Long Story|Short Story|AnecdoteStraniero −異邦人−
2.
アルイサ、と耳元で囁かれて、繋がったところの奥がカッ、と熱くなる気がした。
「ん……テオ……っも、無理、」
「無理ということは、えー、まだ大丈夫ですか?」
「だ、めだって……! も、ぅ……は、あッ! ン、はぁ、ンッ!」
回すように腰を揺らして、テオのものが僕の奥深くを突く。頭の中がチカチカ光って、僕は声を我慢できなかった。高くて、みっともなくて、恥ずかしい声。
「アルイサの声、可愛い」
「はっ、あ、あ、あぅ、ン……っ、だ、め、だめ、そこ、……あ、やだっ……!」
同じところを何度も擦られて、その度に何かが押し寄せてくる。自分が自分じゃなくなりそうで怖くて、絡めたテオの手をぎゅっと握り締めた。
「アルイサは嘘つきです。ここが好い、悪い、えー、どっちですか?」
「ひ、っい、……言わせ、んな……っ、」
されてることが嬉しくて、嬉しいのを知られるのが恥ずかしいのに、テオは子供みたいな目で無邪気にそんなことを聞いてくる。そんなの、答えられるわけないだろ!
ぐちゅ、と精液が粘る音が耳を犯す。もう何度もテオのを中に注がれて、溢れ出した体液が太腿を伝っていく。その感触にまでゾクゾクと鳥肌が立つ。
「は、ぁ……ッ、……テオッ、う、ふっ……ン、」
「アルイサの顔、身体……きれい、可愛い。大好き……」
「ン……、ふ、ンむ……、」
テオはキスが上手だ。がっぷり食まれて、熱い舌を入れられると、呼吸は苦しいのに気持ち好くて僕の身体はふっと緊張が解ける。
「……僕の顔、好きなんて変わってるよ」
「どうしてですか?」
「どう見たって地味顔だろ」
2人で街を歩けば、テオはよくモデルのスカウトの声が掛かった。「お友達はちょっと待ってて」のお友達、は僕だ。満更でもなさそうなテオがまた腹立つから、強引に腕を引いてしまう。
「ジミ?」
「イタリア語で何て言うんだ? ん……、単純な顔の作り……英語なら、シンプル?」
「Semplice(センプリチェ / シンプル)?」
「ひゃあッ!」
僕の話を笑いながら、テオが不意打ちで奥に入ってきて、僕は大きな声を出してしまった。
「は、ぁ……ふか、っ……、テオ、……苦し、よ……っ」
「もっと近づきたいです。アルイサと、ぃとつになりたい」
もうなってるじゃないか。テオのせいで僕はこんなにぐずぐずなのに、全然伝わってないみたいに言われて少し苛立つ。
「……テオ、は好く、ないの……?」
「気持ち好いです。アルイサ、熱い……狭い、上手」
早い、安い、旨いみたいに言われて、思わず吹き出してしまう。
「えー、僕は間違いました?」
「もうちょっと日本語、覚えないとね」
テオはキョロっと目を回して笑った。
それから赤ん坊みたいに僕の乳首にしゃぶりつく。僕がテオの癖毛をかき混ぜるように抱き込むと、テオの大きな手は僕のを優しく包み込み、ゆっくりと扱いた。
「あ、……は、ぁ……ッ、ン、」
舌で転がされ、唇で甘噛みされて。僕はテオとセックスするまで、男も乳首で感じるなんて知らなかった。……というより、女の子とのセックスを知らないままこんなことになってしまっているんだけど。
そのことに時々悩んだり、落ち込んだりもするけど、テオの愛撫は優しくて、こんなに愛情溢れるセックスが他にあるのか? なんて疑ってしまう。
「アルイサ、可愛い……」
「テオ、……ねぇ、もう……僕さ、」
限界なんだけど。イタリア人てみんなこうなのか? 絶倫? どんだけ精力あり余ってんの? 僕はもう精根尽き果てて、テオの手技でもっても勃ちそうにない。
それなのにテオを受け入れたところだけがまだ、彼の期待に応えようと頑張っていてきゅんと切なくなる。甘い痛みを感じるほどの快感に、僕はくっと喉を締めた。
「は、……っ、も、イ、てくんないかな……っ、」
「イく? どこへですか?」
クソ、その日本語は知ってるクセに、嫌なヤツ。僕はじととテオのニヤニヤとした顔を睨む。
「だ、からっ……早く、僕のな、か……」
「えー?」
「テオので……いっぱいにして、よ……、」
顔から火が出そうだ。僕は両手で顔を覆った。上から振ってくる笑い声を恨めしく思っていると、手首を捕まれぱっと開かれる。目の前にテオの、きれいな顔。
「Ho capito.(オゥカピート / 了解しました) 」
「は、ぁッ!」
ズル、と腰を引かれて息が詰まる。もう全然力の入らない僕は、腰ごと持っていかれてしまった。テオは僕の腰に手を添えると、もう1度丁寧にやり直す。ゆっくり引くと、テオのペニスが僕の中からぬっと姿を見せた。
でんぐり返しの途中みたいな格好になった僕は、まざまざとそれを見せられて、恥ずかしいというより妙に感心したような気持ちになった。今、本当にテオと僕の身体、ここで繋がってるんだ……。
赤黒い肉棒はぬるぬると光って、筋が浮いている。グロいなと思うのに、僕はゴクンと唾を飲み込んだ。これが、僕の中に入って──。
想像よりも先に、テオの腰が動く。
「あっ、ぎぃ……ッ!」
ズン、と奥まで一気に突かれて、僕はその瞬間に達していた。背が震える。頭は真っ白だ。目の奥がチカチカして、口の端から涎が出た。
「ひぇ、オ……ッ」
「アルイサ……、好きです、アルイサ」
薄く目を開けると、テオの苦しそうに歪んだ顔があった。苦しそう、だけど……すごく欲情した顔。ちゃんと、テオも気持ち好くなってくれてるのかな。……だといいけど。
「ん、ンっ……ふぅっ、ぁンっ、ンっ! はあ、ンぅっ」
「アルイサ、アルイサ……、」
「あ、ぁ──ッ、やッ、いやぁンっ! あンっあッ、……あ! ふぅっもっ、……めっ、」
ガツガツとテオが律動する。恥ずかしいのに、声を我慢できなかった。
「め、だめ、……も、い、てぅ……、イってぅ、からぁ……っ!」
快感のあまり、僕は泣いていた。達したまま好いところを何度も突き上げられて、テオのものを締めつけてしまう。奥を強く抉られて失神しそうになった瞬間、僕の中に熱いものが溢れた。テオの身体が僕の身体に伸し掛かってくる。重い、けど……可愛い。
その後も僕はテオと繋がったまま、甘い疼きに抱かれながら眠った。
テオは電子辞書を片手に、自分の首を締めるジェスチャーをしながら言う。
「えー、アルイサの中は、柔らかいです。そして、僕を苦しめます」
「もう、やめろったら! 終わった後にそういうこと言うの、マナー違反だろ!」
僕は枕でテオの頭を乱暴に叩く。
「痛い、痛いですよアルイサ」
テオの長い腕が伸びてきて、僕の手首を掴む。そのまま強い力で引かれて、ベッドに倒れ込んだ。
「テオの馬鹿……、もう、しばらくお前とセックスしないから」
頬を膨らませると、指先で突かれる。ぶ、と息を吐き出すと、テオが笑った。
「アルイサは可愛い、きれい。大好きです」
「そればっかりだな。未だに僕の名前もちゃんと発音できないし……は、る、ひ、さ!」
「アルイサ」
「ノー! まったく……もっと日本語覚えて、イタリア人らしく雄弁に僕を口説いてみろよ」
最後の方はほとんどボヤキだ。
シーツの海に突っ伏す僕に、テオがにじり寄る。くい、と顎を掴むと、テオは僕にキスをした。
「人を愛する理由は、おおよそ単純なものです。僕は単純なアルイサを愛します」
おい、その言い草はあんまりだろ。
とは言え、好きだの愛だのと軽率に飛び出すヘタクソな日本語に絆されてしまう僕は、やっぱり単純なヤツなのかもしれない。
2016/10/16
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