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僕のクロ


第3話−2


 広間に戻ると、クロの主人も談笑の輪から外れたところだった。アルコールが進んでいるのか、顔が赤い。
「おお、クロ。お前も楽しんでるか?」
 フラフラと頼りない足取りで脇に歩み寄ったクロの腰をぎゅっと抱き寄せる。そのまま口づけようとする主人に、クロは手で口を押さえて顔を背けた。
「お前……その顔、」
 一目でわかるほど、自分の欲情が現れているのか。思うとクロは酒を飲んだかのように耳まで真っ赤になる。
「ごめんなさい……さっき、よその半獣に」
「まさか本当にお愉しみとはな」
 主人は嘲るように笑い、クロの腰を支えていた手を尻に滑らせ揉みしだいた。
「あっ……やめ、……こんなところで、」
「こんなところでおっ勃ててるお前は何だ? クロ。半獣のをしゃぶってディルドだけで好くなってるなんて、本当にどうしようもないな」
「は、うぅっ……あ、ごしゅじ……っ」
 男は壁際にクロを囲うと大胆にも半ズボンの裾から中に手を滑り込ませる。尻肉を揉まれるとクロは膝を合わせてガクガクと震えた。
「あっ……!」
「今年もまたどこかのサディストに調教をお願いしてやろうか」
 クロの表情が強張る。主人のスーツにしがみつき大きな瞳を潤ませた。
「それだけは! 僕は……ご主人様がいい。ご主人様だけが……」
 大きな目から涙が溢れて、主人はそれを親指で拭う。
「いつまでも子供みたいだな、お前は。泣くのはよせ。客間を借りよう」
 言うと、男はフラつくクロを抱き寄せて人気のない廊下へと出た。

 客間は、トレード用の客のために用意された個室だ。ダブルベッドが1つ、ご丁寧に手錠や鞭、バイブといった道具まで揃えられている。「味見」をするためだ。
「さて……と。──あれ?」
 男はクロをベッドに座らせると自身のジャケットの内ポケットを探った。
「おかしいな……確かにここに入れたはずなんだけど。落としたか……?」
「ご主人様……? どうしたんですか?」
「お前のその貞操帯の鍵だよ。どこかに落としたらしい」
「えっ」
 ひやりと走る緊張に、クロはビクンと身体を震わせた。まだディルドを挿れたままの中が疼く。
「ちょっと探して来るからここで待ってろ。……逃げるなよ」
 言うと、男はクロの腕を掴みベッドから鎖の伸びる手錠でクロを繋いでしまう。戸惑うがされるがままのクロは、ベッドから離れられない状態にされると部屋に取り残された。
「そんな……」
 下半身の熱も手伝って目を潤ませるクロだったが、時計の針の音だけが室内に響き渡った。

 それからどれほど経ってのことだろうか、ウトウトしかけていたクロだったが、カチャリとドアノブの回る音で意識を覚醒させた。
「ごしゅじ……ぇ、」
 ドアのところに立っていたのは、見知らぬ中年の男だった。ベッドの上のクロを見つけるとニタリといやらしく笑う。
「見つけた。ずっと君のことを探していたよ。ほら、鍵ならここにある」
「え……どうして……ご主人様は、その鍵を探して……」
 戸惑うクロに男は頷くと、
「ああ、そう。ご主人がわたしに鍵を託したんだよ。君を可愛がってやってくれってね」
「そんな……そんなはず、」
 男はドアの鍵をかけるとズカズカとベッドの上のクロに迫った。思わず後退るが、手錠のせいでそこから逃げることはできない。
「怖がることはないさ。なに、この部屋を使うのは初めてじゃないだろう? 以前にも1度トレードをしたことがあっただろう。その時の主が君のことをとても褒めていてね。わたしもぜひ君の身体を味わってみたいと思ったんだ」
 言いながら、男は手早くジャケットを脱いで椅子の背にかけた。歩み寄りながらもベルトに手をかけ、ベッドに乗り上げると同時にファスナーを下ろす。
「ご、ご主人は……本当にこのことを知っているんですか? きちんとした、トレードなんですか?」
「ああ、もちろんさ。さぁ、今鍵をはずしてあげるからね」
 男はクロの腰を掴むとズボンを引きずり下ろす。剥き出しになった貞操帯を見ると、男はさらにいやらしく相好を崩した。
「ああ、素敵だ……華奢な身体に頑強なベルトが似合ってるよ」
「……っ、」
 触らないで、そう訴えたいのに言っていいのかわからなくて、クロはぎゅっと唇を噛み締める。怒られたくない。近くには鞭もある。痛い目に遭うのは嫌だった。
「ほら……開けるよ」
 鍵穴はディルドが挿入されている箇所にあった。鍵を挿し込んだ上でさらに押し込み、強く回す必要がある。中のディルドはそれに連携してさらに深く中を穿ち、腸壁をぐちゅりと掻き回す。
「ひっ……ひ、あ……っ」
 チャリ、と音がして鍵がはずれた。男はバンド部分をはずし、小さいペニスを覆っていた金具をゆっくりと取り除く。クロの昂りはもう治まっていたが、ディルドを動かされたことで中は疼いていた。
「ゆ、ゆっくり抜いてくださ……あああッ!!」
 男はクロの言葉に反してぐぼっ、と一気に抜き出した。中を擦られてクロはビクビクと痙攣する。
「こんなに太いのを挿れてたなんて……いやらしい子だ」
 男はぽっかりと開いてしまったクロのアナルに容赦なく2本の指を押し込む。
「ぎぁっ!? あっ、だめぇぇぇっ!!」
 ビクビクビク、とクロの身体が震えた。男の指はすぐさま前立腺を的確に暴いて、クロはM字に足を開いた状態で中で達してしまった。
「もうナカイキしちゃうなんて、よっぽど挿れて欲しかったんだね。よし、今挿れてあげるよ……いい子だ」
「ひ、は……は、やめ、今らめ、ら、あ、あ、あああ──ッ!!」
 ずぷぅっ、と太いペニスを突き入れられて、クロの瞳からぶわっと生理的な涙が溢れた。達しているところに性器を突き挿れられて、クロの腹はビクンビクンと歓喜しているが心はついていかない。
 なんで、どうして──本当にこんなことを、主人が許したのか?
「ふふ、可愛い顔をして……」
「んぶっ……う、ふぅっ……ン、」
 肉厚の唇に口づけられ、クロは呼吸も奪われた。男はそうしたままゆっくりと腰を使い始める。穴の入口の方から奥まで、ぬろーっ、と舐めるように擦る熱い肉棒に、クロの腸壁はちゅうちゅうと吸いついてうねった。
「君の中は女の子みたいだね。わたしのペニスをしっかり締めつけて……口の中も、んっ……熱くて、ヌルヌルして……おマンコみたいだよ」
「んんッ……ふ、むぅ……!」
 舌で口内を、ペニスで腸を犯されてクロの頭は朦朧とする。
 男はクロのリボンタイをほどくとシャツを開いて、胸にも手を滑らせた。乳首を捏ね回し、指先で執拗に弾く。男の手はまるで手品のようだった。何本も腕があるかのように、クロは全身の愛撫を感じた。舌は口内から首筋や鎖骨、乳首や脇を辿り、臍の中を舐めた。その間に手はクロの尻を揉んだり、腰を引きつけて挿入を深めたりと一寸の隙もないのだ。
「はぁ、はっ、ああっ! あんっ、やぁん……ッ」
 まるで複数人に凌辱されているかのような責めに、クロの喘ぎも切なく甘えたものになっていく。全身を弄ばれながらも1番強い快楽に翻弄されているのは身体の真ん中、腹の奥に穿たれたもので、クロは薄く目を開くと涙を浮かべた。
「こわ、い……っ」
 思わずそう零す。男の性器はまだ、クロの身体に収まりきっていないのだ。

2018/07/29


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