Long StoryShort StoryAnecdote

7days【完結】


4.木曜日

 岬は虚ろな目で、木梨(きなし)に言われるままシャツの前を開ける。ズボンは片足だけ引っかけたまま、もう一方は靴下を脱いで裸足になる。細かい注文に応じた姿で、しどけなくベッドに座った。
「ずいぶん従順なんだな。すごいそそる……誘ってる?」
 木梨は嬉しそうに口笛を吹く。
 あなたがこうしろと言ったんじゃないか。捨て鉢になったような気分で岬は口を引き結ぶ。
 昨日は志水にひどくされ、抗う心を擦り潰された。指で執拗に解された穴に醜悪なディルドを突き込まれ、何度も達した。どんなに哀願しても、あのサディストはかえって嗜虐心を刺激されて、決してやめようとはしなかった。
 そのうち、岬の身体は与えられ続ける刺激を快楽として受け入れることで、現実から逃避した。侮蔑の言葉に傷つきながらも、暴力的な愛撫に自ら腰を振ったのだ。
 怯え、苦痛を感じ続けるより、快楽に溺れてしまう方がずっと楽だ。その後に押し寄せる自己嫌悪と罪悪感さえなければ……。
 海外に留学していたという木梨は、英語の家庭教師だ。左耳にピアスを開けて、髪は明るい茶色に脱色している。浮わついた雰囲気は最初から岬に警戒心を抱かせていたが、案の定と言える所業に思わず自嘲する。
 この家は、まるで娼館だ。曜日ごとに違う男達が岬の身体を弄びにやって来る。笑えるのは、そんな彼らに対して岬の両親が金を払っていることだ。
「何がおかしいの? もしかして、こういうことされるの好き?」
 木梨に指摘され、自分が薄く笑っていたことに気づく。黙って俯くと、その顎を木梨が掴み上向けた。
「岬、」
 名前を呼ばれ、くちづけられる。岬は鼻から息を漏らして目を閉じた。このくらいなら我慢できる。
「意外、結構慣れてるの? 俺、ビビっちゃうな」
 木梨はケラケラと笑って、背負ってきたリュックを漁った。
 中から取り出したのは、赤い縄だ。木梨はその束を解くと、岬の手首を掴む。岬は咄嗟に身体を緊張させる。
「何、」
「んー? これで縛ってあげるの。岬は肌が白いから、赤が映えると思ってさ」
 言いながら、木梨は強引に岬の腕を引くと、慣れた手つきで縄を巻きつけていく。両手首を背中に回してきつく縛り、脇を締めさせると腕と胴体が離れないように胸の辺りで何重にも縄を巡らせた。平らな胸に、縄が食い込む。
「い、たっ」
「ちょっとキツいかな? そのくらいがいいんだ」
 縄は岬の足のつけ根をぐるりとまわり、膝を曲げさせるとその状態で固定するように太腿と脛を縛りつけた。そこからさらに両足首を拘束した縄は、背中に回した手首と結ばれてビクともしなくなる。
「Perfect! 思った通り、めちゃくちゃ似合う」
 岬は不自由な姿勢でベッドに転がされ、戸惑いながら男を見上げる。身動ぎすれば、きつく締められた縄がぎしりと皮膚に食い込んで擦れ、痛む。
「さてと、どこから可愛がってあげようか」
 言いながらも、男の手は迷いなく岬の胸へと伸びる。片手で先っぽをピン、と弾き、もう一方にしゃぶりついた。
「くぅ……ン」
 ぴちゃぴちゃと舐められる度に、岬の息が荒くなる。男の手が下肢に伸びて、下着の上から岬の性器を揉んだ。連日与えられた手技のせいで、早くも岬の性感は刺激される。
「結構エロいんだな、岬……もう勃ってきてるよ」
 全て諦め、心を殺したはずなのに、羞恥に肌が燃える。岬の意志に反して、身体だけが従順になっていくのがやりきれない。悔しさに、目尻が熱くなる。
「早く挿れて欲しいんだろ?」
「……ゃ、」
 昨日の冷たく硬いディルドの感触を思い出し、ぞっとする。指先で秘部をなぞられて、岬は身体を震わせた。
「あれ? もしかして……開通済み? Oh my god!」
 木梨はおどけた口調で言いながら、しつこくそこを撫でる。
 性器は挿入されなかったが、太いディルドが激しく出入りした。未だにヒリつくそこは、きっと腫れているのだろう。岬は怖くて、自分で確かめてはいないけれど。
「清純そうな顔してやることはやってんだ。とんだ淫乱ちゃんだねぇ」
「っ……、いた、ぃ……っ」
「まだ最近かな? ぷくって膨らんで……こんなの見られたら男とエッチしたってすぐにバレちゃうよ」
 木梨の手が離れ、カサカサとビニール袋の音がする。それから急に顎を掴まれ、唇を合わせてきた。
「ふっ……ン!?」
 口移しで、生温い液体を流し込まれる。そのままゴクンと飲み下してしまってから、妙な味がしたことに岬は顔を顰めた。舌が、微かにピリピリする。
「今の、何──」
「Magicさ。処女じゃないなら、俺はこっちの初めてもらおうと思ってね」
 男の手が岬の性器に伸びる。緩やかに扱かれて、腰が震える。
「あっ……!?」
「すごいでしょ? 即効性。尿道はやっぱ、最初ちょっと痛いかもしれないからさ」
 いつの間にかゴム手袋を嵌めた男の手が、細い金属の棒を握っている。
「もう濡れてるから大丈夫だよね。声、出していいからね」
「いや、何、やだ、やだ、いやっ──」
 冷たい金属が先端に触れて怖気が走るが早いか、性器を貫く刺激が先端からビリッと広がり、岬はきつく歯を食い縛って声にならない悲鳴をあげた。
「おっと、あんまり動くなよ。傷がついたら大変だ」
「い、ひっ……、ひぃ……っい、だぃ……めて、や……ッ」
 岬は不格好に両足を広げたまま、ビクビクと痙攣する身体をなんとか宥めようと必死だった。身体がびくつくと器具を挿入されたところにじんじんと響く。冷たい感触が痛いのか気持ち好いのかもよくわからない。ただ、味わったことのない感触が怖い。
「Ok、ゆっくりするから……ね?」
「──ッ」
 男の手はゆっくりと、しかし着実に器具を進め、幼い性器はとうとう奥まで串刺しにされてしまった。涙で霞む視界、下肢を自分で見ることは難しい体勢だったが、身体の中央に金属の棒が鈍く光りそそり立っているのがぼんやりと見えた。
「ひ、ぃ……っ、や、取って……と、てぇ、」
「1番細いヤツだよ。ゆっくりするから、ちゃんと感じて」
「ひ、うぅっ!」
 言葉通り、緩慢に引き抜かれ、挿し込まれる。その度に尿意のような射精感のようなものが湧き上がるのに、器具によって堰き止められる。
 行き場のない劣情が快楽に変わるまでに、そう時間はかからなかった。
「あは、すっかりトロ顔になっちゃって、可愛い」
「はっ……ひ、……ひぃ、ンっ」
 仰向けになったまま、くねくねと腰を揺する。イきたい、なのにイけない。岬は懇願するように喘ぎながら、全身を朱に染めて身を捩った。
 木梨はというと、岬が尿道の刺激だけで身体を捩りだすや、学習机の椅子に後ろ向きに掛けて、楽し気にその痴態を鑑賞している。
「挿れて欲しそうだけど、今日はオアズケだ。他の男とした罰だね」
 岬はいつまで続くとも知れない拷問のような時間に絶望する。早く、早く──その思いが、岬の身体を操る。
 岬はゆっくりと身体を横向けると、片膝を軸にして慎重に身体を起こす。性器から突き出た金属片が、ベッドに触れないように。そうして木梨の方に四つん這いになって尻を向けると、顔をベッドに埋める。
「……し、てくださ……、」
「ん? なに、聞こえないよ、岬。What did you just say?」
 男の嘲りが岬の心を抉る。シーツに、涙が染みていった。
「中……お尻、の中……弄って、ください……」
「Pardon?」
「ひっく……何て、言えば……?」
 シーツに埋もれたまま、片目だけで伺うように問うと、木梨はにんまりと笑う。男の嗜虐心を刺激していることに、岬は無自覚だ。
「僕のオマンコに、先生のデカチンポハメて、奥までゴリゴリ突いてください、かな」
「……ひ、……っ僕の……オマンコに先生の、……デ、カチンポ、ハメて……っ奥、まで、ゴリゴリ……突いて、くださいっ」
「んーもっと誘うように言ってよ? 僕は変態です、」
「僕は……変態で、す」
「チンポ自分で弄りながら言って」
 岬は素直に、金属の突き挿さったペニスを握る。指先が触れただけでビクンと全身を震わせ、ゆっくりと握ると、はぁ、と深い息を吐いた。
「自分でその棒、抜き挿ししてごらんよ」
「……っん、く……は、ああ、はっ……あ、あっ、」
 痛い。引き抜くと堰き止めていた精液がせり上がり、そこに無理矢理押し込むと先端から汁が溢れる。
 信じられないような痴態を男の前に晒して、羞恥を感じながらも男の視線に興奮してもいる自分に、岬は戸惑う。
 ゆらゆらと腰が揺れ、性器から溢れた先走りが金属片にも伝っていく。ポタリ、シーツにも染みを作る。
「あ、……は、せんせ……チンポ、くらさ……ぃ、」
 木梨は黙って眺めている。
「せんせ、ぇ……っ、僕の……オマンコに、挿れて、」
 岬は泣きながら腰を振る。強請るように。
 耐え切れず自分の手をしゃぶり、唾液で濡らすと、恐る恐る後ろの孔に触れる。
「はっ……、」
 指先でアナルを刺激し、つぷりと挿れた。
 身体は震えたが、自ら操る手の感覚の方が強く、上手く快感を得られない。昨日さんざんあえがされた、あのディルドが今手元に欲しいとさえ思う。
「んっ……ふぁ、」
「あらまぁ、とうとうアナニーしちゃうとはねぇ。ふふ、いいな、この眺め……可愛いよ、岬」
「んぅ、は……っ、挿れて、……もっと、奥ぅ……ッ」
 さっき飲まされた薬のせいだ。ぼぅっとする頭で、岬はそう自分に言い聞かせる。全身が熱い。乳首も、ペニスも、アナルも、誰かに弄ってめちゃくちゃにして欲しくて焦れる。自分の手じゃだめなのに。
 細い指を2本使っても、岬の身体は満足しない。岬は熱を持て余しながら、自分の腸内がもっと奥に、太いものを求めているのを指先で感じていた。
「残念、言ったよね? 今日は挿入はなし。でも、可愛いところ見せてくれたからサービスで、チンポ気持ち好くしてあげるね」
 木梨は椅子から立ち上がるとベッドに乗り上げ、四つん這いになった岬の身体を抱き起こした。自分の前に座らせると、後ろから手を伸ばして金属棒を掴む。
「あっ、あああッ!!」
「こうやって動かすんだよ。ちゃんと覚えて?」
「ひぃ、ひっ……! ひぃッ!」
 ぐち、ぐち、と細いペニスの中を擦られて、鋭い快感に頭が真っ白になる。引き抜かれる瞬間の射精感と、突き挿れられた時の精嚢への刺激が、岬の体内に渦巻く熱をさらに昂ぶらせる。自分の意思ではなく、男の手でランダムに繰り出される刺激に、岬の身体は焦れ、時に極限まで高められ、そして堰き止められ、頭の中はぐちゃぐちゃになった。
「出していいよ」
 耳元で囁くと、木梨は不意に棒を引き抜いた。
「あ、ああ、あー……」
 塞がれていた道が開かれて、岬の性器からはびゅるびゅると精液が飛び散った。血は混じっていない。真っ白な精液がフローリングを汚していくのを、岬は蕩けた顔で見つめていた。
 くったりとしなだれた身体を、木梨がぎゅっと抱き締める。
「よし、よし……気持ち好かったでしょ?」
 木梨は満足そうに笑い、形のいい頭に頬ずりをした。

2016/12/12


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