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夢か、現か、幻影か

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「シャルが夢に出たの!」

モネは咄嗟に答えた。けれどシャルナークはそれだけでは望む答えではない、と不満気な表情を浮かべた。

「それで?」

「それでって……」

「どんな内容だったの?」
シャルナークは依然と無表情に等しかったけれど、白熱灯と対照的に影がかった彼は、どこか意図せぬ圧を含んでいた。

「モネをこんな風に煩わせる夢は、どんな内容だった?」

「恥ずかしいよ」

「もっと恥ずかしくなるって思えば言えるだろ?」

どんなに顔を背こうと思っても、彼のコントロール(主導権)には当然、抗うことも出来ない。故に言い逃れなんてさせてくれないのだ。

シャルナークという男は、好奇心がなく無機質で、特別、器用であったり勘が鋭いわけでもなかった。つまり、駆け引きは言うほど得意ではないのだ。
だが、何事も均一にそつなくこなし、オールラウンダー的な人間であることに相違ない。
道を歩き出せば、汽車に運ばれながら、何気なく景色を眺める。
その時、普通の人間ならば感性を通して見るが、シャルナークにとって、目の前の人間も退屈な風景の一部と変わりない。けれどその景色を一度だって忘れはしない男だった。
ありとあらゆる、全ての物が情報へと置換されるシャルナークの静寂しきった世界に、突如として奇妙な存在が現れ、胸騒ぎを覚えたのだった。

人間の傾向なんて、どうでもよかったのに______
どうして放って置けないんだろう?
シャルナークは、情報化されない自分の感情が、不快だった。
目の前の奇妙な人間の、端から端まで、隅から隅の細部まで、情報を網羅出来たなら解消されるのだろうか______。



「わ、私に告白したの!」

「誰が?」
近頃、モネが露骨に避けていたせいか、シャルナークは、漂う煙のようにゆらゆらと消えていくモネの姿をどうしても掴んでみたいと思ったのだった。
しかし、こんなに執着するシャルナークの姿にモネが意外だ、と思う余裕はさながら無かった。
彼の問いに、分かるでしょ?と、モネは目でものを言うと、シャルナークが苦笑しながら「オレが?」と確かめるように聞いた。

「なんでそんなことで避けてたんだよ」
シャルナークは心の騒めきを失っていった。
余程、卑小なことのようだったので、直ぐに首元のピンを抜いて立ち上がった。
自分が悪いことでもしたのか心配だったのかもしれない、とモネは思った。だけど、こんな強引な方法でいて、言葉一つ出すのに精一杯だったのだから、勿論納得がいかなかった。
男は二重の嘆息を吐いて「もういいよ」なんて、上から目線で言った。

モネは、とにかく酷く落ち込んだ。ずしんと、重石を乗せられて、ひずんでゆくのが嫌ほど分かった。
悔しいのか、悲しいのか分からないような複雑な気持ちが込み上げて、目元から一粒、二粒と沸き上がらせた。落ちる前に、頻りに拭った。
逃げたい気持ちで一杯だったさっきとは一変、駆けることもせずに、ゆっくりと自室へ向かって歩いた。

まさか自分が泣かせたのだろうか……シャルナークは罪悪感から何度も呼びかけた。されど、伸ばした手がもう一度、モネの腕を掴むことはなかった。




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