お前に加護を「ん」
「えっ……と」
差し出された紙袋を前に躊躇する。受け取るべきか、受け取らないべきか、ともかくこれを差し出した男、キャスターのクーフーリンが何を考えているかが私にはいまいちわからない。
「ホワイトデーだろ、今日」
「あ、あぁ」
そう言われて思い出す、そういえば今日は三月一四日だったか、最近は仕事が忙しくてよく覚えていなかった。
「だ、だけど私、貴方にチョコなんて……」
「あ? あー……いや、貰ったろ、俺が勝手に」
彼が言っているのはもしかして私が捨てようとしていたチョコを食べたことを言っているのだろうか。
「その時は確か代わりにお酒をくれたと思ったんだけど……」
「だがそれはランサーの俺にくれてやったんだろ?」
「う、うん……それはそう、だけど……」
「いーから受け取れって」
そう言われて、胸元にぐいと押し付けられて仕舞えば受け取るしかなく、ありがとう、と礼を言いながらその紙袋を両手で抱えるようにして持った。
「よし……ま、俺の用事はそれだけだ、じゃあな」
ふっ、と風が吹くようにして彼が私の目の前から消える。サーヴァントというのは不思議なものだ、魔術師ですらない私には何が起こったかまるで検討がつかない。
とりあえず、彼から貰った紙袋を確認しようと中を見ると、包装された箱が一つ入っているようだった。
「これは……チョコ?」
箱の中には数種類のチョコレートが並んで敷き詰められている。一つ摘んで口に放り込むと甘い味が広がった。
「……仕事中のコーヒーに合いそう」
箱を閉じて紙袋へもどす、と、紙袋にもう一つ、石のようなものが入っていることに気づいた。
「……これ、」
「お、いたいた、よぉ! 技術部の姉ちゃん!」
「!!」
今度、私を呼んだのはランサーの方のクー・フーリンだった。私は慌てて居住まいを正し、彼に向き直る。
「あ、あの、何か……!」
「おう、バレンタインに良い酒に付きあわせてもらったからな、それのお返しだ! ほれ」
差し出されたのは袋に入った色とりどりの可愛いお菓子、マカロンだ。
「わ、かわいい……」
「こういうのが喜ばれるって聞いたもんでな、アーチャーのやつに……ところでそれは?」
彼が私の持った石を指差す、私が「さっき、キャスターのクー・フーリンから貰ったものだけど……」と言って彼に差し出すと、興味深そうにそれを見つめた後、「ほーう?」と言って楽しげに笑った。
「そりゃルーン石か、ふぅん、あいつも過保護だねぇ」
「過保護……?」
「まぁ、お守りみたいなもんだ。キャスターの俺特製のな」
「……ケルトの、ドルイド、お、お手製の……」
持つ手が震えた。魔術師でない私でもわかる、それは多分、然るべき機関の人間がみれば卒倒するレベルで希少な品なのではないだろうか。
「ん、大切にしてやってくれよ」
彼に頭を撫でられて頬が熱くなる。……あぁ、もう、私のバカ。
(諦めなきゃって、思ってるのに)
それじゃあな、と去っていく彼の背中に小さく手を振って私も部屋に帰る。
貰った二つのプレゼントを、大切にその腕に抱きながら。
clap!
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