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僕のクロ


第2話


 太腿に食い込んだ黒い革のベルトは、戸惑うクロの身動ぎにギチギチとしなる。サイ・カフスを装着したクロは諦めたようにゆっくりと股を広げた。
 彼の後孔には黒く太いキャンドルが突き挿れられている。奥まで貫いているように見えるが、それはチョコレートでできており、クロの体温でトロトロと溶けた。好いところに届く前に形をなくしてしまうそれは、欲望を満たしてはくれない。
 中途半端な疼きに焦らされて、クロは腰を捩った。
「くぅ……んっ」
 全身が赤く染まっているのはそのせいばかりではない。チョコに含まれた洋酒が効いているのだ。
「クロ、美味しいかい?」
「あ、たまが……ぼーっとして……」
 くねくねとしっぽを揺らしながらクロは答え、短い吐息を漏らす。
 彼の主人は八重歯の覗くその可愛らしい唇に自分の唇を重ねると、口内で溶かしたホワイトチョコを口移しした。こちらには媚薬が含まれていることを、クロは知らない。
「今日はバレンタインだからな。たっぷり可愛がってやるよ」
 赤いキャンドル型のチョコを溶かすと、ポタポタとクロの胸に垂らす。甘い蜜にまみれたクロの肌に、男は時折舌を這わせた。
「ご主人様……おひり、に挿れてくらさい……っ」
「じゃあ僕のをしゃぶって」
 男はクロの顔を跨ぐとペニスを口の中に押し込んだ。男のペニスにもチョコが塗られており、クロはまずそれを舐め取っていく。
「は、はふっ、むっ……ん、」
 ちゅぱちゅぱと音をさせ、舐め終わると男はクロの頭を掴んで強引に前後に揺らした。激しいイラマチオに、クロは喉の奥まで男の長いペニスを受け入れさせられる。
「ぐふ、うぶっ……む、」
「美味いか? クロ」
 クロの頬の内側で擦り小さな舌に愛撫されると、男のペニスはすっかり漲りキャンドルなどとは比べ物にならないほど凶暴な屹立を示した。
「お前の方はまだ食べかけのようだ。これじゃあ僕のが入らないぞ」
 言いながら、男はクロの尻に挿さった棒の端を掴みぐっと押し込む。
「きゃうっ! んっ……は、ぜんぶ、はいっ……」
 クロが下腹に力を入れると、黒い異物はにゅる、と中に飲み込まれ溶けた分がトロリと滴った。
「はしたない……漏れてるぞ」
「えっ……? あ、ひゃうっ!?」
 男はクロの尻を持ち上げると、窄んだ蕾に舌を潜り込ませた。蕩けた熱い粘膜から甘いものを丁寧に舐め取ると、淫らな肉ひだはもっと激しい責めを乞うてヒクヒクと疼く。
「はうぅっ、あっ……! あん、ごしゅじ、んぅっ……!」
 ニュグニュグと届く限りのチョコを舐め取ると、唾液や腸液で緩くなったチョコレートは少年のアナルから溢れた。男は唇で穴を塞ぐと、ぢゅうっ、と吸い上げた。
「ひあ"ぁッ……!」
 クロは腰を揺らしながらももっと激しい突き上げを求めて焦れた。身体の芯が熱い。自分で慰めたいのに自由を奪われ叶わず、男にそれを果たして欲しいのに浅いところの刺激で留められるのは拷問のようだ。
 たっぷりとクロの中を味わった舌で、男はぺろりと口辺を舐めた。
「は、……はぁ、はっ……あ、ごひゅ、じッ」
 休む間もなく男がペニスを突き挿れると、クロはビクンと背を反らせた。
 男のペニスはクロの身体に対して大き過ぎる。何度しても、この圧迫感に慣れることはない。強引に広げられた内腿には緊張が走り、薄い腹に肋が浮く。抵抗に、拘束具の金具がガチャと鳴った。
「はひぃッ! っ、ヒッ──ひはぁっ!」
 ズンズンと激しく突かれて華奢な身体はシーツの上でずり上がりそうになるが、男はすかさずクロの腰をガッチリ掴むと律動に合わせて自分の腰に引きつけた。挿入はさらに深く、中を抉る。
「あぅ──あ"、あぁっ! あぐっあンッ! ふが、深ぃ……ッ奥、まできちゃ……、」
「くく、好きだろ? そら、そら!」
 肌を薄赤く染めて悶絶するクロに、男は口元を歪めるとさらに腰の動きを速めた。
「あぐっ、いやっ! だめ、やあ"ぁぁっ! あんっ、あっ! イ、てぅ、イッてまひゅ……っあ、あ、あ"んッ!」
「まだ、まだっ」
「ひゃあ"んっ! あ"ッあ"──!!」
 拳を握った手はいっそう激しく金具を鳴らしたが、逃れようとすれば腕と繋がれた太腿はますます広がってしまう。自ら男を深いところへと導き、クロは高い声で喘ぐ。
「ンひぃ──ッ! はぁ、ン"〜〜ッ! いやッ、あんッ! はひ、ぃ、まって、まってぇっ……い、いっ、ひッ!?」
 ドスッ、と結腸を一突きすると、クロは大きな双眸からボロボロと涙を溢れさせた。
 真っ赤な乳首は張り詰めて白い胸の上で踊る。男はそれにしゃぶりつき舌先で弄んだ。男が奥までぎっちり嵌めたまま律動をやめても、クロの中の締めつけは止まない。
「ひ、っく……ひぅ……ッ」
「さっきからずっとイきっぱなしだな。それもメスイキ。孕みたいのか?」
 クロは自らせがむように腰を揺らした。みぢ、みぢ、ぬぢゅっ……先端を結腸に嵌めた状態でぞくぞくと感じているのが男にも伝わる。
「も、はいらにゃ……っはいっちゃ、らめれひゅ……」
 乳首をキツく吸うと中は膣のように締まる。舌先でチロチロと転がし指で捏ねると男のペニスの先はぢゅぷぅ、と結腸の敏感な肉ひだに飲み込まれた。
「ぎぃっ──あ"ぁぁ〜〜ッ!!」
「うっ……く、淫乱な雌猫め。僕の精子を欲しがって……っ」
 男は腰の動きを再開した。疲弊したクロとは対象的に、力強い律動。
「あ"あぁッ! あ"ひぃ、まっ──」
「お前が欲しがったんだろ? 結腸ビクビクさせてッ」
 男はクロの太腿を掴むと上から押し潰した。ドスドスと結腸を突き上げられクロの全身が痙攣する。どうやっても逃げられない体勢のまま、クロは的確に弱点を抉られ続ける。
「は、はひっ! いあ、やあぁッ! いやっ、こわえるっ! もうやめ……おねが、……っだめ、そこだめぇっ!」
 クロは目を見開きぶるぶると首を振るが、男はがっちりと固定した体位で激しく責め立てた。肌に浮いた粟は消えず、爪先までピンと伸びる。男のカウパーが結合部から噴出し、まるで潮を吹くようだ。
「主人にイヤはなしだ」
「ごめ、なひゃいごめんにゃひゃ、ぃは、ゆるひでくらひゃあッ!」
「いいか、ここにある雄の子宮で孕むんだよ」
 耳元で囁きながらクロの下腹をいやらしく撫でる。臍の中に指を入れられると中と外の刺激でこれまでにない快感がクロを襲った。
「がひッ──〜〜ッ! はひっ! ひぃっ、ひ、ひ、ひぃっ、はひぃ──ッ!」
 びゅびゅ、と短い射精が奥を叩き、程なくして大量の精液がクロの体内に注ぎ込まれた。ドプドプと勢いのある奔流はS字を描く腸にまで届き、少年の下半身を完全に征服する。クロはやはり射精はしないまま絶頂し、ピクピクと痙攣しながら男の精子を搾り取った。
「はぁ、はぁ、……クロ、美味しかったよ」
 涎を垂らす唇を吸ったが、クロはぐったりとして反応を示さない。気絶してしまったようだが、男を受け入れたところはまだ絶頂の余韻でヒクヒクと痙攣していることに男は笑った。
 少年の腹の奥はたっぷりと吐き出された精液とチョコレートが混ざり合い、マーブル模様をなしていることだろう。
「僕はお前には甘いんだ」
 チョコレートの香りを全身から放つクロにくちづけながら、男はその耳元にひそりと囁いた。

2018/02/14


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