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赫い糸
2
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それから依然として、男はニルのことを覗き見ていた。不思議な状況の中、刻々と鼓動の針が時を刻んでいるようだった。
男のその動作はまるで相手のことを警戒し、伺うように見えたが、それにしても何て綺麗な目なのだろう。ビー玉が二つ、浮かんでいるような、見たことのない高遠な美しさ……。そう、縁遠いノーブル感があった。

光沢が少なく、吸い込まれそうなほど何処までも黒い、大きな瞳に、ニルはすっかり魅入ってしまった。
やがて男が口を開き、呟くように尋ねた。
「お前、流星街を知っているか?」
意外にも普通の調子であった。
ニルは徐ろに、たじろいで、やにわに首を横に振った。
すると男は、「そうか。」と一言で返し、再び本を読み始めた。
気のせいだろうか。感情の起伏があまりないのに今の一瞬、がっかりしているように見えた。いや、きっと思い込みにすぎない……。しかしどうしてそんな事を聞いたのだろう?
ニルは心の中で、何か突っかかっている感覚を覚えた。

「留めてすまないな」
男は本を読みながら、悪びれた様子もなく、変わらぬ調子で最後に言った。
ニルは、感謝の気持ちを込めた「ありがとう」を、今までになく丁寧に述べながらふかく、ふかくお辞儀をした。
命を救ってもらったのだ、大げさなことなど何もない。
ニルはそのまま、静かに家を出た。

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