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よりによってこのタイミングで、双子の片割れが部屋に戻ってきてしまうなんて。肩の荷が降りてまた乗ることなんてあるのか?最悪である。
「っジェイド先輩……、」
「こんばんは、ナマエさん」
俺の引き攣った顔とは対照的に、にこり、いつものように綺麗な笑みを浮かべたジェイド先輩は、ゆっくりとこちらに向かってくる。ジェイド先輩の姿を確認したフロイド先輩は面白くなさそうな顔でのそりとその身を起こし、そして二人で会話を始めた。
「ジェイドぉ、戻ってくんの早えーよ」
「ちゃんと待ちましたよ。きっかり1時間」
「ジェイドが行ってから30分はオレ小エビちゃんのこと待ってたからね。実際ヤってた時間半分しかねーから」
「おや、30分も。それは残念でしたね。次回に期待ということで」
「マジで残念すぎる」
もー、まだ足りねーのにとと言いながら俺から離れたフロイド先輩は、手を伸ばしサイドチェストからティッシュを取って精液を拭き取る。そしてごそごそとジャージを履き直した。え、俺の分はくれないのか…。
「ああ、ティッシュですか?どうぞ」
「あ、どうも…」
フロイド先輩がティッシュを取っていたのをじっと見つめていたからか、俺の右手の惨状に気付いたからか、ジェイド先輩は俺にどうぞとティッシュを渡してくれた。それをありがたく受け取り、手に付いた精液を拭き取っていく。俺のお礼にどういたしましてとジェイド先輩は穏やかに笑って、そして自然な流れでベッドサイドに腰掛けた。そして今日は少し外が冷えましたね、なんて天気の話を少々。それに俺も冷えましたね、今日来る時なんか半袖じゃ寒いくらいでした、なんて返した後、なぜ俺は律儀に会話をしているんだ…?と脳内で自分に突っ込んだ。部屋に入ってきてから今までの会話の流れが自然すぎて普通に流された。いや、だから流されるなって。俺は帰るのだ。今、早くこの場から立ち去らなければ、ほぼ100%の確率でジェイド先輩にちょっかいを出されてしまう。
「あの、俺…」
そろそろお暇します、そう言いかけたのだが、それは失敗に終わった。遮るようにジェイド先輩が視線を下へ遣り、口にした一言に文字通り固まったからだ。
「兆していますね」
「へっ……、ぇ」
兆している、とは。先輩の言葉を一瞬理解できずに頭に?マークが浮かび上がる。けれどジェイド先輩の視線を追い、顔を自分の下半身に向けてようやくその意味を理解した。
俺のズボンの股間を盛り上げているもの。俺の息子である。つまり、勃っている。
「(うそーーーーーー!!??)」
全く気付かなかったということより、フロイド先輩で勃ったというその事実に愕然とした。確かにキスをねだってくる先輩はちょっとかわいいとか思ったし、キスも夢中で考えられなくなるほどしてたし、喘ぎっぱなしのフロイド先輩は色っぽかった、し…………。
「………(そんなこと考えてる時点で俺ダメなのでは…………?!)」
カーッと顔が一気に熱くなっていく。そんな俺を見てジェイド先輩は意外そうにおや、と首を傾げた。
「気づいていなかったのですか?」
「えっあ、ひ、必死だったので…」
「なになに?小エビちゃん、オレとシてコーフンしちゃったの?」
今までのジェイド先輩との会話を聞いていただけのフロイド先輩が、後ろから俺に抱きついて肩越しに俺の盛り上がった下腹部を覗き込む。そして、ホントだーと俺の耳元でどこか笑みを含んだ声でそう言ったフロイド先輩は、あろうことか俺の息子をがっしと鷲掴みにしたのである。
「ほわあっ!?ちょっとフロイド先輩!」
「あはは、ヘンな声ウケる」
あまりの衝撃に飛び上る勢いで身体をびくつかせ、奇声を上げる俺に構うことなく可笑しそうに笑うフロイド先輩。こ、この人は…!
「も、っちょ、やめてください!!だからっひ、っっも、揉むな!!!人間の急所そんな強く鷲掴みにしないでくださいよ!!!」
「ハイハイ、ゴメンて〜」
やめて!!といつもの2割増しのデカい声を出して思い切り抵抗したお陰か、最後に一揉みして先輩の手から解放される。いや最後の一揉みが一番強かったんですが。全然悪いと思ってないなコレ。この悪びれなさ、もはや清々しく感じる。
「あまりナマエさんをいじめるのはかわいそうですよ、フロイド」
「だって小エビちゃんの反応おもしれーんだもん」
ジェイド先輩に咎められるものの、フロイド先輩は口を尖らせて、いかにも自分ではなく俺が悪いですかのような言い方である。俺の反応のどこが面白いんだ。誰だって金玉鷲掴みにされたらあんな反応になるわ。
「まあ、ナマエさんの反応が面白いことには同意しますが…。それは今は置いておきましょう。──さて。フロイドとは随分楽しんだようですので、今度は僕と楽しみましょうか」
一度会話の流れを断ち切ったジェイド先輩は、俺の顔を覗き込んでね、とこれまたハートマークが付きそうな甘い声でにこりと笑った。あ、駄目だ、この流れ詰んだ。
「あの、楽しみましょうとは…」
この場で強引にでも逃げれば良かったのにそれをせず、大方想像が付いてしまっているのに聞いてしまうのは俺が馬鹿だからか、それとも一縷の希望を望んでのことか。それにジェイド先輩は文字通りの意味ですよ、と答える。続けてフロイド先輩が捕捉をするように口を開いた。
「オレとジェイドで小エビちゃんシェアすんの。さっきまではオレの番ってワケ」
「で、今からは僕の番。いいでしょう?フロイド」
「しょーがねーなあ、ハイ、どーぞ」
「え、ちょっと、」
いや俺モノじゃないんだが?!と文句を言おうとしたものの、はあ、とため息を吐いてフロイド先輩は俺を差し出し、オレ寝るわー邪魔しないでねと言ってこちらに背中を向けて寝っ転がってしまった。マジか。この状況で寝るの?どんな神経してんだ。というか昨日もあったぞこんな展開!差し出されたのは逆だったけど!
「あの、ジェイド先輩待ってください、俺帰りた、」
「ん?」
………有無を言わせないスマイルだこれは。