15章「暗殺者」


「……そういうわけだマスター、すまねぇな、しくじっちまった」
「そ、捕らえていたはずのバーサーカーの気配が消えたと思ったらそういうことだったの」

 サーヴァントというのは便利なもんだ、密書や合図なんかを使わなくても思念だけで情報のやり取りが出来るとは。

「それで今は?」
「あぁ、適当な女子生徒の顔を借りて一時撤退中、あんたは?」

 まだちらほらと残っている生徒の間を足早に歩いていく。どうやらあいつらと話し込んでいる間に陽は傾き始めていたらしい、すれ違うのはみな部活動や委員会に勤しむ者ばかりだ。

「あたしはもうすぐそっちに着くよ、合流してから次の手を考えようか」
「学校からしたら部外者だろ? あんた」
「ま、清掃員なり事務員なりがいるだろ? そういう、目立たないモブ・・ってやつが」
「へぇ」

 流石は俺のマスターになるだけある。変装・潜入はお手の物、という事らしい。

「だけど合流はオススメしないぜ? せっかくアサシンを呼んだんだ、遠くから高みの見物決め込んだ方が」

「だってそれじゃスリルがないでしょ」

 ……あぁ、まただ。

「……わかったよ、それまで適当な場所に隠れておくさ」

 俺の忠告が聞き届けられなかったのはこれで二度目だ。
 一度目はバーサーカーのマスターの家へ忍び込んだ時。奴をすぐに殺してしまえばよかったのに「それでは面白くない」と一日俺にバーサーカーの振りをさせた。

(そのツケがこれだ)

 マスターは少々スリルやギャンブル性を求めすぎる節がある。

 ――危険だ。

「だがなマスター、主君は忠臣の進言をきくべきだと俺は思うがね」

「? うん、次からは善処しようアサシン」

 その言葉、違えるなよ? と念押しして、校舎の隅にある教室へ入った。人混みに紛れた方が安全といえば安全だが、この顔の知り合いにでも出会ってしまうと面倒なのでここでマスターを待つことにする。
 程なくして彼女が現れた、目立つであろう深緑の髪を一つにまとめ、いかにも事務員ですというような格好で。

「こんにちは」
「えぇ、こんにちは」

 にっこりと、何処にでもいる普通の生徒と普通の職員のような挨拶を交わす。さて、ここからどうするか、と彼女に歩み寄った。その時、

「放て――――!」

 窓ガラスが、割れた。



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