未来はいつも
屍の山だった。折り重なるように、血色の悪い腕が山の合間から伸びている。ボロボロの刀を握っていた不知火と、その隣で拳を握る天霧が俺を見ていた。彼らの前に、あるいは俺の前に倒れているひとりの青年だけが、ぽつんとそこにあった。
「――」
彼らは踵を返し、残った男を連れて闇に溶ける。赤髪を後ろで結わえた男が、青年に走り寄った。狭苦しい小路には、彼と、青年と、短髪の男。そしておびただしい屍以外、なにもない。いや、今しがた、小路を曲がっていった浅葱の羽織は、きっと生きている人間だ。
ずるりと引きずるように、足を前に出す。視界は少し、前に行く。雨に濡れたような草履の感触が全身を巡る。
「平助! おい、平助!」
「くそ、こんなとこで死ぬんじゃねえよ!」
「……へ、い、すけ」
ちらりと一瞬、緩やかに向けられた青年の――藤堂の双眸が、細まる。からんと手から滑り落ちた鋭利な鋼の赤々しさに、澱んでいた意識がさめる。
彼は、とめどなく、口から赤い血を吐いていた。足元に彼の血が広がっていく。俺の呼吸が、止まっていたのに気がついた。
原田が乱雑に俺の刀を拾い上げ鞘に収めると、大丈夫だと泣きそうな顔で、何度も何度も願っていた。湿る髪ごと掻き撫でられた手はいつもより強ばっていて、視線はちらとも合わなかった。
藤堂を担いだ永倉が、脇目も振らず走り出す。原田が俺の腕を痛いほどに掴んで走り始めたので、視界は赤いまま、どこに行けばいいのかも分からずに連れられた。
永倉の後ろを走る。転々と続く赤い跡が、道しるべのように誘っている。
異様に走りづらいので足元を見やれば、肌にぴたりと着流しが張り付いていた。
原田の手が赤い。怪我をしたのだろうかとよくよく見ても、傷口は見当たらなかった。
春が笑う。散らない春が、笑う。やってしまったねと笑う。もう戻れないねと笑う。
殺してしまったねと、告げた。
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