「何よ、突然」
「うーん……だって、リツカちゃんのことは、子ジカって呼んでたから」
「貴女にはそんなの必要ないわ」
「そっか……ちょっと、寂しいな」
しゅん、と目に見えて落ち込む彼女を見て、なんだか胸がムカムカする。何故そんなに悲しげな顔をするんだろう、こいつは。
……本来であれば、
「……仕方ないわね! 少し考えてあげる」
そういうと、鏡越しの彼女がパアッと顔を輝かせた。単純なやつ。
子イヌと子ジカはもういるし、子ブタや子リスはなんだか違う。子グマでは強そうでムカつくし、子ネコもなんだか気にくわない。
そうやって考えて考えて考えて考えて……
「ぜんっぜん思いつかないじゃない! もう頭が痛いわ! なんであんたのために
がりがりと頭を掻き毟る
「なによ、あなたが欲しがったんじゃないの!」
「うん、そうだけど」
彼女の温かな手が
「エリザベートが私のために一生懸命考えてくれただけで嬉しいから、いいよ。……ふふ、エリザベートは優しいね」
「な……!」
そう言って、ピンク色の頬で微笑む彼女。それだけなのに、本当にそれだけなのに!
このままじゃ本当にドラゴンステーキにでもなっちゃいそうな
──なんて生意気なやつ、なんだかペースが乱されて、なんだかすっごく、むかつくやつ! ……だけど、
……今度ライブをする時は、最前列のチケット、取ってあげてもいいかもね?
なんて。