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夢か、現か、幻影か

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______やっぱりバカみたい。
あんな鈍感な男なんて好きになってもロクな目に合わない。

______ばか、ばか。嫌い!
モネは枕をシャルナークに見立てて殴りたくなった。
でもそんな自分が嫌になった。

しかしその夜、あれほど悲しんでいたのにモネはまた夢の中でシャルナークを見た。
波打ち際で、夢の中の2人はいつもと同じように歩いてた。

『ねぇ、オレの話を聞いてくれる?』

『な、なに?』
夢の中のシャルナークはいつも違った。変わらぬ景色であるのに違う人間でいて、違うシャルナークがそこにいるのだった。
言うこともその都度バラバラであるけれどモネはいつも期待を高まらせていた。

『はは、また赤いよ』
そう言って、モネの頬を軽く摘むと、楽しそうに笑っていた。
湯気が靄々と出そうなほど、熱が顔にたまりこんでいくようだった。その温度を彼が指先に感じているのだと思うと、一層と恥ずかしくなった。

けれど、これも夢なんだ、と気付くけば音もなく静かに冷めて、虚しい気持ちになった。
朝になったら煩い声に目覚めるんだわ。
朝食の用意されている机に座って、午後には甘ったるいコーヒーを注いでもらい……しかしそれは永遠には続かない。いずれ2人行動なんてしなくなるのだから。もし、それが続けば至極幸せなことなんだろう。

そっと触れた彼の指は冷たい。細部まで見えて、本当に目の前で息をしているみたいに。その目はモネをかきたて、もっと触れてほしいと思うのだ。
(彼は、出会った時からこうだったのかな。)
モネの目に映るシャルナークは、煌々としていて、まるで別人だった。今まで気付くことなく、景色の端にあるような、見過ごしてきた男の面がみるみると見出され、そのどれもが魅力的に感じた。

これが現実ならいいのに……。
夢は夢の中に存在し、現実には訪れない。だからこそ安堵できることもあれば、現実的なことにガッカリする。


『好きだよ、シャルナーク』

『え、モネ……?』

『ねぇ、シャルは私のこと……』

モネはこれ以上聞くのはやめた。夢の中ですら、彼に掻き乱されることを恐れた。
狂ってしまいそうなのだ、何もかもが。この生活も、彼との関係も、今までが心地良かったのだから、敢えて崩す理由なんてなかった。あと少しであってもその想いは変わらない。
やめた方がいい、なのに、素直でいたい。
それが、往来し続けるのは苦痛だった。しかし、夢の中だけはどうしても嘘はつけなかった。

『可愛いシャルナーク……』

『オレのことそんな風に思ってたの?』

『うん。つい最近知った』

『はは。モネったら自分の気持ちに鈍いんだね』

『それに素直じゃないから、可愛くないでしょ?』

『……オレは可愛いと思うけどな。他の誰かがそう思っていたとしても、君自身が卑下してても、その魅力はモネだけのものだって、オレは気づいてるよ』

シャルナークはそう言ってモネを抱きよせた。
2人は反対の景色を見ていたが、同じものを見ているように感じていた。

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