赫い糸 3 [11/19] 家を出てみると、目の前に、ぐるりと一周することのできる長方形の廊下があった。 先までいた部屋の壁側には、同色のくすんだグレーのドアが横並びになっている。 向かい側の壁側にも同じように4つドアがあった。 そした中央には、下への階段が続いていた。 覗いてみたところ、ここは三階ぐらいだろう。 ……それにしても、見慣れない不思議な造りをしている。何処を見ても、どんよりとした灰色だ。人も、アパートも不思議なことが度々重なって感じた。 一気に階段を駆け下がり、冷えこんでいた影の世界から抜け出して、陽射しに一歩足を踏み入れたとき、なんとも目覚ましい気分だった。ああ、なんて開放感なんだろう。 けれど、先ほどのアパートのような湿っぽい雰囲気がどこか漂っている。 そう……この街は、建物も多いが、その分影が多かった。 何よりも早く目に付いたのは、いくつかの建物の背後から顔をだしていた、高い塔の先端部だった。 辺りを見やれば、気品溢れるゴシック建造物で埋め尽くされた街だった。 振り返り見た、先ほどまでいたアパートの外観も、やはり細かく綺麗な造りだ。どの建物も全体的に年季がはいっていて、煉瓦や壁などは老朽しているようだが、それでも当時の面影を失ってはいない。そう思えた。 (素敵な街だ。もっと早くにこの景色に出会えたら、この街に来ていたら、私の窮屈な世界は華やいでいたかもしれない。) ニルは、この上ない歓喜に、身をまかせるように、翳る街路を軽快に歩き始めた。 |