02



 そもそもの出会いから俺には理解できないことばかりだった。

 大抵は、マスターとサーヴァントの出会いなんぞどれもこれも大差ない。触媒を用意したマスターあいつが、使役したいサーヴァントを召喚する。それだけだ。
 しかし今回は少し……いや、大分様子が違っていた。触媒もない、聖杯戦争もない、おまけに、俺を召喚したのは神崎本人ではなかったのだ。

「召喚成功だ――」

 そういってはしゃいでいた活発そうな少女と片目を隠した少女、その後ろで――こぼれそうなほど目を見開いて立ち尽くしていたのが、彼女だった。

「お願いがあります――その人を、私に下さい」

 そう、彼女が言い出したのは、人理がどうの、カルデアがなんだのという説明が終わった直後だったように思う。突然の申し出に、俺を含めそこに居合わせた全員がぱちくりと瞬きを繰り返した。

 しばしの沈黙の後、俺を召喚したであろう少女が「クーフーリンがそれでいいのなら」と俺に向き合い伺いを立てる。

「構わねぇよ、どうせやることは変わらねぇだろ?」

 断る理由も特になく俺はそれを快諾した。――思えばそれがすべての始まりだったのだ。



「はじめてだったんだよ、神崎さんがこうしたいって自分から言い出したの」

 藤丸立香のその一言に、俺は「まさか」と声を上げる。

「あのわがまま嬢ちゃんがか? 考えられねぇ」
「クーフーリンからしたらそうだろうね、神崎さん、貴方にはずいぶん甘えてるみたいだから」
「甘えてる、ねぇ……」

 今朝の彼女の様子を思い出し、俺は長い溜息を吐いた。当の本人は今頃会議室で真面目な仕事の話をしてる最中のはずで、そんなものに興味も関係もない俺は、こうして藤丸の荷物運びの手伝いなどを申し出ているところだった。

「頼りがいがあるもんね! ほら、私も今こうして甘えちゃってるし」
「これくらいならお安い御用だぜ」

 少女一人で運びきるには多すぎるであろう荷物を、片手で肩代わりしながらニッとほほ笑む。ある程度の女ならこれでイチコロ……とは言わないまでも、まぁ、頬を赤らめるくらいはしてくれるものだ。

「ありがと、助かる!」

 例に漏れずこの少女もそうで、見惚れる――まではいかなかったものの、少し照れたように頬を緩ませる。

 これが、例えばあのマスター相手だったらどうだったろうか。

(……ぜってぇこんな反応はしねぇんだろうよ)

 はぁ? と眉根を寄せるあいつの顔を思い浮かべて肩を落とす。全く俺のどこが気に入らないのか、彼女は一際俺に冷たく当たる節があった。そんな奴には俺の奥の手も通じず、なんなら心底軽蔑したかのような顔をされるのが関の山だろう。

「せめて嬢ちゃんみたいに可愛げがありゃ良いんだけどな」

 思わずそんな言葉が口を吐き、藤丸は苦笑をこぼしながら「そうかな」なんて首を傾げた。

「神崎さんは可愛いと思うよ」
「どこが」

 少女は考え込むような顔で「私から言うことではないけどさ」と前置きしてから、

「――多分、それに気づいてるから好きになったんでしょ? 神崎さんのこと」
「…………は」

 ――なんて、核心にも似た言葉を俺に投げかけた。




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