「だれが、主の霊を導き、その相談役となって主を教えたか。」

「……お前の話は大体わかった、そうだな、マスターとして契約したのは間桐桜、そして何らかの理由によりサーヴァントを使役しているのは間桐慎二といったところか……恐らくサーヴァントはライダーだな」
「なんで」
「簡単な事だ、現在判明しているサーヴァントを上げていけば、残るのはまだ召喚されていないセイバーと、ライダー、そしてアサシンくらいのものだが、アサシンクラスにその系統の魔術を使う者は少ないだろう」

 ならばライダーと判断するのが妥当であると、なるほどわかった。
 疑問に思った事を端から綺礼に質問をしていけば、つらつらとその答えを根拠付きで述べてくれる、流石監督役を任されるだけあるということか。
 ……しかしこの見下すような笑いはどうにかならないものか、「そんなこともわからないのか」と馬鹿にされているようでとても腹立たしい。

「十年も私から教えを受けていて、そんなこともわからないのか、まったく出来の悪い弟子には苦労させられる」
 ……馬鹿にされていた。くそ、本当に嫌味な人だ、近隣住民の方々は何を持ってこいつを善良で優しい神父さんなどと勘違いしているのか理解に苦しむ。

「手のかかる子のほうが可愛い、とも言うがな」

 そう言って私の頭を軽くなでた。

「……ぐ」

 悔しい、そんな事されたら私としては何も言えなくなってしまう。
 本当にこの神父はこう、人の気持ちを弄ぶのが好きというかもう趣味の域というか。
 十年間私や凛の面倒を見ているだけはある、私達が嫌がる事も喜ぶ事も、子供の頭を撫でる最適な強さとかも、よくわかっていらっしゃる。

「私、綺礼、嫌い」

 口先だけで精一杯の反抗を試みるが、彼は「そうか?」と笑って頭を撫で続けた。
 本当、最悪な神父、どうやったって敵わないんだと思い知らされてしまう。
 だってこれはこれで悔しいものの、撫でる手を止められたら止められたで少し寂しいのだから。

 ――扉を叩く音が聞こえる。

 この幸せな時間が終わってしまう予感に、少しだけ返事を躊躇した。

「……どうぞ」

 しかしこの部屋の主は私、仕方なく訪問者を招き入れる。扉が開きそこにいたのはランサーだった。
 いつの間に日が落ちていたのだろうか、窓から差し込む光は茜色で彼の髪がそれを反射しなんとも言えない不思議な色で光っている。

「……あのお嬢ちゃんが使役していたのは弓兵で間違いないみてぇだぜ」

 偵察を終えた彼からの報告に、目を伏せた。
 そうだろうと思った、そうでなければとも思った、
 しかしまぁ、どうしようもないのだろう。

「それと」

 すまねぇな、と彼が少し声を落とした。

「お前の言っていた、あいつ、
 ――エミヤシロウを、殺した」

 時が止まる。
 いや、それは錯覚だろう、時計の針の音は確かに耳に聞こえてくるのだから。
 いま、誰を、

「えみや、しろう」
「目撃した一般人、だったからな」

 そう、そうか、
 まぁ、仕方がない、
 それも、もしかしたらとは、思っていた。
 思って、

「そう……」

 目を、伏せた。
 仕方がないとはわかっていても、やはり少しだけ、さみしい、
 彼の住む武家屋敷を思い浮かべる。
 だれもいなくなったであろうその家に、かつての、家主の、気配を、探し、て、

「……あれっ」

 微力な魔力を、感知、して、
 それは、いつも、学校で出会う先輩の、
 
 
「…………生きてる……?」
○ ○ ○


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