アルトリア(剣)
「マスター、貴女も今から食堂ですか?」
「アルトリア!」

 呼びかけに振り向けば、美しい金の髪を揺らしながら、にっこりと微笑むセイバー・アルトリアペンドラゴンの姿があった。同性の私から見ても思わず見惚れてしまうほど美しいその笑顔に、私は少し頬が熱くなるのを感じながら「う、うん、そうだよ」と返事をした。

「そうでしたか。では、どうか私にエスコートをさせてください、マスター」

 差し出された彼女の手に戸惑いながら、「まさか! アーサー王にそんなことしてもらうなんて恐れおおいよ」と両手を振って辞退を申し入れる。……本当は、ただ気恥ずかしいというのが、一番の理由だったのだけれど。

「確かに、私は一国の王でした。しかし今は貴女のサーヴァント、ですから……いえ、立場など関係なく、私が貴女をエスコートしたいのです」

 だめ、でしょうか? と寂しそうな顔をされてしまえば私は断るなど出来ず、「おねがい、します……」と震える手で彼女の綺麗な手を取った。

「ありがとうございます」

 ふ、と、咲いた可憐な花のような顔で微笑まれてしまえば、私はついに何も言う事ができなくなり、ただ黙って、騎士に手を引かれる姫のような心地で彼女について行くほかなかった。

(食堂に行くだけなのに、あまりにも贅沢な道案内だ)

 数歩前を歩く、何故だか少し得意げな彼女の横顔を見ながら、まぁ、こんな日があってもいいか。と私も微笑んだ。
 


「ところで、なんだかいつもよりご機嫌みたいだけど……」
「ええ、今日のご飯はアーチャー が会心の出来だと言っていたもので!」
「あぁ! なるほど……ふふ」