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赫い糸
3
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家を出てみると、目の前に、ぐるりと一周することのできる長方形の廊下があった。
先までいた部屋の壁側には、同色のくすんだグレーのドアが横並びになっている。
向かい側の壁側にも同じように4つドアがあった。
そした中央には、下への階段が続いていた。
覗いてみたところ、ここは三階ぐらいだろう。
……それにしても、見慣れない不思議な造りをしている。何処を見ても、どんよりとした灰色だ。人も、アパートも不思議なことが度々重なって感じた。


一気に階段を駆け下がり、冷えこんでいた影の世界から抜け出して、陽射しに一歩足を踏み入れたとき、なんとも目覚ましい気分だった。ああ、なんて開放感なんだろう。
けれど、先ほどのアパートのような湿っぽい雰囲気がどこか漂っている。
そう……この街は、建物も多いが、その分影が多かった。
何よりも早く目に付いたのは、いくつかの建物の背後から顔をだしていた、高い塔の先端部だった。

辺りを見やれば、気品溢れるゴシック建造物で埋め尽くされた街だった。
振り返り見た、先ほどまでいたアパートの外観も、やはり細かく綺麗な造りだ。どの建物も全体的に年季がはいっていて、煉瓦や壁などは老朽しているようだが、それでも当時の面影を失ってはいない。そう思えた。
(素敵な街だ。もっと早くにこの景色に出会えたら、この街に来ていたら、私の窮屈な世界は華やいでいたかもしれない。)

ニルは、この上ない歓喜に、身をまかせるように、翳る街路を軽快に歩き始めた。

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