現在充電中につき ここはきっと獣の巣だ。だって私を抱きしめて眠るこの男は、まさに獣というに値するバーサーカーだもの。そんなことを考えながら、私の腰に回されている腕を優しく撫でる。後ろから私を抱いたままのクー・フーリン[オルタ]は、低く唸り声を上げ、それでも目は覚まさずまた静かな寝息を立て始めた。
「おい」
「あ、ミニクーちゃん」
ひょこりと小さなぬいぐるみが私の目の前に現れる。小さなオルタの姿をしたぬいぐるみ……もとい、ミニクーちゃんは、相も変わらずしかめ面で、手に持ったこれまた小さな槍で、彼の腕を突いていた。
「あ、こらこら、起きちゃうよ」
「別にいいだろ、起こせ。そろそろレイシフトの時間じゃねぇのか」
「うーん、でも今、充電£だから」
苦笑をこぼす私に、ミニクーちゃんは殊更にむすっとした顔をして、今度は私の手をその槍でツンツンとつつき始める。痛くはないがなんだかむず痒い、やめてやめて、と笑うと、彼はやはり面白くないという表情のまま、目の前にぽすんと座り込んだ。
「魔力供給か」
「うん、バーサーカーは魔力をたくさん消費するからね」
そっと振り向くと、眉間にシワを寄せたままの彼の寝顔がすぐそこにあって、なんだか少し照れてしまう。綺麗な顔が近くにあるのは、やっぱりその、慣れないものだ。
「だが、足りなくなるわけねーだろ、そもそも魔力はカルデアの電力で……」
「しー」
ミニクーちゃんの小さな口に人差し指を当てる。ふわふわのぬいぐるみ生地の柔らかさを指の先に感じながら、不満そうなミニクーちゃんをじっと見つめた。
「言っちゃダメ、そういうのは気づいてない方が良い時だってあるんだよ」
魔力が足りない、と私に言ったオルタの顔を思い出す、そんなの私から貰わなくたってカルデアから供給を受けられるだろうに、わざわざ私にそれを伝えに来た彼の表情を。
──それを愛おしく思ってしまう程度には、私は彼のことが大切なのだ。
それを伝えるのは少し、恥ずかしいけれど。
「甘いな、お前」
「違うよ、甘えてるの、私が」
オルタに触れられているのは嫌いじゃない、と、恥じらいを誤魔化すように微笑むと、ミニクーちゃんは「やれやれ」と私の方へ寄ってきた。
「なら俺もお前を甘やかしてやる」
ほのかな温かさを足元に感じ、ありがとう、と声をかける。返事はなかったが、どうやらそこで眠るつもりらしい。
「……嫌いじゃ、ないよ、こうしてるの」
誰に伝えるでもなく独り言を口にして、私も目を閉じる。
……本当は、彼は眠ってなんかいないってことにも、気づかないフリをしておこう。
clap!
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