Long StoryShort StoryAnecdote

7days【完結】


3.水曜日

「い、たい……っ」
 岬の両手は、ピアノの鍵盤蓋に挟まれていた。鍵盤のカバーを外そうとしたところで、志水(しみず)が蓋を勢いよく閉めたのだ。
 志水はそのまま後ろから岬を押さえつけると、大きな手で岬の尻をねっとりと撫でた。さらに、後ろから手を回すと岬のベルトを外し、ズボンと下着を脱がせた。
 下半身がエアコンの冷気に晒され、鳥肌が立つ。反対に、岬の顔は羞恥で熱くなった。いつものように指揮棒で打たれた方がよほどましだ。
 志水の手がピアノから離れても逃げ出さなかったのは、言うことを聞かないともっと痛い目を見る、と脅されたからだ。この男なら言葉通りのことをする、そう思うと身動ぎもできない。
「い、たぃ……です、先生……もうやめて……ッ」
 岬がぎゅっと目を閉じると、目尻から一筋、涙が流れる。
 痛みを訴えているのは、手ではなかった。
 志水の長い指を強引に受け入れさせられた後孔が、ジリジリとひりつく。
「ちゃんと俺を見ろ、藤島」
 サディスティックな響きを持つ低い声が言う。岬が恐る恐る目を開け振り仰ぐと、涙で歪む視界に志水の微笑が映った。
 初めて会った時から、岬はこの男が苦手だった。整った顔をしているが、切れ長の目や薄い唇は冷淡な印象で、実際、その印象を裏切らず、志水のピアノの指導は厳しかった。運指やリズムを誤れば、指揮棒が容赦なく岬の手の甲を打った。
「お前、いつも物欲しそうに俺のことを見てただろ」
 岬ははらはらと泣きながらも唇を噛んで答えない。ただ言いつけを守って、重い蓋の下敷きになっている。
 志水の手は岬のシャツを開くと、平らな胸をベタベタと触った。乳首はまだ少し腫れている。
「おや……乳首をこんなにして……お前、変態か? 自分で弄ってんのかよ」
「ちが……、」
「どうだか……反応してんじゃん」
「はっ……ぁ、」
 志水の指摘通り、指先で乳首を捏ねられると、指を食んだ内壁は収縮し、細い腰は淫猥に揺れる。明石にしつこく与えられた愛撫のせいだ。一緒にペニスを慰めて欲しくて、身体が勝手に反応する。
 嫌、なのに。岬は居た堪れなさに真っ赤になって俯く。歪んだ自身の顔が、光沢のある黒いピアノに映り込んでいた。
「じゃあ、こっちはどうだ?」
 一瞬、男の手が離れて岬は安堵する。しかし、今度は濡れたものが尻に触れて、ひっ、と飛び跳ねた。
「な、いやっ……、なに、」
「ローション、つけないとさすがにキツいだろ」
「な……っ!? い、や、いや、何し、て……、やだッ……!」
 志水の指がさらにもう1本突き込まれ、ぐずぐずと入口を擦る。ぐぱ、と中で指を広げられる感覚に、膝から力が抜けそうになる。後ろから腰を抱かれて、指の動きはますます激しくなった。
「あぅ、あっ……、あ、あはぁ、あンっ」
「もう2本も入ってる……エロい身体だな」
「あっン、は、……はっ、あはぁ……っ」
 ぐぷ、ぐぷ、と指が押し入り、喘ぎ声は上擦っていく。
「これから、尻の穴でイけるようにしてやるよ」
 何を言っているのかわからない。でも、志水の濡れた指先が誰にも触れられたことのない場所を押し開こうとしているのはわかった。
 蓋に挟まれたまま、岬の手が鍵盤の上で暴れる。不協和音が部屋に溢れ、いやらしい音を少しばかり打ち消す。
「いやだっ、やめ、やめて……ひっ!」
「……ほら、俺の中指、わかるだろ?」
 身体を捩っていた岬がぎしり、と固まる。
 人一倍長い志水の指。あれが、中に──再び込み上げてきた恐ろしさに、岬の瞳が水膜を張る。指の腹で敏感なところをグン、と押され続けて、岬は勃起していた。
「やめ、ひぇ……、」
「誰がやめるか」
 言って、志水は強引に指を進めた。ゴリュ、と音がして、深く中を抉じ開ける。岬は小さく震えながら、腰を少し突き出していた。
「い、あぁ……っ」
「すぐに好くなる」
 初めはゆっくりだった動きが、じょじょに速くなる。長い指の節が中を擦る度に、岬の細い身体が反応する。痛い。怖い。気持ち悪い──でも。
「あっ……ン、」
 岬は乳首を弄られて、甘い、強請るような声を漏らしていた。はっとして、驚愕に目を見開く。なんて声を──その間隙を、男は逃さない。
「エロい声出して、しっかり悦んでるじゃないか。ほら、ここが好いんだろ? ここか?」
「いやっ……、やめて、やめてぇ……っ」
 もう1本指が増えて、圧迫感が増す。拒絶の声をあげながらも、岬のアナルはしっかりと2本の指を飲み込んでいた。
「すごい締めつけてきてるぞ。腰も自分で揺らして……変態の雌犬だ。どうする? こんなお前の姿を見たら、同級生はびっくりするだろうな」
「か……は、」
 志水は指を蠢かせながらローションを足す。尻を伝う冷たい感触に、岬の肌が粟立つ。
「はっ……、あ、痛い……ッ、いた、ぃ」
「そのうち痛いだけじゃなくなる。お前の中、うねり始めてるぜ。ほら、ここも……ここも、」
 言葉に合わせて、奥に押し込まれた指がぐち、ぐち、と腸壁を押す。その度に岬は味わったことのない感覚に怯え、小さく喘いだ。
 いつも威圧的で乱暴な志水は怖かったが、指だけは本人の人格を無視して繊細で美しく、岬は時折その手に見惚れた。1オクターブは余裕で押さえられる大きな手、長い指先。
 それが今、自分をひどい方法で辱めている。
「ひっ……、ンやぁ、あっ……、ンあ、はぁ……ッ」
「……淫乱、」
 耳元で囁かれ、尻を強く叩かれる。痛い、怖い。それでも、執拗に刺激され続けている腸内の快楽の方が強い。
 男の指先が出入りし、中を擦り、押し広げられるうちに、岬のペニスの先端から先走りの汁が溢れた。
「前立腺、て知ってるか? 男のGスポットだ……ほら、ここ」
「ひぁぁぁンッ……! いやぁ、だめ、ぇ……ッ!」
「それが嫌って顔か? エロい声出して、尻で感じてる、くせに」
「ひ、ンっ……あ、あはっ、あっ、あっ、あっ」
 ぐち、ぐち、ぐちゅ、ぐちゅ。志水の指先がリズミカルに出入りし、注がれたローションも手伝って淫猥な音が溢れる。
 いつかテレビで見たベッドシーンの喘ぎ声も、ちょうどこんな具合だったと、岬はどこか他人事のようにぼんやりと思う。高い、甘い声。
「あ、あ、あン、──ひやぁぁあン!!」
 ごりゅ、と指先がしこりを突いて、岬は大きな声で叫んだ。突き出していた腰が激しく痙攣する。同時に、志水に握り込まれたペニスから精を吐き出していた。
 頭が真っ白だった。自分の身体は一体どうなってしまったんだろう。岬は激しく肩で息をしながら、カクン、と床に膝をついた。
「1人だけ先にイきやがって……」
 頭上に降る、志水の責めるような台詞はしかし、楽しげだ。
 岬の両手を鍵盤と蓋の間から引きずり出すと、慈しむようにその指先を舐めた。力ない細い指先はピク、ピク、と弱く反応する。
「自分の手で確かめてみろ。中がどんな具合になってるか」
「……い、や……、いやっ……!」
 岬の手は志水に操られ、自分の背中に回される。感覚のない指先が自身の後孔に埋もれるのは、敏感になった秘部の方で感じていた。
 ぐち、と指先が収まった中は熱く、濡れている。岬の細い指を吸いつくように収縮している様は、まるで男に犯されるのを待ち侘びているみたいだ。
 岬は唇を震わせポロポロと泣く。
「……先生、……ねが、だから……も、許し……」
「藤島は本当に可愛いな」
 連日聞かされてきたフレーズに、岬は身体を硬くする。
 可愛い? 違う、あなたは僕が憎いんだろう──そう思う。可愛いと思う相手に、何故こんなことができる?
 岬は泣きながら、志水の異常な心理に怯える。
「次に会った時には俺のペニスでイかせてやるからな。それまではこいつで練習だ」
「え……、」
 岬が顔をあげた先、志水は大きな棒状のものをその手に握りしめていた。禍々しい赤色のそれは、男根の形をしている。岬はそれを初めて見たが、どういう風に使うものか、説明されるまでもなく理解していた。
 岬の顔色は紙のように白くなり、細い身体は小さく震えていた。
「や、……やめて、くださ、ぃ」
「やめてと言われてやめるはずがないだろ。俺はお前のその怯えた顔が見たくてやってるんだ」
「そんな、……ひどい、」
「言ってろ、」
「いやっ、いやだ!」
 志水はじたばたともがく岬の身体を押し倒し、防音のフローリングに組み敷く。手首を掴み、足で岬の足を押さえ込むと、ディルドを少年の小さなアナルにずぶりと挿入した。
「──ッ!!」
 抵抗も虚しく、硬く冷たいものが岬の狭い孔を押し広げる。指で慣らされたそこは、ズブズブとディルドを飲み込んでいく。
「あ、……は、ぁ!」
「余裕だろ。ほら」
 岬の薄い腹がヒク、と震える。硬質な無機物に内臓を押し上げられ、短い呼吸で喘ぐと、志水はニヤリと笑った。
「お前、これから俺の人形になるんだ。このチンコの玩具でイき狂う人形にな」
「はっ……あ、ぁ、動かさな、で……っ」
 志水がググ、と握り手に力を込め、引く。デコボコした表面が内壁を擦り、背骨に快感の波が押し寄せる。岬はヒィヒィと喘ぎながら志水を見上げた。
「や、でぇ……っやめ、で、」
「顔ヤバ……その怯えた顔、すごいそそる」
 ペロ、と舌舐めずりしながら志水が笑う。
 自分の怯え戸惑う表情や止まらない汗と涙がすべて、男を悦ばせる要素でしかないとわかっていても、岬は平静を保つことなど到底できなかった。
「あ、あっ……あはぁ、あっ……あ、」
 ぐちゅ、ぐちゅ、ずぷ、ずぷ
 リズミカルに突き挿れられる異物が、岬の腸内を掻き乱す。奥を突かれると目の前がチカチカと白くなる。痛みを和らげるための本能で、悲しくも腰が揺れる。薄い腹には岬自身がひっきりなしに放つ精液が飛び散った。少年の身体は与えられる強過ぎる快楽に翻弄される。
「は、ぅ……っ、い、て……抜いて……っ」
「さっき教えてやった前立腺、これで虐めたらどうなると思う?」
「いやっ……だ、め……ッ!」
 ディルドを掴む男の手に力が込められる。志水は岬の嫌がることを何でもやるのだ。
「あああ、あ──ッ!」
 グチュグチュと奥を激しく突かれ、岬は仰け反る。志水の狙ったところが的確に岬の快楽を呼び覚まし、細い足は自然と行為を受け入れるように開いていった。
 岬の身体はまさしく人形のように、硬いシリコンのペニスに激しく突き上げられ、腰を捩って泣き続けた。
 志水はその幼い痴態を見下ろしながら、薄っすらと恍惚の笑みを浮かべるのだった。

2016/12/10


←Prev Main Next→
─ Advertisement ─
ALICE+