きみがいちばん



「ねぇランサーは、新しいサーヴァントを召喚するの、反対なの?」
「別に」

 ……と言った割には、彼は腑に落ちない、というような顔のまま私が操作する端末の画面を見続けていた。横から覗き込んでくるような体勢でいるので、さっきから触れるようにぶつかる肩が少し気になる。

 画面に表示されているのはスケジュール管理のアプリで、私はちょうど次に召喚を行う日取りの相談を持ちかけたところだった。

「だからやっぱり、スカサハさんとか……エレシュキガルちゃんなんかを召喚できればいいなと思うんだけど、同じ槍使いとしてはどう?」
「……あー、冥界の嬢ちゃんはしらねぇが、師匠なら確かに、戦力としちゃ申し分ないと思うが」

 そっか、と返事をしてまた端末の画面をいじる……が、どうにも彼の返事の歯切れが悪いのが気になる。

「……ランサー?」

 どうかしたのだろうか、と彼の方を見ると、面白くなさそうな彼と目があった。目が合う、ということは、今彼は端末ではなく私を見ていたということだろうか。なんなんだ一体。

「なんかあるなら、きくけど」
「あるといえばあるな」

 なら早く言って欲しい、意見が欲しくて私は相談しているんだから。
 そう思っていたら、

「……ランサークラスのサーヴァントは俺がいりゃ充分だろ。俺以外のランサー≠ェこれ以上必要かよ、なぁ、マスター」
「は……」

 ――そんなことを言われてしまった。

 しかも、少し機嫌が悪そうに、なんだか子供が駄々をこねる時のような……そう、拗ねているような、そんな顔で。

「……そ、そう、だね……必要ない、かも……?」
「だろぉ? ……ったく、これ以上俺の出番が減るのは勘弁だぜ」
「……あ! あぁ! そういう……」

 そうか、彼は自分が戦いに出る事が減ってしまうことを危惧していたのか。と、ほっと胸をなでおろす……うん? 私は何に緊張していたのだろうか。いや、緊張というか、さっきの彼がまるで、その、まだ見ぬ他のランサーに嫉妬しているみたいで……みたい、で、

「マスター?」
「っ! な、なんでもない!」

 慌てて彼から顔を背け、ちょっと自意識過剰過ぎる考えを頭の中から追い出した。危ない危ない、そんな少女漫画みたいな思考、早く忘れてしまえ。

「じゃあ、高火力のアーチャークラスのサーヴァント狙いで頑張ってみようかな」
「おう、そうしろそうしろ! 槍が必要な時は俺を呼べばいいんだからよ」
「……ふふ、うん、そうする」

 にっ、と笑った彼につられて私も笑った。そしてこの話は終わりというように次のレイシフトの話を始める。

(……別に、心配しなくたって、私の一番槍はいつだってランサー、あなたなのに)

 そんな恥ずかしいことを考えながら、隣りに座る彼の手をそっと握った。


 
「……ん? さっきの、師匠を呼ばれたくないから……とかじゃないよね?」
「ちっ……ちげぇよ……」




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