貴方とシオンの花言葉


Chapter.5


 彼が昏睡状態になって丸一日……私を詰めるスターフェイズさんの表情は、私が今まで見たこともない、冷酷なものだった。それも当然か、この事態は私が引き起こしたのだから。

「そんなくだらない理由で、クラウスに出所もわからないような薬を飲ませたのか」

 ライブラ結成以前からずっと彼の隣にいたスターフェイズさんからしてみれば、これは彼に害を成すだけではなく、彼の決意を疑うことに他ならない行為……その怒りももっともだ。

 ──それでも、私は、これで良かったのだと心の底からそう思っている。

「これで……クラウスさんはもう私を庇って傷つくことはなくなります」
「……! 君は、馬鹿か」
「ええ」

 憤り、呆れ、ほんの少しの同情──スターフェイズさんが握りしめた拳の行き所を失い、耐えるように唇を噛み締めていると、彼が、クラウスさんが、小さく声を上げるのが聞こえた。

「クラウス! 目が覚めたのか」
「あ、あぁ……私はいったい」

 状況が飲み込めず、辺りを見回す彼。昨日までと変わらない、愛おしい彼。いつだって私をまっすぐに見つめていた深緑の瞳と目があって、愛おしげに私の名前を呼んでくれていたその口から、彼の低くて優しい声が、私を呼ぶ。

「──きみ、は……?」

 頭でも痛むのだろう、彼は片手で顔を覆い、困惑した表情で私を見た。……スターフェイズさんは、そういうことか、と苦々しげな顔で深く息を吐く。

「…………はじめまして、ミスタ・ラインヘルツ──今日からライブラでお世話になります。よろしく、お願いします」

 私は、精一杯の笑顔で、握手を求めて彼に手を差し出した。


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