「lonely」

 
 夢を見る
 
 
 彼の消えた世界の夢を、
 
 誰もいなくなった教会で、ひとり祈りを捧げる。

「それは嘘だろ」

 後ろから力強い言葉がきこえる、きこえない、

「誰もいなくなっちゃいねぇ」

 キラキラと光る青い髪が、視界にはいる、はいらない、

「お前はいつまであの神父の背中ばかり見てやがるんだ」

 綺麗な赤い瞳が、私を見る、見ない、
 誰もいなくなった教会で、ひとり祈りを捧げる。

「よく見ろ、お前が見上げてるソレは、もうマリア像なんかじゃねぇぞ」

 瓦礫が崩れる音がする、しない、
 私はひとり誰もいなくなった教会で、

「いなくなったのは一人だけだろ」

 その一人が、世界の全てだったろうに。
 そこにいる、いない、何か、人に、反論してみる。
 無駄なことだそんなこと、だって私は今ひとりなんだから

「いい加減前を見ろ」

 見ているさ、目の前のマリア様を見上げて、
 彼の背中を、追っているさ。

「おまえは……」

 きこえた/きこえない
 はいる/はいらない
 みる/みない
 する/しない
 いる/いない
 いる/いない
 いない/いない/いない

「いない」

 誰も、
 彼も、
 彼が、
 いない、から、
 この世界にも意味はないのだと、目を閉じた。

 醒めろ/覚めろ/冷めろ

 きっと夜が明ければいつもの通り、
 怖い夢だったと泣けるのだから。
 
 涙すら出ないこんな悲しみは忘れてしまおう。
 だから早く、早く、
 
 朝が、恋しい。
○ ○ ○


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