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黒い影は奪う、全てを

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「クロロ」
ベッドの傍らに、心配そうにしているお前がいた。
小さく、細い声。いつになく弱々しい聞き慣れたお前の声。
ああ、いつもの景色だ。オレは生きている。
守ってやらなければ、そんな使命感さえ与えられているようなお前の側にいる。
いや、それが彼女に対してオレが出来ることの全てだ。甘い匂いが、フワリと優しく落ちた。
「あまい」
眠気覚ましに啜ったブラックコーヒーの
苦い余韻は、舌先で触れたどこか甘味のある柔らかなものに、あっという間に溶けて消えた。
「にがい」
あどけなく、純粋無垢な瞳はオレにない物を埋めるようだった。
オレにはないもの。そう、オレには何かが欠けていた。その欠片を持つものをオレは羨望した。そう思ったのは、お前の意識のベクトルが俺から離れた時だった。
お前はここにいない方が幸せなのかもしれない。いるべきなのはこの場所ではない。
オレの見えないどこか遠くへ行くべきだ。オレの触れられない、どこかへ。お前には狭すぎる。お前には暗すぎる。だがどうか過去に溺れてくれるな。海は遠くから見るだけでいい。その方がずっと綺麗で、暖かい。


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