「fate is」


 夢を見る
 
 長い階段を駆け上がると、散々争ったであろう痕跡が柳洞寺の至る所に見えた。それを気にとめることもなく、ただ、ただ走る。
 生きている人の気配は、ない、どこにも、
 ただあるのは巨大な魔力の痕跡と、私一人の呼吸音だけ。

 寺の裏手に回り、ようやく誰かの気配を感じる。
 弱々しくも続くそれは、

「……エミヤ、シロウ」

 この聖杯戦争の勝者の物、

 名を呼ばれた男が振り返り、何事かを呟いている。
 そんなのはどうだっていいことだ、
 どうだっていいことなので、放っておく。
 それよりも走って、走って、
 彼の足元に転がるそれに駆け寄った。

 ――言峰綺礼、その人に

「―――っ綺礼!」

 彼の冷たい――冷たくなった手を握りしめる、見開かれた目を覗き込み、必死に呼びかける。

「綺礼、きれい……!」

 返事はない。
 代わりに、すぐ側で足音がきこえた、男が、言峰綺礼を殺したであろう男が、また何か言っている。

 知らない、
 きこえない、
 関係ない、
 もうどこかへ行ってくれ――!

 彼の手を離し、その手で耳を塞ぎ、目を閉じる。
 動かない彼も、彼を殺した男の声も、何もかも忘れてしまいたかった、だが、
 男の声が、きこえた。
 
 
 
 ――言峰は、死んだんだ。
 
 
 
 瞬間、激情に駆られた私は、手元にあった、剣で、男を、
○ ○ ○


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