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「は、っう、ぅン、っん、……っ」
ちゃり、とシーツの上で先輩の右耳のピアスが小さく音を立てる。俺の下で先輩は口に手の甲を当てて、与えられる刺激に声を漏らさないよう必死に耐えているようだった。
「っう、ふぅ、っう、ぅ〜〜……っ」
「先輩、我慢しなくてもいいんですよ、俺しかいないんだし」
めちゃくちゃ声を我慢しているようなのでそう声をかけてはみたが、やはり声は出したくないらしい。ちょっと親切で言ったつもりなのだが、俺のことなんてガン無視である。まあいいけど…俺は先輩を気持ちよくすればいいんだし…。と、気を取り直して少し疎かになっていた手の動きを早める。
ぬちゅぬちゅと水音がすごい。自分でする時以上に耳に届く粘ついた音が大きく聞こえて顔が熱くなる。ローションを勢いに任せてどばりといつもよりもかなり多めに出してしまったのを後悔した。ちなみにローションはエースからのお下がりである。広い部屋に一人じゃ寂しいだろ?これ使えよ(華麗なウインク付き)ともらった時はマジで何なんだアイツと思ったが、まさかエースに感謝する日が来ることになろうとは。
俺のオナニーのお友達である右手は、今は俺ではなく先輩のそれを絶賛扱き中だ。図体がでかいと比例するようにちんこもでかいというのは本当らしく、フロイド先輩のナニはかなり立派だった。最早エグいレベルで、下着を脱がせて半勃ちの状態のそれを見ただけでもその大きさに正直ビビったくらいである。なのにピンク色できれいというギャップだ。ちんこにきれいもクソもないが、全然使っていないからなのかマジできれいだ。俺のと比べると大きさも色も全然違う。ちょっと羨ましい。
「ん、ん、っぁ、ちょ、小エビちゃ、まって」
「待ちません」
今までずっと呻き声を上げていたフロイド先輩がやっと何かを言ったかと思えば、薄らと目に涙を浮かべて待ってと懇願してきた。けれど先輩はいつも待ってくれないのだから、こちらも待つ義理はない。ので待たない。日頃のお返しである。手を緩めることはなく裏筋をつう、となぞれば、すっかりと完勃ちになって硬くなった先輩のそれが面白いくらいにびくびくと震える。他人のちんこを見たことはあっても触ったことはないので、こうして反応しているのを手で感じるとまるで別の生き物みたいだ。
「ぅう、っぁ、や、小エビちゃんのいじわる、っうぅ〜〜っ……」
「何言ってんですか、俺が待ってほしい時はいつも待ってくれないくせに」
この時くらい大目に見てほしいものだ。俺がフロイド先輩に対して優位でいられるのは、きっと後にも先にも今この時だけだろうから。
真っ赤に染まった顔から、視線を下へと降ろしていく。中途半端にたくし上げられたジャージからは引き締まった腹筋が見え、俺が申し訳程度にジャージと下着をずり下げたせいで先輩の白い太腿がちらついている。時折小さい喘ぎ声と共にぴくりと反応するその脚が色っぽくて、同じ男なのにくらくらしそうだ。正直に言って目の毒である。それを頭から振り払うように、意識を自分の右手に握られている先輩の自身に集中させる。
「あ、っぁ、あ、ひ、んんっうぅ、……〜〜〜ッ!」
「どうですか?俺はこれ気持ちよくて好きなんですよ」
ぐりぐりと先端を親指で押せば、ひ、うぅ、と先輩から情けない甘い声が漏れる。気持ちいいですね、言い聞かせるように唇を顔のあちこちに押し付けながらそっと囁けば、感じたのか先輩の細い腰がぴくぴくと跳ねた。
どうやら予想以上に気持ちが良いらしい、先程のニヤニヤ笑っていた余裕もどこへやら、だ。フロイド先輩は白い肌を赤く染めて、歯を食いしばり快感から逃れるようにいやいやと幼子のように首を振っている。まるで昨日のテンパってる俺を見ているようでちょっとスッキリした。俺も中々性格が悪い。
「先輩、めちゃくちゃ我慢汁出てますね。ローションいらなかったかも」
「あ、っぅ、ん、っやだ、もーさわんな……っ」
「あ」
涙目のフロイド先輩に自身を扱く手を取られたかと思えば、これ以上させまいと脚をピッチリと閉じられてしまう。更には腰をくねらせ逃げられた。どうやらいじめすぎたらしい。しかしまさかさっきまでノリノリの乗り気だったクセに拒否されるとは。
「やだってちょっと、足閉じないでくださいよ」
「だってオレ、っこんなの知らねーし」
そんなことを言ってぷい、といじけるように先輩は顔を俺から背けた。子供か。
しかしこんな(に気持ちいい)の知らねーしときたか。まあ、先輩の言うことも分からなくもない。普通にオナるだけでも気持ちいいのに、他人に、ましてや良いところを分かっている同じ男に触られたらもっと気持ちいいに決まってる。いわゆる扱き合いをしたことはないけれど、絶対にイイはずだ。先輩は抜いたことはあると言っていたが、それは気持ちよくなるためのものではなく、あくまでも事務的な処理作業だったのだろう。オナニーの快感を知らずに他人に扱かれるなんて段階をすっ飛ばしているようなものだから、余計に気持ちよく感じているのかもしれない。
フロイド先輩、と名前を呼んでも返事は返ってこない。ついには俺に身体ごと背中を向けてしまった。ああもう、本当に大きな子供みたいだ。
先輩へと近づいて、上からその横顔を覗き込む。金と灰色の瞳はいじけたままで、部屋の壁をじっと見つめたままだ。ほんのりと染まった耳に触れ、そっと頭を撫でてみる。拒絶はされない。先輩、優しい声音でもう一度彼のことを呼んで、ゆっくりと慎重に言葉を選んでいく。
「知らないじゃなくて、これから知っていくんですよ。楽しくて気持ちいいこと、したいんでしょう?俺、これでも陸の人間を十数年やってるんです。少しは俺の言うこと、信じてほしいな」
ね、と先輩の頬に唇を落とす。どうやらキスは効果てきめんだったようで、先輩は無言でもそりと身体を仰向けにして、口にくれというかのように唇を押し付ける。それに応えるように先輩の下唇を食めば、んぅ、なんて甘えたような声が塞いだ口の隙間から漏れて、もっとと言うように先輩の手が俺の首に回った。ちんこに触られるのは嫌がるくせにキスはいいのか。現金だ。
「キス、きもちいいですか?」
「…ん」
「下を触るのも同じです、先輩をきもちよくしてるんですよ」
「…ぅ、う〜…」
これが俺にできる精一杯だ。これで駄目だったらここで終わりにするしかない。色々と考えているのか何なのか、先輩からは言葉にならない声が漏れる。目を合わせようとするけれど、先輩は視線を明後日の方向に向けて逃げてしまう。そのまま口を一文字にしてまた黙ってしまった。その姿にこれはもしかしなくてもやりすぎてしまったのでは、という不安が過ぎる。さすがにオナニーを教えるというのは行きすぎたもしれない。相手からすれば大きなお世話だ。他人に急所を触られている訳だし…。
「……でも、ちょっと、やりすぎましたよね。すみませんでした」
フロイド先輩に対して普段ほとんど抱くことはない優越感に、調子に乗っていたのだ。終わりにしましょうと静かに告げて、後片付けを始めるためにベッドから降りようとしたけれど、くん、と服が微かに引っ張られる感触に身体を止める。
「…………して、いいから」
背後から、聞こえるか聞こえないくらいの小さな声が耳に届く。先輩の顔はこちらからは見えないけれど、さっきよりも濃く、真っ赤に染まった耳が、全てを物語っているように見えた。それに何か反応しようとしたけれど、中途半端に開いた口からは何の言葉も出ない。先輩の言葉に、どれくらいの間反応できなかったのだろう。やっとのことで頷いて、ちゅう、と触れるだけの口付けを贈る。
「分かりました」
何かを押し殺すような声だった。我ながらどうしてこんな声が出たのかと疑問に思う。そんなことを考えながら先輩の下腹部に手を伸ばす。さっきので萎えたかと思ったけれど、意外にも元気なままだ。最初はそんなに強くしないですからと告げて、刺激は最小限にとゆるゆると手を上下に動かし始める。ぁ、と小さい声と共に腰が揺れた。
「は、……っう、ぅ、ん」
少しずつ、先輩の様子を見ながら扱くスピードや力に強弱をつけていった。ぐちゅぐちゅとした水音がまた響き始め、それに比例するように鈴口からは我慢汁が溢れていく。先輩の中で何かが変わったのだろう、眉間に皺を寄せ、必死に快感に我慢していたような表情が、段々と蕩けたものに変わっていく。それと共に半開きの口から漏れ出す声も艶を帯び始めた。
「ぁ、っん、ね、小エビちゃん」
「はい?」
「ちゅーしながらしてぇ…」
「………」
眉を下げて、ぼんやりと潤んだ瞳で。舌にもつれたような甘い声音で紡ぎ出されたその言葉に俺は文字通り固まった。
果たして俺は、ちゅーしながら右手を動かせるだろうか。お願いされて一番最初に思い浮かんだのはそんな懸念と、不覚にもそのお願いがちょっと可愛いとか思ってしまったという動揺である。が、ここで頷かなければ男が廃る気がする。頑張るんだ俺。やればできる。頷いて、先輩の熟れた唇と自分のそれを重ねた。
「ふ、ぁ、っンぅ、ン、ぁん、ぁう、んぅ、〜〜っ……!」
「ん、っん、ぅ、っは、あ」
口の中を弄られながら扱かれるのがかなり良いのか、塞いだ唇からはまるでハートが付きそうな喘ぎ声が漏れっぱなしだ。苦しくないのかなと少し心配になるものの、後頭部を先輩の大きい手で固定されているので逃げられない。
くちゅくちゅ、ぐちゅぐちゅ、上からも下からも粘ついた水音が耳に入ってくる。そのいやらしい音に思わず顔をしかめた。意識を手にやれば、俺は悲しいことにその手をまともに動かしていないと気付く。え、ならなんで下でぐちゅぐちゅいってるんだ。せんぱい、動かしすぎて痺れた舌でなんとか名前を呼んで口を離す。視線を下へと向けると、先輩の腰が揺れ、俺の手に自ら擦り付けていた。
「……だいぶ吹っ切れてきたみたいですね…」
「小エビちゃ、ぁっくち、」
「もう口疲れたのでむりです、舌動かないし攣っちゃう」
変わらずキスをねだる先輩にほんとに好きだなあと思いつつ、代わりにこっち触ってあげますから、と扱くスピードを速める。俺は同時に全く違うことをする練習をしよう。彼女ができた時にスキルを活かすんだ。
「ぁ、んぅっやば、なんかクる、っあ、ぁう、」
「あ、イきそうですか?じゃあイっときましょうか」
「ぇ、っうそ、まって、」
はくはくと口を開けて息をする先輩に薄く微笑う。
調子に乗るのは良くないと、分かっているのだけど。
ああ、でも。やっぱり、この優越感は最高だ。
「待ちませんよ」
この時、俺は今日最高の笑顔をしていたんじゃないだろうか。
カウパーで濡れた亀頭の部分を包むようにして扱き上げると、フロイド先輩は途端に悲鳴を上げた。
「っあぁ、!んぅっだめ、ぇっむり、オレそれまじでやば、っんぁあ、こえびちゃ、」
「まじでやばい?知ってます、俺もここはやばい」
「っあ、むり、あぁっむりむり、こえびちゃ、っやば、っんぁあっ!や、っまじでやばいからぁ!」
「大丈夫、大丈夫ですから、ね、フロイド先輩」
「あ、ぁあっ!ぁンっいく、っぃ、く、っひ、〜〜〜〜ッ!!」
「ぅわっ?!」
腕をこちらに向けて伸ばされたかと思えばぎゅう、と強い力で抱きしめられる。耳元でダイレクトに引きつった声が出されて、ほぼ同時に先輩のソレがどくりと大きく脈打った。びゅるびゅると勢いよく出される熱い液体を手の中で受け止める。
「は、っぅ、はーー、っ………」
終わった。
は、はあ、と胸を大きく動かすフロイド先輩からそっと身体を離す。射精の余韻に浸っているのか、先輩は瞳を閉じて荒く息を繰り返すだけで、何も言わない。そのうち賢者タイムが来るぞ。
「……うわ」
怖いもの見たさというか、そんな感情が働いて右手を少しだけ広げてみる。途端にどろりと粘ついた精液が指の間からこぼれ出し、先輩の腹の上にぼとりと落ちた。それが手のひらで受け止めきれなかった精液と、こぷ、と先っちょから漏れた精液でできた白い小さな水たまりと溶け合っていく。それに思わず声が出る。見るからに濃そうだ。ずっとしてないのであれば溜まっていて当然だろうが。射精の勢いがすごかったから、手で受け止めていなかったら俺にもかかってたかもしれない。受け止めといて良かった…。
とにかくこれで俺の戦いは終わった。このどろどろの精液をティッシュで拭って、フロイド先輩をきれいにして、後片付けをしたら帰ろう。先輩も喘ぎっぱなしで気持ちよさそうだったし、これなら文句は言わないはずだ。ああ、妙にスッキリとした気分だ。肩の荷が降りたってこんな気分だろうか。生きて帰れるって最高だ、帰り道はスキップして帰りそう。
「ね、きもちよかったでしょ、先輩」
「ぁ、──……」
晴々とした気持ちのままニッコリと笑って、最後にフロイド先輩の大好きな触れるだけのキスをする。ああ、この数十分間でキスをすることに大分抵抗というか、尻込みすることがなくなってしまった。良いことなのか悪いことなのか、まあ慣れてないより良いだろうと思うことにする。
そんな俺を見てフロイド先輩が何かを言おうとしたのか、ゆるりと口を開いた瞬間、
「おや、すっかりとお楽しみのようだ」
楽しそうな声音。ドアが開く音と共に、もう一人の部屋の住人が笑みをたたえて入ってきた。
「僕も混ぜてくれませんか?監督生さん」
……最悪じゃん。