赫い糸 3 [4/19] ぼんやりと聞こえる小鳥の囀り。朝の報せだ。昨日を終えて、また1日生き延びた。だが苦しかった。 前に目覚めた時と違い、今日は身体が勝手に動いている。それも不思議なことに宙に浮いているようだ。 前屈みたいに項垂れて、血が頭に溜まっている。 自分の身体を支えてる腹は、何かに固定されている。 暈けた視界に映ったのは黒だ。 いや、確かに目ははっきりと開けていた。僅かに光沢がある。 きっと黒い衣服だろう。何者かに担がれているのだ。 視線を変えれば大きな柄が見えた。縦棒の長い十字架だ。 黒に十字。ニルの脳内でパンクやロックなイメージが連想された。 そうなれば、この人間は気性が荒く、悪人であるかもしれない。そんな人物像が、本人の背後で作りだされた。 それでもニルは動く気配を見せない。 タヌキ寝入りをするのが賢明だと判断していた。隙なんてない。寧ろ自分こそ、寝ている隙に捕まったんだ。 不意打ちされ、あまつさえ何処かへ持ち運ばれてるなんて自分を不憫に感じる他無い。 (あれ、この柄) ニルはふと、違和感に気付いた。 今の自分にとって地面が天井。しかしどういうわけかその柄は、正しい向きにある。 (これは逆十字だ!) 知ったところでニルはそれに対して、特に深く思うことはなかった。 揺れと振動が響き、頭がズキズキする。 視界が水の中のように歪む。体勢が辛いのか、残痛のせいか、この視界の暈けは燃料が底をつく合図なのか。 ニルは限界を間近に感じていた。 |