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川を渡って木立を抜けて


2.

 館の主はバルトーという、どういう方法でか知れないが大金を蓄えた悪趣味な中年男だ。小太りで、薄くなった頭髪を時間をかけて整えている様が卑しく、歪んでめくれ上がった厚い唇と蛇のような小さな目のバランスが醜悪だった。
 幸福な眠りから覚めて目を開けたその瞬間、視界に飛び込んできたその顔に、セロはひゅっと息を飲んだ。バルトーはいやらしい笑みを浮かべると、引き攣るセロの頬にブヨブヨと余計な肉のついた手を添わせる。
「よく眠れたかな?」
 その声を合図に、後ろに控えていた下男らしき男がセロの上掛けを引き剥がす。身を守るように両手両足をぎゅっと丸めるセロに、
「さっさと起きろ!」
 怒号を飛ばすとその細い肩を掴んでベッドから引きずり出した。
「あまり手荒にするんじゃない、来たばかりなんだから……」
 バルトーに窘められた男は恐縮した様子もなく、乱暴なままセロの身体を近くにあったダイニングチェアに座らせた。ぎしり、軋んだのは木製の椅子か、自分の身体の方か。セロはわずかに顔を顰めながら、伺うように正面のバルトーを見上げた。
「名は何という?」
 突然の問いに、セロは戸惑い、微かに周囲に目を配る。下男は胸元から小さな黒い帳簿を取り出すと、何やらそこにペンを走らせた。
「……セロ」
「年はいくつだ?」
「じゅうぃ……、2週間前に、12に、」
「ここでは1番下だな。背は? 体重は?」
 セロはゆるゆると首を横に振った。
 家の柱に成長の軌跡を刻んではいたが、それが何センチを示すのかは知らなかった。体重も、測る術がない。
 バルトーはふむ、と唸って弛んだ顎をさすった。下男は帳簿に何か記していた手を止め、ペン先で帳面をトントンと突く。せっかちな男だ。セロは答えられなければ罰を受けるのではと怯えた。
「オヴェイスと同じくらいか……まぁ、いいだろう。後で見てやれ」
 バルトーがひょいと人差し指を振ると、下男は険しい顔のまま、無言で小さく頷いた。
 オヴェイス、とは誰だろう。セロの年齢に対しても、「ここでは1番下」と言った。もしかするとこの館には、自分以外にも同じ年頃の子供がいるのではないだろうか?
 セロはビクつきながらも頭を巡らせる。右も左も分からない今、得られる情報は少しでも覚えておいた方がいい。
 バルトーはセロに歩み寄ると、身を屈めて顎を取った。下瞼を下げ、髪を後ろに撫でつける。
「瞳はグレー、髪はアッシュブラウン……歯並びはなかなか整っているようだ」
 微細に検分するバルトーの言葉を、下男がサラサラと書き取っていく。
 バルトーの手がセロの着ている麻のつなぎに伸びた。ボタンを外すと、胸を開く。セロは肌を外気に晒され、微かに震えた。無骨な指の腹が、セロの胸の突起をなぞる。
「ッ……」
「乳首は薔薇色だな」
「ぁ、……ん」
 セロが身を捩って反応すると、バルトーはセロと目線を合わせるように床に膝をついた。手は執拗に乳首を捏ね続ける。
「今日からお前はここで、男娼として働くんだ」
 ダンショウ、と口の中で繰り返したが、セロにはそれが何かわからなかった。田舎の村で暮らし、小さな教会学校で善意の教育を受けるばかりだったセロは、あまりものを知らない。
「昨日、馬車の中で可愛がってもらっただろう。ああいうことを、たくさんの男を相手にやるのさ」
 肉厚な唇をべろりと舌で濡らしながら、セロの耳元で囁く。
 昨日──馬車の中。セロはさっと顔色を失くす。あの時の恐ろしさとおぞましさを思い出し、ぶるりと身を竦ませた。カチカチと小さな音がして、自分の歯が鳴っているのに気づいた。
「いきなり乱暴にされて怖かったろう、可哀想に。最初が肝心だといつも言っているのに、まったく、あいつらときたら……。いい思いをさせてやれば、どんな子供も従順になるというのに」
 バルトーは憐れむようにセロを見つめた。セロは、身体を弄られながらも、自分に同情を寄せているらしいこの男にでも縋りたい気持ちだった。この男に人の心があるなら、もしかしたら。青白い顔のまま、口を開く。
「家に、帰らせてください……」
 自分で思うよりもずっと小さな声だ。聞こえなかったかもしれない。再度、家に、と言いかけたところで、
「セロ」
 バルトーが短く名前を呼んだ。瞬間、セロの震えが止まる。バルトーはニタと笑うと、悪戯していた手を出して、セロの両手を取った。
「よろしい。わたしを満足させたら考えてやろう。おいで」



「ひ、ぁ……ッ、あ、あっ、はぁ、──あ……ンっ」
 まだ声変わりもしていないボーイ・ソプラノが、艶めいた呻吟を漏らす。暗闇に浮かぶ白い姿態は、広い部屋の中央に据えられた円形の寝台の上で上下に揺れていた。
 折れそうなほど華奢な腰を支えるゴツゴツとした太い指には、趣味の悪い金の指輪が嵌められている。バルトーがその手を腰から尻に滑らせ、双丘を割り開くように揉みしだくと、セロは殊更高く鳴いた。割られた秘部には、バルトーの剛直が深々と突き立てられ、セロの後孔を出入りしている。
 セロは仰向けに寝たバルトーに跨がらされると、その両腕をそれぞれ荒縄で括られた。縄は下男によってベッドの両端に結び付けられ、ベッドの中央から逃げることができない。騎乗位を強いられながら、手綱で操られるのは無論セロの方だった。
 はじめのうちは腰を浮かせて抗ったが、やがて力尽き、自重で成金男の一物を飲み込んだ。男が腰を使うと華奢な身体が跳ねる。少年の内壁がきゅんと締まる。
「ひぃ……ッぁ!」
 バルトーは少年の幼い身体を味わいながら、ふぅふぅと息をあげた。
 男がこの体勢を好むのは、少年が苦痛と快楽と羞恥に惑う表情も、小さく主張する胸の飾りも、自身の欲望を受けて波打つ薄い腹も、その下でじわじわと追い立てられ立ち上がる幼いペニスも、そして己の怒張が出入りする結合部までもをその目で愉しむことができるからだ。
「ふっ、く……う、いいぞ……よく締めつけてくれるな……」
「はっ……、あ、あっ……、いや、やぁ、も、やだぁっ……!」
 もう何度中に吐き出されただろう、少年の秘部からは男の精液が溢れ、汗は2人の身体を妖しく光らせている。セロは嗚咽をあげながら頭を振り乱し、懸命にその責め苦を拒絶するが、男の陵辱はいつまでも止まなかった。
「うぅ、で、出るッ、イく、イくっ……出すぞ!!」
「いやっ、やだ、中はも、無理……! ひっ、おねが、やめ……ッ、──やぁぁぁ……ッ!!」
 悲痛な懇願も虚しく、セロの尻に埋め込まれた性器からは大量の汚濁が絞り出された。下腹でドクドクと脈打つ欲望に、セロは唇を噛み締めながら瞳の色を失くしていく。
「ひっ……ひぐ、うっ……ぁ、」
「うう、おっ……おぉっ……」
 バルトーは気味の悪い呻きをあげながら半身を起こすと、恍惚の笑いを漏らした。すすり泣くセロを嘲るように、すべて出し終えた後も前後に腰を揺すって敏感な箇所を刺激する。セロはその度にビクビクと痙攣し、やがてぐったりと頭を垂れた。
「おやおや、また失神してしまったか……体力がないな」
 笑いながら、横に控えていた下男を呼ぶとセロの両手の戒めを解かせた。バルトーに凭れかかる幼い身体を抱き締めると、そのまま仰向けに寝かせる。もちろん、下半身は繋がったままだ。
 唾液を垂らし半開きになったセロの唇に舌を入れ、口内を舐る。指の腹で両の乳首をゆっくり捏ねると、鼻から微かに甘い吐息が漏れた。指の力を絶妙に加減し、ねっとり、優しく……いやらしく虐めると、セロの体内はまたヒクヒクと蠢動する。同時に、男のペニスも硬度を取り戻していく。
「……ふぅ、ン、んっ……は、ぅ……ッ」
「くく……敏感な身体だ。薬も使わずにこんなによがるとは、天性の才能だな」
「あっ……、ぁ、いゃ、もう抜い……、」
 セロは薄目を開けたが、涙で滲んで何も見えない。頭はぼんやりとして、縄を解かれたのに身体の自由は利かなかった。
「さぁ、今度は自分で動いてごらん」
「な、に……むり、やッ……、」
「わたしは今のままでも構わんがね。自分から欲しくなるぞ」
 乳首を弄る指にグ、と力がこもる。ゾク、と身体が疼いて、内壁がバルトーの巨根を締めつけた。その反応が連鎖して、セロのいいところが捏ね回される。
「ひ、あッ──」
「く、う……いいぞ、もっとだ……」
「あっ、……は、指やめ……そんな、──ぁ、あっふ、ふン、」
 唇を塞がれ、上顎を舌でなぞられて。びく、びく、と身体が跳ね、物欲しそうに腰が揺れる。いや、なのに──身体はもっと奥を突いて欲しくて、足はもじもじと揺れる。
「ん、ふ、ンッ……ふ、」
「ふふ、もどかしいな。まだうぶな仕草がそそるというものだが……」
 言いながら、バルトーはゆっくりとペニスを引き抜くと、セロのほっそりとした太腿にそれを挟ませた。穴からはトロトロと精液が溢れるまま、腰を前後に揺らす。
「あ、なん、で……ッ! ま、だ」
 中で出してないのに──それを望んでいるわけではないはずなのに、この責め苦から一刻も早く逃れたくて、思考が乱れる。
 バルトーはセロの考えを読んだようにニヤリと笑むと、腰を前後に揺すり始めた。
「中に欲しかったか? でもどうだ、こうすると……、お前のも擦れて──」
「ひ、ぁっ、あ、」
 太腿に挟まれた硬いペニスの感触は、中を擦られた時の快感を想起させた。さらに、セロの陰嚢の裏や竿の部分も一緒に擦られている。いつの間にかセロの幼い性器も立ち上がり、男の腰の動きに合わせてぴゅ、ぴゅ、と先走りを迸らせた。
「ほら、言ってごらん……どうして欲しい?」
「や、あ、いあっ……やぁ……ッ!」
 バルトーはセロの両膝をぐっと掴むと、更にきつく自分の性器を挟むように押さえ込んだ。セロの太腿を巧みに使って、自慰をしているのだ。
 袋や竿を緩く刺激されながら、それでもセロの内壁は男の硬い肉棒で奥を突かれるのを望んでいた。後孔はひくひくと震え、物欲しげにトロトロと精液を垂らしている。
 セロの答えを待つように、バルトーは膝を掴む手の力を緩めた。
「さて……どうして欲しい?」
 セロの心は、敗北の屈辱に震えながらひび割れ、傷ついていく。
 自由になった両足を自らゆっくり、ゆっくりと広げ、蛙のように無様な姿態を晒した。腰を上げ、バルトーの前に秘部を晒す。ひく、と喉の奥を引き攣らせる。
「……っ、」
「黙っていたらわからないぞ。ん?」
「……て、くださ……」
「聞こえないな」
「い、れて……ッださ、ぃ」
「何を、どこに、どうして欲しいんだ?」
 バルトーはすでに答えを知っている。男の指はセロのアナルの窄まりをやわやわと弄っている。指先が孔を軽く突くと、先をねだるように入口が締まるった。
 羞恥で桃色に色づくセロの目尻から、ポロポロと大粒の涙がこぼれた。
「あ……あなたの、で……僕の……ッ、ふ、うぅっ……ぁ、」
「あと少しだ。ちゃんと言えたら、天国を見せてやるぞ」
 バルトーが優しく、悪魔の囁きを耳元に注ぐ。セロは泣きじゃくり拳で目元を覆っていたが、バルトーはその細い手首を掴むと涙でぐしゃぐしゃになった顔に、唾を飛ばす勢いで怒鳴った。
「あなたの硬くて大きなペニスで、僕のお尻の奥をいっぱい突いてください、だ!!」
「あ、なたのペニス……硬くて、大きなペニスで、僕の……を、突──」
 セロが言い終わる前に、バルトーの肉棒が尻の孔を押し拡げ、貫いた。セロを焦らし、我慢を強いた当のバルトー自身も限界だったのだ。
「──〜〜ッ!!」
 セロは首を仰け反らせ、指が白くなるほどきつくシーツを掴む。一気に奥まで突き上げられて、セロは呆気なく達した。しかし、小さく立ち上がっていたペニスからは精液が出ない。バルトーの指が根本をしっかりと押さえ込んでいた。セロは尻の奥だけで極めてしまったのだ。
「……ッひ、ひぃ……ッひ、はぁッ──」
 しかしバルトーはまだ達していなかった。セロの腰や自身の身体の角度を変え、あらゆる手で少年の中を責めた。嫌がる首筋に吸いつき、抵抗しようとする手を押さえつけ、何度も、何度も、何度も。達したままのセロの内壁はさらに締まりが好くなり、律動に合わせて絶妙に収縮する。
「く、ふ、うっ、うっ、うぐ、出る、出すぞ……ッしっかり受け止めろ……!!」
「ひっ──ああ"あぁぁぁッ――!!」
 あれだけ出したというのにどこにそんな精力が残っていたのか、バルトーは最後の射精を絞り出すようにして、セロの腹にどくどくと注ぎ込んだ。セロは体内に迸る熱と、自分ではない脈を感じて身体を痙攣させた。ぎゅっと硬くした身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
 バルトーは満足の呻きをあげると、セロの微かに膨らんだ下腹を撫でた。その薄い皮膚の下、醜い欲望の塊がビクビクと息づいていた。少年の腹には、バルトーの子種が大量に吐き出されていた。もしセロが女だったなら、確実に孕まされていたことだろう。
「かっ……は、あっ……、」
 バルトーの手に刺激を受けて、セロのペニスからちょろちょろと液が漏れる。あまりに激しい行為のあまり、セロは失禁していた。
「好かったぞ、坊や……これからもっと気持ち好くなることをたくさん教えてやるから、わたしや客達を愉しませてくれよ」
 バルトーがセロのアナルからペニスを引き抜くと、ごぷ、と大量の汚液が溢れた。セロは足を拡げ犯された秘部を晒したまま、足を閉じる力も残ってはいなかった。
「後片づけとセロの世話を頼むぞ」
 バルトーはガウンを羽織ると、ドアの入口で一部始終を見ていた下男の肩を叩く。すれ違いざま、下男の下半身に目をやると、その股間ははっきりと欲望を主張しており、バルトーはクッ、と喉の奥で笑った。

2016/09/10


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