないんですか?」
「え、無理矢理してほしいんですか?」
「さあ。ナマエさんはどう思いますか?」
「どう思うって……」
そんなこと言われても。フロイド先輩と同じことをして欲しいのだろうか?ジェイド先輩を見返しても、先輩はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべただけで教えてはくれない。分からない、この人の考えていることがさっぱりだ。
どう思う、ジェイド先輩の言葉を頭の中で反芻する。俺はどう思う?俺は、俺自身は、一体どうしたいのだろう。
「………あの」
「はい」
「……先輩、“一緒に気持ち良くなりましょう”って言ったでしょう」
「ええ、言いましたが…」
それが?と首を傾げる先輩に、頭の中が定まらないまま思うことを口に出してみる。
「俺は、先輩たちの提案に乗りました。だからその、するからには先輩にも気持ち良くなってほしくて。先輩、さっきちょっと腰が引けてたでしょう。そのまましたら気持ちよくないと思いますし、俺もその、無理矢理なんて趣味じゃないし、やるなら楽しみたい、というか。一緒に気持ちよくなりたい、というか…」
伝えたいことがあるはずなのに、それが纏まらない。どうしてこういう時に上手く言葉が出てこないのだろうか。不甲斐ない。恥ずかしくなってすみませんと続け、目線を斜め下へと下ろす。先輩はこんな時に限って何も言わない。言ってくれない。うう、沈黙が気まずい。早く何か言ってくれ。何も言われない時間の分だけダメージがデカくなる。
「……ナマエさん」
どれくらいその時間が長く続いただろうか。肩を強張らせていた俺のことをようやくジェイド先輩が呼んだ。静かな声だった。俺の手を、先輩の細く長い指がす、と撫でる。
「続けてくれますか?」
「え」
「僕は平気ですから」
先輩が何を考えているか分からないから、何を言われるのか分からなくて怖かった。漠然とネガティブなことを考えていたからか、先輩の言葉は思いも寄らないもので。顔を上げれば、彼は薄く微笑んでいる。
「……はい」
続けてほしい。ジェイド先輩のいつもとはどこか違う柔らかい微笑みに戸惑いつつも、わかりましたと頷けば、ありがとうございます、と彼は俺に口づけをくれる。お礼を言われるようなこと、したつもりないんだけどな…。
「じゃあ、また触りますね」
「はい」
気を取り直し、ローションを足して先輩の勃ち上がったそこにもう一度手を這わす。今度は俺のも一緒に。一緒に包み込むと、先輩が僅かに息を呑んだのが分かった。
「っん、ふ、ぅ、んん…っ」
一緒に扱いたり、左右に擦り合わせたり。最初はゆっくり、慣れてきたかなというところで扱くペースを上げていけば、粘ついた音と共に結んだ唇から声が漏れ始める。耳まで真っ赤にして、時折堪えるようにきゅ、と瞼を閉じて。ああ、そんなに我慢しなくてもいいのに。
「はっ、…先輩。きもちいいですか?」
「ぁ、っは、いぃっ、きもちいいです、ン、っんぅ、っん、!」
「よかったです、」
そう聞けば、先輩からゆるゆるになった言葉が返ってくる。先輩の口からそれを聞けてよかった。そう、やるならこうでなきゃ。思わず笑みを浮かべて先輩を見れば、何故か眉を小さく寄せられて、甘えるように顔を寄せられる。キスをねだるようなその仕草に可愛らしさを感じれてしまった俺は、もうだいぶ感化されているのだろう。
「ん、ぁ…、っん、ん」
「ふ、ぅ……」
まるで離さないというかのように。首に腕を回されて、それに俺も応えるように先輩の背中に片手を回す。ちゅ、と可愛らしい音を立てるキスと深いキスを織り交ぜていけば、脳髄がぼんやりと甘く痺れていく。
「ん、っ!あ、ふぁ、ぁ……っ!」
触られるのが好きならそれが唇でも変わらないだろうかと、扱く手の動きは極力止めないように、薄いピンク色の唇の元を去って、首筋へと唇を這わせてみる。すると感じ入ったような声が上から聞こえてきた。どうやら好きみたいだ。ならばと首に回していた手で先輩の短い頸をさり、と撫でながらそれを続けると、先輩の腰がひくひくと揺れる。
「ナマエさ、ぁ、んっぅ、くち、あつい…っ」
「あ…やめた方がいいですか?」
少し上擦った声から繰り出された言葉に思わず唇を離した。今は人間の姿とはいえ、熱すぎて火傷とかしたりするのか?もとは人魚だし、と少し心配になって先輩を見上げれば、恍惚とした表情を浮かべる先輩と視線が交わる。
「やめないで、」
小さく動いた唇に、どくりと心臓が波打った。ぶわり、顔から始まって頭の先から爪先まで、瞬時に熱の波が押し寄せる。
ああ、熱の篭った瞳で見つめられた挙句そんなことを言われては、こんなの誰だって嫌だなんて言えない。ましてや恋愛経験値ほぼゼロ童貞の俺が断れるわけがないじゃないか。
「先輩、そのまま背中を倒して、仰向けになってもらえますか?」
ぐ、と口いっぱいに溜まった唾を飲み込んでそう頼めば、先輩ははい、と小さく頷いてシーツの海に身を任す。それを追いかけるように俺も先輩に覆い被さった。先輩の顔に影が差して、蕩けたオッドアイに見つめられる。ちゅう、と唇を首筋に押し付け、それから下へ下へと辿っていって。鎖骨をなぞり胸元までいくと、はぁ、と先輩の甘い息が吐き出された。
「んぁ、ぁっあぅ、あ、っきもち、ぃ……」
うっとりとする声と、俺の頭に触れる先輩の手がまるでもっとと言っているみたいで、空いている片方の手を先輩の胸元へと伸ばす。俺よりもずっと白い、じんわりと汗ばんで、けれどきれいな肌に指を滑らせた。男でも胸は感じるのかと思ったけれど、淡いピンク色の乳首に指先を引っかけてみれば、僅かに身体が反応する。
「は、ぁ、っんあ、ン、んぅ、……っ!」
口を押し付けたり平らな胸に優しく触れると、先輩の腰が魚のようにぴくりと跳ねた。下を窺い見れば先輩の息子から我慢汁がじわりと滲んでいる。触っている時も俺の手の中でびくびくしていたし、彼自身も気持ちいいって言ってるし、本当に良いと見える。流石に気が引けて舐めはしなかったけれど、次回以降試す価値はあるかもしれない。
「ぁ、っだめです、も、いきそ、……っ」
「ん、分かりました」
上から降ってきた言葉に思考が引き戻される。どうやら限界が近いらしい。熱の篭った声に応じて胸を触るのはこれくらいにして今度はジェイド先輩の自身だけを扱き始めれば、先輩は快感から逃れるように身を捩らせた。
「っひぅ!、んぅっ、ン、ぁ、ナマエさ、っ」
「はい、」
縋るように俺を呼ぶジェイド先輩に返事をして、唇に唇をくっ付ける。何回か繰り返せばんっ、ん、と鼻に抜けたような可愛らしい声が結ばれた口からこぼれ落ちた。上に集中すると下がおざなりになってしまうのでキスはそこそこに、今は右手に意識を集中させる。ぐちゅぐちゅ、扱く音がだんだん大きく、激しくなっていく。しゅっしゅっと竿全体をしっかりと扱きつつ、勿論先輩の大好きな裏筋を弄るのは忘れない。カリの裏筋部分を刺激してやれば、流石に我慢できなかったようで開いた口から露わになった喘ぎ声が溢れた。
「っぁあ!ひ、ぁっうんンっ!かんとくせいさ、っぁ、そこ、はぁ…っ!」
「ん、ここ気持ちよさそうですね、良かったです」
「あぁっ!んぅっや、っそんな、されたらぁ…っ!だめっも、だめで、っんぅゥ……っ!」
「いいですよ、先輩、イっちゃいましょう」
「ぁんぅ"う…っ!ぐ、んっぃく、っぃ、…ーーーー…………ッ!!」
声にならない声と共にぶるり、ジェイド先輩の身体が大きく震えた。同時に飛び出した乳白色の熱い液体が先輩の腹を盛大に汚す。溜まっていたのだろう、勢いよく出た後も腰は痙攣し、じわりじわりと鈴口から精液が漏れ出している。
「は、っぁ、……………」
腹の精液、大きく上下に動く胸から浮き出た鎖骨、そして熱に侵された顔へと視線を滑らせていく。白いシーツに散らばった海色の髪がきれいだ。平気ですか?と声を掛ければ、はあ、と熱っぽい息を吐いた後に平気です、と返ってきた。
「ん、……僕の方が先に達してしまいましたね」
そう言いながらゆっくりと身を起こした先輩は、合わせて身を起こした俺に触れるだけの口づけをした。まるでお互いの息を交換しているようなそれをじっくりと時間をかけて繰り返され、自然と身体が後ろへゆっくり倒れていく。
やがて背中がひんやりとしたシーツに着いた時には完全に押し倒されていて、俺に覆い被さるジェイド先輩の顔には影が差していた。それにん?と眉を寄せる。おかしいぞ、ジェイド先輩が出したら自分のを扱いて終わりだと思っていたのに、この状況は一体何だ。
「ジェイド先輩?あの、」
「僕にもやらせてください」
「は、っ?!ぁ、ちょっ俺のはいいですって、自分でやりますから」
「いいえ、やらせてください」
まさか、こうなるとは思わなかった。断ったのにその瞳は有無を言わせない強気の何かを感じる。でも、と往生際悪く口をまごつかせたが、一緒に気持ちよくなるんでしょう?とジェイド先輩は笑みを浮かべて先刻俺が言った言葉を繰り返した。そうだけども!
「ナマエさん、僕に任せて。ね」
「っ……わかり、ました」
駄目だ。断れない。断れるはずがないのだ。渋々頷けば、ジェイド先輩からふ、と笑みを溢す気配がした。
「怖がらないで、何も握り潰すなんてことはしませんよ」
「怖すぎるんでやめてもらっていいですか……っぅ」
「これはこれは、失礼しました」
この状況で握り潰すとか、この兄弟ならやりかねない。冗談でもやめていただきたい。ジェイド先輩はすっかりいつもの調子を取り戻したようで、ふふ、と笑ってビビる俺の様子を楽しんでいる。会話の最中に中途半端に勃ち上がった自身に触れられ、自分ではない誰かに性器を包まれる感覚にぞわりと腰が粟立った。そんな様子を知ってか知らずか、ジェイド先輩はまるで子供をあやすみたいに俺の額にキスを落とす。そして下腹部にやってきた刺激に堪えるように思わず眉間に皺が寄った。
「ナマエさんはどこが好きなんです?…ああ、”先っちょ”でしたっけ?」
「うう…」
目を細め、わざと俺の言葉を真似るジェイド先輩に何も返せず情けない唸り声しか出ない。先輩は学習能力が高い。まだ動きに拙さはあるものの、俺の真似をして弱いところを狙って弄る手の動きにあっという間に絶頂に追い込まれていく。
「っは、せんぱ、っ…も、」
「ええ、どうぞ。イくところ、見せてくださいね」
「っぃ、………ぁっぐ、ぅ……っ!」
それはまさしくとどめの一撃だった。甘い蠱惑的な声音で囁かれ、カッと身体が熱くなる。一気に登ってきた射精感に我慢できなかった声と腰がびくついて、びゅくりと精液が溢れ出た。一度達しているので先程よりかは勢いはないが、先輩は言葉通り俺のイくところをしっかりと見ていたようで、ちゃんと見せてくれましたね、と手に掛かった白濁を興味深げにその細く長い指で弄びながら満足げである。
「は、ーーっ、………」
「お疲れ様でした、今日はここまでにしましょうか」
「……はい…」
「次も楽しみにしていますね」
次も。そうだ、これで終わりではない。むしろ始まってしまったのだ。すう、と覚めていく頭の中でこの状況をどこか人ごとのように考える。そして俺に触れるだけの口付けをして、ジェイド先輩はうっとりとした表情で微笑うのだ。
「気持ち良かったですね、ナマエさん♡」
ああ、だめだ。
もう戻れない。