「anti dream」
夢を見ている
夢を……これは夢だろうか、
「夢じゃないかもね」
最近聴いた覚えのある声がして、そちらへ視線を向ける。そこには私と同じ姿をした何かがカラカラと笑っていた。
「……アンリマユ」
「はい正解」
カラカラケタケタと、笑いながらふわふわと漂っているソレは、私が取り込んだアンリマユそのものらしい、なるほど、形がないが故に私の姿を借りているのか。
「その通り、中々どうして動きやすいね」
話し方も私に準じるものになっている。自分と同じものがそこにいるというのは中々どうして気持ちが悪い。
「そういわないでよ、それにしてもまぁ、とんだ無茶をしたね」
彼女の指が私の心臓を指差す。
「……止まっちゃった」
ドクン、とないはずの心臓が鳴るようなそんな衝撃を受けた。
が、彼女の言っていることはどうやらその通りのようで、私の左胸からはどんな音も聞こえない。
「あーあ、同調したばっかりであんなことするから」
あんなこと、というのは綺礼に魔力を無理矢理譲渡したことだろうか、そもそも私はそれを第一目的として動いていたのだ、仕方のないことだ。
「それにしたって死者の蘇生だなんて、聖杯でもなければそんなこと……あぁ、君はもう聖杯なんだったね?」
カラカラと、ケタケタと私の顔が笑っている。
……なんとなく不愉快だ。
「でもそうだね、君のあの行動は予想外だったけど…聖杯を取り込んでいるおかげで、君はまだ生きてる」
胸のあたりに手を当てる。
そこにもう鼓動のようなものは感じられないが、彼女のいう通りならきっと、私もここに聖杯の泥が詰まっているのだろう。
綺礼と、同じように、
……綺礼は? 綺礼はどうなったのだろうか。
確かに私は聖杯に彼の生存を願った。
だが私はその願いが聞き届けられたのかを確認する前に倒れてしまったのではないか。
「ふふ、気になる?」
当たり前だ、私は俯いていた顔を上げ、彼女を睨みつけた。
「そう、それなら自分で確かめて見なよ、ほら、もうお目覚めの時間だ」
まって、もう少し聞きたいことがある、私は、
「あはは、時間切れ! せいぜい幸せな日々を過ごしてよね? 私は君の中でそれを心待ちにしているよ……それが契約、だからね」
彼女の声が遠のく、もうすぐ私の意識が覚めるのだろう、
あぁ、夢が、終わってしまう――
○ ○ ○
clap!
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