赫い糸 3 [17/19] 管理人は紙を繰った様子もなく、301号室の履歴を直ぐに見つけ、そして、小さな文字を指でなぞって読んだ。 管理人によれば、契約期間は男が来た火曜日から1週間とのことだった。 やはり、借宿なのか。いや、そうか、ここはそもそもアパートホテルなんだ。ならば管理人が見ているのは契約書ではなく予約名簿だろうか。 (何から何まで履き違えている……) ニルの血色は、話を聞くごとに青ざめていた。脈がズルズルと減退していく感覚も、覚えた。 「そうですか……しかし、今朝までは宿泊できたんですよね?」 「そもそも、契約が1週間の貸し出しだったからね。」 頬杖をついて、わざとらしく語尾に吐息をつけた。 ニルは、管理人のその答え方がよく分からず、眉間にシワを寄せた。 (1週間……火曜日……。今は何曜日だっただろう、男が出て行ったのが昨日だとしたら、今日は水曜日のはずだ) ふと管理人の奥にあるカレンダーを見やったその時、管理人の示唆する言葉の意味が、可笑しいほどに理解できた。 そう、今日は“木曜“だったのだ。 しかしそれでは、ますますおかしいではないか。つまり男は、早出ではなく、長居していたことになる。 それも、1日過ぎている。ニルの頭の中は、靴紐のように絡まりはじめた。 つまり、管理人は何が言いたいのだろう。その真意を明らかにしなければならなかった。 ニルは一旦、呼吸を整えて瞼を閉じた。 「8日間いたんですね?」 暫くして男は口を開いた。 「契約が切れる当日に、延長してくれって頼まれたんだ。うちは他の客がつかえるから延長は基本しないんだがね、どうしてもって言うから、1日延長したのさ。」 余程退屈に煩っていたのか、根掘り葉掘りと、聞く前に管理人は自ら、まんざらでもなく饒舌な口調になり始めた。 |