8章「女王閉幕」
「っはぁ、はぁ、」
息が切れる、マスターの──岩清水からの魔力供給が途絶えてどれくらい経ったのだろうか。私よりも息も絶え絶えと言った様子の彼を腕に抱く。
「……っう、メ、ヴちゃん」
「マスター……」
クーちゃんの槍は急所を外れているようだが、肩を深く貫通している。このままでは大量出血の後に命を落とすだろう。
(それを食い止めるには、クーちゃんを倒すしか)
『
抉り穿つ鏖殺の槍』の効果は痛いほどよく知っている。彼が消滅するか、あの槍が折れるまでロクな回復は見込めないだろう。
「メイ、ヴちゃ……ん、そんな顔、しないで下さい」
手が、私の頬へ伸びる。
「……何よ、そんなナリのくせに私の心配するなんて」
馬鹿な人、と、その手に自分の手を重ねた。
「初めからそうね、貴方、私の宝具にかかってなんかいないくせに」
召喚されてすぐの私は、魅了の魔術なんか使っていなかった。それでも貴方は、私を見て、あんなにも瞳を輝かせて、
「……私、本当に貴方のこと、好きよ? もちろん、クーちゃんほどじゃないけど」
気前よく、嫉妬せず、恐れを知らない貴方。
子供をあやすように優しく彼を抱きしめる。
「大丈夫よ、私がなんとかしてあげる、マスター、」
……トスン、と彼の胸に何かが刺さる、これはなんだ、と認識すると同時に、それが自分の胸を貫通して#゙を貫いたのだと理解する。
「ま、さか、」
これには見覚えがある、あぁ、まさか貴女まで召喚されていたなんて、
「マ、スター、」
あぁ、愛おしいマスター、貴方に仕えるのは退屈ではなかったわ。
本当に、本当よ、マスター。
ここに召喚された私が消える最期の瞬間、私は彼の唇に口付けを残した──
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