親愛なる藤丸立香へ その小さな背中に、私たちは全てを託していた。
(…………神様……)
モニターに映る彼女の幼い横顔を前に、私は両の手を組み交わす。
──どうか、彼女が無事に帰ってこれますように。
無力な
大人にできることは、全てを尽くしてただ祈ることだけ。
特異点が発生するたびに、彼女がレイシフトするたびに、私たちは全てを彼女に押し付けて、安全なこの管制室でいるかもわからない神様とやらに必死に縋り付いている。
どうか、彼女が怪我などしませんように。
どうか、彼女に不幸が降り掛かりませんように。
どうか、彼女が笑顔でいられますように。
どうか、どうか、どうか──
──どうか、彼女が世界を救ってくれますように。
(……この無力感が、侘しさが、私の指を絡ませるのだ)
できることなら瞼を下ろしてしまいたい、暗闇の中で、神様とやらの姿を思い浮かべ、一心不乱に願いを乞いたい。
それをするわけにいかないのは、何もできない私たちにも、まだ少しくらいはしなければならないことが残っているからで。
「存在証明、観測できてる?」
「はい、問題ありません」
慌ただしくモニターと資料を見比べ、出来る程度のことを、一所懸命に果たしている。それが、私たちが最低限しなければならないことだから。
けれど、それでも、どうしても──彼女の傷みには届かなくて。
やはり最後は、この無為な祈りを、死に物狂いで捧げるしかないのだ。
(あぁ、神様──)
どうか彼女が、どうか、どうか──
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