「主は彼をその病の床でささえられる。あなたは彼の病む時、その病をことごとくいやされる。」

「三十九度」

 体温計の数値に頭が痛くなる。なんてことだ、とんでもない高熱(当社比)じゃないか。
 昨日はそんなに魔力を行使しただろうか、いや、おそらくランサーが持っていったのだろう。

「今日は大人しく寝ておけ」

 寝たく無い、いやだ、と目で訴えてみたものの、彼にはそんなものは通じない。
 横たわる体に布団をかけられ、彼の大きな手が私の額に触れる。ひんやりとして、気持ちが良い。

「……ねむりたく、ない」

 言葉とは裏腹に、瞼がゆっくりと閉じ、開き、また閉じかける。
 いやだなぁ、さっき夢を見たばかりなのに。

「こわいゆめを、みるから」

 もう舌が上手く回らなくなってきた。そんな私を彼はじっと、見つめ、にっこりと、微笑む。

(あ、)

 それがまるで、愛おしいものを見つめるような瞳をしていたから。
 思わず、きれい、と呼びかけた唇を、彼のそれが塞いだ。

「ゆっくり眠れ、今日はお前の側にいてやろう」

 優しい言葉を聞きながら、嘘じゃないよね、約束だよ、と、ほとんど閉じかかっていた目に合わせて意識を手放した。
○ ○ ○


clap!


prev back  next




top