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赫い糸
5
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ゴーーーーン。
空の波紋の如くとなり、轟然と走りひびいた鐘の音にニルは奮い立った。
不思議と、何処かで聞き覚えのあるようだった。
ああ、身体の内まで入り込む音…そう、あの音はいつも一度しかならないんだ。
界隈の森海を抜けた、その向こうの小さく見えていた塔______
______そうだ、これだ。自分は、この音を求めて旅に出たんだ!

ニルはごくんと固唾を飲んで、瞳を見開いてキラキラと輝かせた。
目が覚めた時は、まさかずっと焦がれていた塔の近くにいたなんて思いもしなかったのだ。
影を増す世界の中で、もっとその色に染まろうとする、塔の、なんとおぞましい体幹なことだろう。
鐘の余韻がまだ残っている。

だが、もう、夜はすぐそこにいる。そこまで来ているのだ。
早いところ、何処か身を休める場所を探さなくてはならない。
しかし、まだここで、この塔に見惚れていたかった。

胸の高まりを指先に感じ、落ち着かせるように胸を撫で下ろし、ひたすらに塔の上から下を、そして下から上を見ていた。
その時、胸あたりに何か違和感を覚えた。
(ない……!)
ニルは、とりみだした。
父の形見のペンダントが消えていたことに、今になって気づいたのだ。

そして、すぐにある男を思い浮かべた。
自分を看病していた、あの異風な男。
おそらく、寝ている間に盗んだに違いない。親切な男のイメージは、たちまち崩壊し、詐欺師の男に変わった。ペンダントを取るために騙されたと思うと、いきどおろしくて仕方がなかった。
すぐさま、ニルはひやりと湧いて出る汗をまといながら、すっかり陽が落ちた街路を、人の間を割って退け、ときに怒声をぶつけられながら、急いだ。
アパートに着いたら、文句を言ってやるんだ!
ニルは怒りに身を任せ、乱心をやっとの思いで抑えていた。


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