夢か、現か、幻影か [3/7] シャルナークの目の前では勿論のこと、風呂に入る時や外に出る時でさえ無意識に考えていた。 モネは完全に意識し始めていたのだ。 ベンチに腰掛け、ぼうっと遠くを見つめて、そのすがら何度もため息を吐いている。黄昏れ時の訪れにも気付かずに……。 街行く人々には、モネがまるで、恋をしている少女にも見えただろう。 その夢は日を増すごとに写実的に映し出されていた。 夢の中であるのに目の前にいるみたいに写実的で、汐風の匂いの中に、確かに彼の匂いが感じられた。 あの金色の、さらりとした子供のような毛質は羨ましいものだった。 それからある日の夕方。 夢を見たのがきっかけで意識をして以来、シャルナークと目を合わせず、避ける日々が続いていた。 この日もいつものように素っ気ない返事を交わして、過ごすはずだった。 風呂上がりに、首にタオルをかけて廊下から現れたシャルナークの横を、すっと通り過ぎようとした。 その時、不意に腕を掴まれた。 同時に、モネの胸がドキッと飛び跳ねた。 「何か隠してるだろ?」 シャルナークは見事に正鵠を得ていたようだった。その体で詰め寄ってこられることに、モネは強くなり、どうにかしようと、たじろいだ。 「別に何も隠してないよ」 「あっそ」 掴んでいた手をぱっと離してシャルナークは、嘆息した。 そして何事もなかったかのようにモネは自室に戻ろうとした時、首元へと空中に細長いものが走った。 モネは忽ちその場に倒れて、うつ伏せになった状態で、携帯を手に持つシャルナークの姿をはっきりと見た。 「ちょ……」 カチカチと音がすると、身体が勝手に仰向けになった。 「ねぇ、言わない?言うなら取るよ」 馬乗りになるシャルナークは、変わらずあどけない表情で、本性の見えない無垢を装った悪戯好きな、子供にも見えた。 「言わないなら仕方ないね」 モネが黙っていると、またも、カチカチと携帯を鳴らした。 すると直ぐに両腕がひとりでに動き出し、頭部の上へと止まった。別に抵抗してるわけでも触れられてるわけでもないのに、目の前のシャルナークにこんな格好にさせられたようで、恥ずかしくて叫びたい気持ちになった。 「どうする?」 シャルナークは、モネの顔横に手を付いた。前屈みに俯瞰する彼の、まだ湿った髪の毛や、身体から靄のように漂う石鹸の香りに、蠱惑されてしまうかのように、一気に心を掻き立てて、彼の言葉がより煽りの勢いを増す。 「わかった言うよ!夢を見たの!」 「なんの夢?」 「それは……」 口ごもると、シャルナークはまた携帯画面を見やって、操作する素振りをした。 |