「Funeral of the poisoned」

 夢を見た。
 
 ――夢を、見てしまった。
 
 雨の降る日だった。
 参列者は皆、暗い顔をしながら棺を囲んでいた。
 彼は生前、とても皆に親しまれる聖職者であったから、幾人かの信者達がさめざめと泣きながら歩いていた。喪主の私は、涙ひとつ流すこともできず彼の箱を眺めている。
 教会裏の墓地で、彼のお墓を前に聖書を読み上げ、目の前の石に書かれた彼の名前を指でなぞった。
 この葬儀の神父役は私、
 この葬儀の喪主役も私、
 そして誰も座るはずのない遺族の席に、遠坂凛と、衛宮士郎が、鎮座している。
 振り返れば、時折二人の顔が少し歪んでいるらしい事がわかった。
 悔しいのか、悲しいのか、苦しいのか、よくわからない顔で、私と私の眼の前にある彼の墓標を見つめている。

「俺には最後まで見届ける義務がある」

 などと、

「私には最後まで見届ける義務がある」

 などと、
 よくわからない義務感と責任感によって、この場に彼等は訪れている。

 つくづく、つくづく、つくづく――腹の立つことだ。

 お前が彼を追い詰めたくせに、
 お前が彼を殺したくせに、
 お前等は、彼を認めなかったくせに、

 ……知らず力が入っていたのか、手に持った聖書のページがくしゃりと音を立てて紙くずになる。
 あと残り数ページが終われば、この無意味な時間が終わる。
 終わったところでまだ、次は訪れるのだけれど。

(私の時は止まっているのに)

 でも、

(大丈夫)

 もうすぐすべて消えていくのだから。
 ――今日のパンは、特別なパン、
 皆が愛する彼の泥、
 泥の混ざった白いパン、
 きっと彼等は食べてくれる、
 一般人も巻き込むような事はしまいと、
 無差別に人が死ぬような事を私はしまいと、そう思っている彼等なら。

 赤いぶどう酒は彼の血の色。
 白いパンは彼の肉。
 待っていてね綺礼、私ももうすぐ、そこへ行くから――
○ ○ ○


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