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夢か、現か、幻影か

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「ほら、早く食べないと」

「はいはい!」

(なんだ、夢だったのか……。)
重たい音を立てながら、机に着いたモネを、シャルナークは頬杖をついて物珍しそうに見た。
「ねぇ、なんかあった?」

「な、何も!」

「ふーん」

シャルナークは眉を上げて、両目を細めた。
ぽかんと口を開けながら、銀のフォークでトマトをつついたり、転がして遊んでいる。シャルナークの表情からは水掛け論の延長戦になる一言が今にも溢れ出そうだ。ふと、じっと送られる眼差しに気づいて、モネは視線を逸らした。

「ああ、もう!食べづらいから見ないで!」

「だってモネ、すっごく顔が赤いよ?鏡見てみろよ」

「えっ!?うそよ!」
モネは、手にしていたフォークを皿の上に落として、両手で顔を挟んだ。
「何でオレが嘘をつくのさ」

「今日暑いじゃない?きっとそのせい」
そう言って、再び食事を始めた室内はしんと静かになった。
白いカーテンの向こうからは、セミの音が漏れて聞こえ始めた。陽が登る午後、部屋がもやっとしていた。

すると、暑さが苦手なシャルナークが、「もう夏か」と呟いて冷房をいれた。
夏______。そのフレーズで思い浮かべた赤い海は記憶に新しい。
あの現実のような夢。燃ゆる夕焼けに染まった世界と、頬を撫でる風、彼の覆る髪、赤い眼。あの言葉は、シャルナークが、死んでも言わないような言葉だった。

それからのこと、視界の中心に彼がいることはなかった。
近くにシャルナークがいるだけでモネは、妙な緊張感を覚えていた。
(ああ、なんでこんなにドキドキしているんだろう。バカみたい、シャルナークなんかに……)
緩やかな傾斜のある道路に出て、自身の影を追って歩いた。
熱で火照る道のように、摩擦で胸でも焼けこげてしまうんじゃないかと思うほど加速する鼓動から、硝煙がくゆりとあがっている。
もシャルナークが好きだったんだろうか?
いえ、きっと夢のせいよ。

そんな自問自答を繰り返し、モネは疲れたようにため息をついた時には、気分屋なシャルナークは見向きもしなかったのだった。

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