Long StoryShort StoryAnecdote

7days【完結】


2.火曜日

 男の腿の上に座らされた岬は、尻に硬い膨らみを感じて身を強張らせた。
 高校受験を控える年の少年に、こんな子供じみた格好を強いるのは、火曜日の家庭教師、灰原(はいばら)だった。この家に出入りする教師の中では最も古株だ。
 国語の指導をする灰原は、学習机の椅子にかけるとその上に岬を座らせ、教科書の音読をさせる。そして誤読するとキスを強いた。
「んっ……」
「岬はキスが好きだなぁ。キスして欲しくて、わざと間違えるんだろ?」
 灰原は微笑し、竦められた岬の首筋を舐めた。
 腰に回していた腕を解き、岬の股間へと伸ばす。衣服の上から幼い性器を握られると、岬は手にしていた教科書を取り落とした。
「雄くん、やめて……!」
 灰原は、爽やかで人懐こい好青年風の学生だった。幼い頃から仕事で忙しい両親に構われなかった岬は、この青年の親しさが嬉しく、「先生呼びは堅苦しいからやめて欲しい」という灰原の希望に応じて、名前の雄大(ゆうだい)から「雄くん」と呼んだ。
 しかし、いつからだろう──親しさの領域に、歪みが生じてしまったのは?
「うーそ、岬のここビクビク反応してるよ? もう自分でオナニーもするんだろ」
「くぅ、ン……っ」
「ほら、もう大きくなってきた。可愛い顔してたって、岬も男の子なんだねー」
 楽しそうに言いながら、灰原は岬のズボンのファスナーを下ろすと下着の上から性器を扱き始めた。隔てる布が薄くなり、刺激はさらに直接的になる。
 抗おうとした両手は、灰原のもう一方の手で難なく抑え込まれた。岬の両足首は灰原の足が絡んで、強引に開かされていく。
「や、あ、やめッ……さわ、ないで……、やぁッ」
「触って、だろ? ほら……濡れてきてる」
 布と擦れた部分から、くちゅくちゅという淫らな音が聞こえてきて、岬は大きな耳を真っ赤にして俯いた。
 自慰ですら、終わった後の虚脱感と罪悪感が嫌で馴染めないのに──なのに、他人の手で高められると何故こんなにも興奮してしまうのだろう。
「はっ、あ、あ、だめ……っ、イ、ちゃ……っ」
「いいぜ、俺の手でイけよ」
 言うと、男の手は岬の腿を撫でながら下着の裾を割って侵入し、直接岬の性器に触れた。陰茎を扱きながら巧みに陰嚢も揉みしだかれ、岬は机に胸をつけるように前屈みになると、自ら男の手に擦りつけるように腰を揺すった。
「やぁッ……は、は、はぁ、ぁ、あッ──!」
 細い身体が、灰原の上で震える。岬は、灰原の手の中に勢いよく射精していた。
 虚脱した身体を抱き起こし、灰原は岬のこめかみにくちづける。
「あ……は……、」
「あーらら、本当に出しちゃった。先生の手をザーメンで汚すなんて、悪い子だねぇ」
 下着から取り出した灰原の手は、白い粘液でドロリと濡れていた。指先を弄ばせると、太い手首の方までトロトロと伝っていく。
 岬は自分のしたことが信じられないとでも言うように目を見開き、それから羞恥に顔を染めた。
「……っ、ごめ、なさ……っ」
「舐めて、」
「……え?」
「岬が汚したんだから、ちゃんと舐めて、きれいにしてよ」
 灰原は後ろから羽交い締めにするように腕を回すと、もはや肘のあたりまで伝った精液を示した。
「早くしないと、カーペット汚しちゃうだろ?」
 岬はきゅっと口を引き締めると、恐る恐る顎を反らし、掲げられた男の肘に舌を伸ばした。赤い舌が探るようにヒクつきながら、男の尖った肘に触れる。
 灰原はその瞬間に岬の首筋を掴むと、無理矢理腕に押しつけた。
「ぐんッ!? んッ──」
 そのまま腕を滑らせ、ドロドロの手の平で岬の口を塞いだ。驚き目を見開く岬の口内に、精液が押し込まれる。もちろん、頬や顎、鼻にも精液は飛び散った。
「どうだ? 自分のザーメンの味は?」
「ぶふッ……ぅ、ふ……ッ!」
 ぐほ、と咽きながらも、岬は口内に自分の精液を溜めて喉を締めた。フゥフゥと鼻で息をしていると、鼻先を摘まれる。
「飲んで」
「ん……ん、ふぅ……ッ」
 岬は涙を流しながらいやいやと首を振ったが、灰原は微笑むばかりで手を離してはくれなかった。息苦しさに負けた岬は、2度目の覚悟を決めるためにきゅっと目を閉じた。
 ごくん、と発達途中の喉仏が動く。
「よくできました」
 灰原が足を解放すると、岬は灰原の腿から滑り落ちるようにして学習机の下に膝をついた。
「ふ、ぅ……ッ、」
 どうして、こんな目に──岬はシャツの袖で精液や涙を拭いながら問う。
 昨日、明石に弄ばれた乳首もまだ違和感が残っている。朝になっても腫れは引かず、体育の授業は休んでしまった。とてもではないが水泳の授業なんて受けられない。
 それどころか、夏の薄手のシャツは胸の膨らみを誤魔化せなかった。下着が透けるのを気にする女子生徒のように、岬はシャツの上にベストを着なければならなかった。
 衣服が擦れる度に身体がムズムズと疼いて、学校にいる間に何度もトイレに行かなければならなかった。
 自分の身体がこんなにもいやらしかったなんて──泣きくれる岬の髪に、灰原の手が触れる。
 以前は、彼に頭を撫でられるのが好きだった。家に来る学生達の中でも、灰原は特に岬を可愛がってくれた。それなのに……何週間か前から生じた違和感に気づいた時、彼に訴えていたらやめてくれたのだろうか? 拒絶できなかった自分が悪いのか?
 岬の結論はいつも、自責に終わる。
「岬、いつまでも泣いてないで」
 撫でる手に促されるように顔を上げて、岬は目の前に広がる光景にポカンと口を開けた。
 灰原は、自分のパンツを寛げ、性器を露出させていた。足首まで衣服を落としてしまうと、椅子に浅くかけ直す。
「今度は俺を気持ち好くしてよ。俺のチンコ、しゃぶって」
「──そんな、こと……できません、」
「あれ、何で急に敬語? もしかして俺のこと怖くなっちゃった?」
 悪びれもせずに言う男を、岬はもう親しげには呼べなかった。こんな人、知らない──ざわつく胸に渦巻くのは、恐怖だった。
「そんな顔されたら傷つくじゃん、」
「い、やッ……いやだ! 離してッ!」
 後頭部を抑え込まれ、腕を引かれる。無理矢理引きずり起こされると、眼前に男の性器が迫り、岬はひっ、と小さく叫んだ。
「デカくてビックリした? 岬の可愛いのとは全然違うもんね。でも岬がしゃぶってくれたらもっとデカくなるんだぜ」
「やだ、おねが……、せんせ、やめて、僕……僕が、悪いの……?」
 岬の必死の問いに、灰原は一瞬きょとんとし、それから声を立てて笑った。
「本当にさぁ、岬って可愛いよね」
「か……?」
「可愛いんだよ。だからいけないんじゃない? その黒目がちの目なんか、男を誘ってるよ」
「違う……違、ます……っ、僕はこんな、」
「したくないって? でも岬、俺が前に抱き締めた時は嫌がらなかっただろ?」
「それは……」
 妙だとは思った。けれど、定期テストで学年の最高点を取って舞い上がっていて、あの抱擁も灰原なりの褒め方だと思ったのだ。
 押し黙る岬に、灰原は再びクス、と笑う。
「岬は相手を勘違いさせる天才かもね。俺だけがそうなら俺が悪いかもしれないけど……その様子じゃ、他の男もたらし込んでるんじゃないの?」
 灰原の指摘に、ギクン、と心臓が跳ねる。一瞬にして複数人の男の顔が脳裏に浮かび、岬はさっと顔色を失くす。
「そんな──、僕が──悪い……?」
「かもね。ま、今はまず俺の責任を取ってよ……小悪魔さん?」
 頬に性器を押し当てられても、岬はぐるぐると回る思考に気を取られて反応できなかった。顎を取られ、乱暴に性器を口に押し込まれる。
「んぐッ」
「わ、やっぱ口小せぇなー。顔が小さいもんな、岬は。ほら、もっともっと、喉の奥まで……可愛いよ、岬」
「ふぐ、うッ……!」
「よし、ほら、いいか、歯を立てるなよ」
 灰原は岬の頭をがっしりと両手で掴むと、激しく前後させた。すごい速さで口内に出し挿れされる男性器に、岬は呻きながらもされるがままだ。
「ふぅむっ、う、うン……!」
 ぐぼ、ぐぼ、と口内か、頭の中かよくわからないところですごい音がする。喉の奥を突かれる度に吐き気が込み上げて、突き出した舌は男の性器に擦られる。
「ああ、すげ、すげぇ好い……っ! 岬の口ん中、すげ、熱くて……好いッ」
 灰原が快感を得るためだけの行為。岬が苦しむ様も、きっとこの男の興奮を高めているのだろう。
 それがわかっていても、岬は眉間に皺を寄せ、頬を涙でびちょびちょに濡らしながら、頭を揺さぶられることしかできなかった。
「よし、口の中、出すからな……飲めよ……ッ!」
「ふっ!? ん、んぐ……ッ! んン──ッ!!」
 喉の奥に、ビュルビュルと粘ついた熱い液体が注ぎ込まれる。男の陰毛に顔を埋めるようにしていた岬は息もできず、男が望む通りほとんど自動的に精液を嚥下していた。
 細い喉がコク、コク、と動くのを、灰原は首を締め上げるように親指で触れて確かめる。
「ああ、偉い……よくできたな、岬」
「ぶ、ふっ……、はぁ、う、ぇ……えっ……ぁ、」
 灰原はぺたりと床に座り込んだ岬の肩を掴むと、ぎゅっと抱き締めた。
「偉い、偉い。本当によくできた生徒だよ、お前は」
「あ、はぁ、はっ……」
 口の中が生臭い。舌も唇もヒリヒリする。けれど岬は、役目を終えたことに安堵していた。
 狭い部屋には、男の精液の匂いが充満していた。

2016/11/24


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