「Unlimited fire」


 夢を見ている
 
 
 燃え盛る炎の中を走って走って走って走って、
 走って――辿り着いた。

「どうして……!」

 その先で、倒れる黒衣と、消えゆく一人の槍兵が見える。
 途中で赤いコートの少女とすれ違った気がしたが、気のせいだ、
 知らない、彼女が何をしていたかも、何を伝えようとしていたのかも、
 知らない、知りたくもない。

 半分以上が消えかかった体で槍兵がこちらを見て笑い、

 ――あんたにゃ、悪いことをしちまったな、

 なんて、本当に申し訳なさそうな顔をして消えていった。
 ……その傍らに、彼が、倒れている。

「き、れい」

 炎が彼のカソックに燃え移り、今にも彼を焼いてしまいそうなほど燃え広がっていた。

「ぁ」

 それをどうにか食い止めようと、必死に手で火をつかむ、手のひらの焼けるような感覚がして、思わず悲鳴が漏れた。

「っぐ、あ、きれ、い」

 必死に、必死に、彼にまとわりつく火を全て消し止めて、彼の名を呼ぶ。
 何度も、何度も、
 しかし、今回も#゙からの返事はなかった。
「いやだ、いや、だよ……」
 こんな結末は認められない、
 私が選んだ終わりはコレではない、
「いやだ……綺礼……っ!」
 彼の遺体に縋り付いた時、一際大きな炎が上がり、
 私と、彼を、呑み込んだ。
 
 
 
 
 
 
 そして、また、悪夢は終わった。  
○ ○ ○


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